第525話

 異世界11ヵ月と20日目。


 ドローンのマッピング状況を確認したが、まだ完了していなかったので、本日もダンジョンはお休み。

 朝のルーチンワークを終えた後、フェリンシア達と1期生を連れて、昨日暴走した平原へと連れて来た。

 子供用のバイクを6台、大人用プロトタイプを1台出して、乗り方を説明する。

 大人用の方に問題なければ、そのまま直ぐに生産ラインを稼働する予定である。


 30分程、大人用は、ステファニーさん、ジャクリーン、ミケ、パトリシア、キャスの担当となる。

 彼女らが乗っている所をジックリ観察しながら、意見を聞いて、微調節を行い、またテスト走行をして貰う。

 1時間ぐらいで、大体問題無いセッティングになったので、一旦海渡は地下工房に戻って、生産ラインを微調整して、稼働した。


 20分ぐらいで、人数分の台数が完成したので、そのまま平原へ戻り、1人1台に乗って、ツーリングへと出掛けたのだった。


 2時間程走行した後、昼食休憩を挟み、お弁当を食べながら、感想を聞くと、


「兄貴! これ・・・バイクでしたっけ? 滅茶面白いっす。」

とラルク少年が興奮気味に絶賛してくれた。


 ミケ達も、馬に乗るよりも楽しいし、楽だし、速いと絶賛。


「まあ、調子乗って転けると、骨折したり、最悪死んじゃうんだけどね。

 でも、走破性は結構良いから、売り出したら、冒険者とかに売れないかな?」

と聞いてみると、


「基本売れると思うで。まあしかし、値段次第やろうな。

 これ、幾らぐらいで売るん?」

とステファニーさん。


「うーん、どうだろう? 白金貨だと売れないと思うから、金貨10枚前後って所かな?

 みんなは、どう思う?」

と意見を求めると、


「まあ、今の私達だと金貨10枚なんて、安い!と思っちゃいますけど、普通の冒険者にすると、結構大きい金額ですよね。

 まあ、でもBランク以上なら十分買える金額だと思います。」

とミケが答えた。


「俺的にはもっと安くても良いんだけどね。

 ただ、馬を育てて売ってる人達も居るから、安くし過ぎると、問題が出そうだし、そこら辺はダスティンさんに要ご相談だな。」


「しかし、本当に不思議ですね。前後に1つずつしか車輪が無いのに、走り出したら、倒れないって。」

とジャクリーンさんが首を傾げながら呟く。


「ああ、確かに! ビックリですよね。

 あまりの楽しさに、忘れてしまってましたけどw」

とフェリンシアも追従する。


「まあ、詳しくは俺も良く知らないんだけど、多分ジャイロ効果があるから倒れないんじゃないかな?」

と海渡が言うと、


「「「「「「「「「「ジャイロ効果??」」」」」」」」」」

と全員が声を揃える。


「うーん、どうやって説明するかな・・・宇宙駒でも作るか。」

とテーブルの上でゴソゴソと金属インゴットからパーツを形成して、5分程で宇宙駒を作成した。


 全員に回してない状態の宇宙駒を渡して駒を持ったまま手首を動かして貰って、

「全員、今の感じを覚えておいてね。

 じゃあ、今からこの駒の中の円盤を回すから。」

と言って、糸を巻いて、勢い良く引っ張り、円盤を回した。


「さ、じゃあ、同じ様に順番に手首を動かしてみて。」

と順番に体験させると、


「おおお!!」

と持った順番に驚きの表情をする。


「これがジャイロ効果だよ。

 重い物がグルグル回ると、良く知らないけど、その位置を保持しようとする効果があるみた。」

と軽く説明すると、


「すっげーー!」

とラルク少年が感心していた。


「カイト君、これ売れるで!」

とステファニーさん。


「「「「確かに、これは売れますよ!」」」」

とケモ耳ズも大きく頷いていた。


「え?そう? じゃあダスティンさんに相談してみようかなw」




 その日の夕方、生産ラインを作って、バイクと宇宙駒をダスティンさんに報告し、値段を決めて販売を開始する事になった。

 バイクは金貨30枚、宇宙駒は大銅貨10枚で販売する事になった。


「えー? 宇宙駒は、大銅貨3枚くらいで良いんじゃない?

 あんまり高いと売れないと思うんだけどなぁ・・・」

と言ったのだが、


「いや、それだと、利益が薄過ぎです。

 本当なら、大銅貨30枚にしたい所です。」

と言われてしまい、そうか・・・と引き下がったのだった。



 しかし、その後、海渡の予想とは裏腹に、宇宙駒はこの世界で爆発的に売れた。

 海渡は子供用の玩具と考えていたのだが、何故か大人にもウケてしまい、大陸Aや大陸Bでも海渡の関係のある3つの大陸では、知らぬ人は居ないと言うぐらいに出回ったのだった。

 魔道具ではないので、彼方此方でパクりの類似品も出たのだが、本家本元のカイト印の宇宙駒の性能(バランス)に追いつける物は無く、作るだけ損の状態になり、自然消滅して行った。

 実際の所、簡素な構成の物だけに、精度とバランスが大きく影響するので、海渡が魔道具で作った生産ライン程の精度を碌な工作機械も無く、鋳造で作っても、無理がある。

 逆にそんなコピー商品を作って売った所は、信用を失って潰れて逝ったのだった。


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どうも! いつもお読み頂き、誠にありがとうございます。

先日、昨年から少しずつ書いていた新作を公開しています。

もし良ければ、

『リ・ボーン 時代に神風を巻き起こせ!』

の方も、お読み下さい。m(__)m


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