第518話
異世界11ヵ月と16日目。
今朝から希望の岬ダンジョン第11階層へ突入する。
第10階層の宝探しは長々と続き、中々に海渡達を楽しませてくれた。
予想通り、第11階層への階段は中心の皇居跡にあり、それを守っていたのは、ゴーレム?と言うよりも、どちらかというと、空飛ぶ島を守るロボット兵の様な感じの奴らで、海渡的にはかなりウケた。
ここで、アニメの設定まで使うのかよw と。
このゴーレムはかなり頑丈で、ミスリル、オリハルコン、そして、貴重とされる合金、外皮を堅くする為のコーティング等、色々見所満載であった。
実際に破壊するとなると、この外皮のコーティングが素晴らしい仕事をしてくれて、20mmガトリングガンの連射でやっと外皮に刺さる程度。
海渡達の愛刀に4重の付与では、切り傷が付く程度で、5重の付与の力業でやっと切断出来る程度。
しかし、当たり所が悪かったり、確度が甘いと、受け流されたり、途中で刃が食い込んで防がれてしまう。
ガーディアンの攻撃は、既に達人の域にある剣や槍による攻撃と、額部分からのレーザー攻撃である。
当初、このモーションも溜めも無しのレーザー攻撃で何回か、手足を持って行かれてしまった。
「はっはっは・・・痛いね。」
とヒールで欠損箇所を生やしながら苦笑いするのであった。
まあ、幸いだったのは、行動不能と判断したのか、追撃をしてこなかった事だった。
その行動パターンから、こいつらを『ガーディアン』と呼称する事にしたのだった。
更に凄かったのは、皇居の地下には、この通称『ガーディアン』を生産する施設があり、ここで初期命令として、『警備せよ』とプログラムされ、起動後は、AIによる自立判断で行動するらしい。
無尽蔵に湧いて来るガーディアンの群れは、驚異的であった。
もっとも、警備範囲が堀の内側となっているらしく、範囲を超えて追撃して来る事はなかった。
「うーん、素晴らしい。
これ、何とかこっち側の施設に出来ないかな?」
と真剣に考えた結果、一度工場の機能を停止して、マスター権限の書き換えや、命令権及び優先順位等を弄る事に成功したのだった。
これによって、海渡はこの世界初のロボット兵を手中に収めたのであった。
「はっはっは!!! やったなぁ!!
いやぁ~、第10階層最大のお宝だったな。」
と海渡がバカ笑いしていると、
「ほんまやで、これは凄い事やで!
カイト君、なんや、夢が広がるなぁ! ふはははは!」
とステファニーさんも満面の笑みで、追従していた。
調べれば調べる程に、このガーディアンは優秀で、手先の細かい作業から、力仕事、劣悪環境下での重労働、警備~殲滅戦まで何でも熟せる。
某ムスカ大佐の様なヤバい奴がマスター権限を持つと、確実に世界征服が可能だろう。
海渡は、ムスカ大佐ではないので、用途としては、都市以外の警備の手薄な集落等へ、警備兵としての派遣等を考えている。
対人戦闘をさせるかは微妙な判断であるが、対魔物戦は問題ない。
自動車や飛行機の恩恵で、交通網が発展し、更に通信機によるリアルタイムな救助要請も可能なので、地方に住む住民の安心感は、以前に比べ格段に上がったのだが、それでも自警団では心許ない辺境の地や、魔物が発生し易いポイントの住民は、日々不安と隣り合わせで過ごしている。
そんな地域の警備に使おうかと考えているのだった。
さて、話はダンジョンに戻るが、こうして第10階層を制覇し、本日はいよいよ第11階層へ進出するのである。
第11階層への階段を降りて行くと、ガスってて、遠くは見えないのだが、半径50m程の平地で、その先は崖になっている高台に出た。
早速、ドローンを飛ばし、マッピングする事にしたのだが、暫くして、判った事は、第11階層の入り口があるこの半径50m程度のこのエリアは、実は浮島で、空中に浮いていた。
「わぁ・・・アバターの世界じゃん。」
と呟く海渡。
取りあえず、3Dマッピングが必要なので、更に追加でドローンを飛ばしたのであった。
朝のせいか、濃かったガスが徐々に晴れて来ると、その壮大でSFチックでファンタジーな風景が見えて来た。
「いや、これ正にアバターの世界じゃん。」
無数に浮かぶ巨大な浮島には、木が生え、川が流れ、滝になり、空中に大きな虹を作る。
巨大な鳥型の魔物が空を飛び、ムササビの様なトカゲが木から木へ、島から島へと飛び移ったりしている。
「なんともまぁ、壮大な眺めやで。」
と驚きの声を上げるステファニーさん。
「兄貴!凄いっす!!」
と絶叫するラルク少年。
「これは見事な眺めですね。」
とジャクリーンもウットリ眺めている。
ステファニーさんに聞いたが、この世界にこんな浮島は存在しないとの事だった。
まあ、設定の定番だと、飛行石とかが出て来るのだろうが、飛行機を持っている海渡にはそんな原理はどうでも良い事。
ただ『景色が素晴らしい』これだけで十分であった。
ここの魔物達だが、現在の所、特に海渡達に牙を剥いて来る物が居ない。
もしかして、温厚なのか? いやいや、そんな事は無いか。
しかし、好戦的な魔物が居ないのであれば、特に殺す事無く、遊覧飛行をして観光地にする事も出来るだろうが・・・観光客が押し寄せると、生態系が崩れるかもな・・・と思い止まるのだった。
「なんか、せっかくのこの風景や生態系のバランスを壊すのは惜しいね。
出来れば、そっと素通りかな。」
とみんなに提案すると、全員が一致で同意したのであった。
しかし、本当にこの風景は素晴らしい。
海渡達は、隠密スキルと光学迷彩を使いながら、魔物達を刺激しないようにしつつ、空を飛び、観光を楽しむ。
浮島は、それぞれサイズも特色もバラバラであるが、魔物にかんしては、どうやらほぼ全部が空を飛べるらしい。
魚の魔物も居るが、飛び魚の様に、羽を使って、空を滑空出来るのである。
暫くグルグルと観光していると、空中に水溜まりを発見した。
島だけでなく、水溜まりも空中にあるとは、驚きであった。
しかも、飛び魚の様に空を飛ぶ魚の魔物が、その中を休憩所代わりにして、更に勢いを付けて飛び立ったりしていた。
正に魚のサービスエリア的存在の様だった。
大きな浮島は、大体全長5~6kmぐらい、小さい島だと100mぐらい。
そしてこの第11階層だが、高さがどれくらいある空間なのか、現在不明。
試しに3000m程降下したのだが、終わりがまだまだ先があった。
よって、地上が存在するのかも不明。
横方向は、既に200km程は飛んで居るのだが、終点は不明。
これらはドローンのマッピング完了を待つ他は無い。
「これだけあるなら、1つぐらい別荘用に貰っても良いかな?」
とニヤリと笑いながら言うと、
「ああ、それなら景色の良い手頃な島が良いですね。
みんなで探しますか!」
とフェリンシアが提案して来た。
と言う事で、11名がそれぞれ思い思いの方向へ散って行いったのだった。
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