第515話
一方、弟子ズ達は、3チームに分かれて魔物狩りをしていた。
ここ第10階層で遭遇した魔物は、ホーンラビット等の草原に居る小物から、ウルフ系や鳥系も居たりと、非常に多くの種を発見した。
特に強力な物は居なかったが、元の世界の日本を知らない者には、物珍しい物ばかりのフィールドであった。
そして、ラルク少年らが、面白い物を発見し、海渡に伝心を入れて来た。
『兄貴!何か地下に続く階段見つけたんすけど、ちょっと雰囲気違うんすよね・・・』と。
『判った・・・多分アレの事だと思うけど、直ぐにそっちに行くよ。』
と答え、ラルク少年の居場所へとゲートでショートカットした。
「あ!兄貴、あれっす!」
と指さす先には、やはり海渡の詠み通り、地下鉄の駅への入り口だった。
「ああ、これは地下鉄と言う鉄道だね。
ワンダーランドのミニ列車のデカい奴が地下を走るんだよ。」
と説明すると、驚いていた。
何かこのステージの所為で、1期生には誤魔化すのもキツくなりそうだな・・・。
全員で地下に降りると、改札口っぽい物があり、その先の階段を降りると駅のホームに出た。
なるほど、なかなか忠実に再現しているな。
ホームから線路を確認すると、真っ赤に錆びたレールが残っていた。
海渡の事情を知っているフェリンシア、ステファニーさん、ジャクリーンは、興味津々で、海渡の生まれ育った世界の発展振りに、別の意味で驚いたりしていた。
さて、問題は、この地下鉄の穴がどこまで続いているのか? だが、ここはサクッとドローン任せにする事にて、ドローンを上り下りの両方向に飛ばした。
そう言えば、ビルにも地下や地下駐車場があったりするよな。
そっちも調べないとだな・・・。
と考えを纏め、地上に戻った後、再度地下階を含めた各建物の各階を調査するドローンを追加で飛ばした。
付近の建物を色々と見て廻った結果、自動車や近代的な物は残骸以外は無く、当然水道も電気も無く、残っている物と言うと、宝箱代わりの金庫類のみだった。
面白い建造物と言う意味では、廃墟化した首都高速の成れの果て的な物があり、所々で倒壊したりしていた。
弟子ズがこの『空中にある道』の存在意義が理解出来ず、不思議そうにしていた。
なので、
「ああ、これは、高速道路と言って、一般的な地面にある道だと、人通りとか交差点とかで停車したりしないといけないから、目的地に着くのが遅くなるでしょ?
だから、目的地までノンストップで行ける様にと言う意味で作られた自動車専用の道だよ。」
と教えると、
「「「「「「「おーー!」」」」」」」
と声を揃えて驚いていた。
何で海渡がそう言う答えを知っているのか、弟子ズは不思議に思ってそうだったが、「まあ、カイト様だし」と言う事で結論付けてくれている様なので、それに甘え深くは話さずにスルーしておいたのだった。
「兄貴、この階層もかなり広いみたいっすね。」
と付近で一番高いビルの屋上から辺りを見渡しながら、ラルク少年が言ってくる。
確かに、視力が強化されている海渡でさえ、この階層の終わりが見えない。
「これ、第11階層への階段を限定するのは、かなり大変だよな。
数日はデータ収集が終わるのを待った方が良いだろうな。
あと、この階層は、建物の破壊は極力気を付けて避ける様にしてくれよ?
何処に何があるか、判らないからね。」
と再度注意を促すのだった。
そして海渡は、第8階層の保養所へと戻り、ユックリ炭酸泉に浸かって夕食時までノンビリと過ごす事にしたのだった。
ちなみに、第8階層の外気温だが、昼間(一応、昼夜の区別がある)でさえ、氷点下。
雪質は表面がパウダースノーで、その下には万年雪が貯まっている感じである。
なので、魔物云々以前の問題で、戦闘力の無い人は、ここの階層では建物の周りを囲むシールドの外へは、出る事は難しい。
また、そんな雪質なので、自動車での移動も難しい。
幾ら4WDであっても、確実にスタックしてしまう。
この世界で、雪のある地方で使われるのは、ソリである。
トナカイに似た、寒さに強い四つ足の動物(名前は同じくトナカイ)にソリを引かせるらしい。
とは言え、圧雪されていない所では使い物にならない。
これは、スノーモービルを作れと言う啓示なのだろうか?
湯に浸かりながら、スノーモービル制作のアイディアを色々と纏め始める。
スノーモービルで、一番大変な部分と言えば、リアの駆動を受け止めるキャタピラである。
元の世界のスノーモービルは、どうやっているのかは不明だが、戦車やブルドーザーのキャタピラと同じ仕組みであるなら、相当な引っ張り強度を持つヒンジを作る必要がある。
それに高回転による膨らみを押さえる為にも軽量である必要があるな。
それとも、いっその事、完全ゴムベルト的な物にするか?
等と色々考えた結果、軽くする意味では、ゴムベルトが最適であると考え、ゴム内部の構造物にミスリル製の骨組み(逆Tの字の物)を入れ、ミスリル製の撚線ワイヤで繋ぐ事を考え出した。
ミスリルのワイヤーで繋ぐ事で、ラダーチェーンの様な内部構造となる。
デザイン的には、Tの字の縦棒部分は短く、キャタプラが外れない様にする為の、ガイド兼駆動する為のギア代わりになる。
外側のゴムは、現在タイヤに使っている素材でも、-50℃ぐらいまで利用可能らしい。
但し、それ以上の低温では、バキバキにひび割れるらしいのだが、智恵子さん曰く、-40℃以下になる所は今の所無いとの事だった。
なので、一応、走行中のキャタピラ部分の温度管理だけは、プログラムに書き込んで置く予定ではあるが、それ以上の事は自己責任とする事にした。
「うむ。これなら何とかなりそうな気がするな。」
とほくそ笑み、早速湯船から上がり、服を着て、宮殿の地下工房へとイソイソと向かうのであった。
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皆様、明けましておめでとうございます。
今年も宜しくお願い致します。
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