第485話

 戻って来た海渡達が聞いた第一声は、

「「「「「わぁ!女神様の像が!!!」」」」」

「「「「光ってる!!!」」」」

「「「「「こ、こんな事が!」」」」

と言う様な驚きの声だった。


 海渡は立ち上がり、かれらの方に振り向いて、

「さて、今日ここに我ら信徒4名が来たのは他でもない、いつも、女神様と信徒の皆の為に頑張ってくれている者達への褒美を与え、更に今後の指針を示す為である。」

と海渡が温和な声で宣言すると、集まった教会本部の全員から、


「「「「「「「「「うぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」

と言う歓声が湧き上がった。


『みんな、ゴネそうな奴ら4名を先に砂漠送りにするから。』

と伝心で伝えると、


『『『クックック。了解w』』』

と笑い混じりの返事があった。


「まずは、今から言う4名には、特別な褒美を与える様にと女神様から言われている。

 司祭長、副司祭長2名、そして、いつも神託の巫女の世話をしてくれているお世話係の長の方、まずはこちらへ。」

と海渡が言うと、


「「「「「「「「うおーーーー!! 素晴らしい事です!!!」」」」」」」」

と言う歓声と共に、拍手が沸き起こる。


 4名は海渡の前にやって来たのだが、若干顔が強張っていて、必死に作り笑いをしている様子。

「特にこの4名はいつも頑張ってくれているので、女神様が喜んでおいでだった。

 よって、この4名には特別に、女神様の別荘への訪問が許された。

 これは大変に名誉な事である。

 では、フェリンシアさん、彼らを女神様の『別荘』へご案内お願いします。」

と海渡が言うと、


 フェリンシアが、

「イエス・マイ・ロード」

と弟子ズ張りに跪き、胸に手を当て一礼し、『ゲート』を発動した。


「「「「「「「「「うぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」」

「「「「「神の門が開いた!!!」」」」」

と大騒ぎするギャラリー。


 それに反して、明らかにキョドってる4名。

 まあ、そりゃそうだよねw 思い当たる節がバリバリだもんなw


「さ、逝きましょう!」

とフェリンシアが、司祭長と副司祭長の1人の手を取り、強引に引っ張って行った。


 更に海渡が、残り2名の腰に手を回し、同じく強引に、ゲートの中に叩き込む様に入れると、折り返しでフェリンシアだけが戻って来た。


 次に、

「では、スチャート・エンデルセンさん、こちらに出て来て下さい。」

と海渡が言うと、ザワザワとし始めるギャラリー達。


「スチャート・エンデルセンさん! 居ませんか? 32歳のスチャート・エンデルセンさん!!」

と何度か呼びかけると、


「い、居ます。」

と隅の方から声がして、真面目で温厚そうで、世渡りの下手そうな男性が前に出て来た。


「ああ、貴方がスチャート・エンデルセンさんですか!」

と海渡が声を発すると、


「女神様からの神託です。今日この場から、貴方がこの大陸全土の教会を率いる司祭長となります。

 私利私欲で私腹を肥やす事のみを考える腐った連中は、女神様よりの処罰が為されました。

 さあ、信徒の為に素晴らしい教会に改善して下さい。」

と海渡が言うと、


「「「「え?」」」」

と驚きの声が鳴り響く。


「皆さんは、本当に全員、ご存知無かったのですか? 本当ですか? 神託をねじ曲げ、蔑ろにし、それで上手く行くと思ったのですか?

 女神様は、『もし改心の兆しなく、面倒であれば、この国を潰してしまっても良い』と仰せでしたよ?

『寧ろその方が民の為になるのではないか?』とまで。

 神託の巫女、貴方は、ご自分が受けた神託が、歪められる事無く、ちゃんと遂行されているのを確認していますか?

 貴方は、貴方の告げた神託が歪められ、改ざんされ、利用されているのをご存知ですか? 是非今後は知る努力をして下さい。

 そして、スチャート・エンデルセンさんにも知って頂きたいのは、女神様は何度か、『王の任命には今後関わらない』と言われているのです。

 理由は、今回処分された4名の他に、王室の権力争いと配下の大臣、副大臣らの勢力が絡んでいて、その結果、腐敗が蔓延しているのです。

 ここに王とその王位継承者又は候補者や、大臣達を呼べませんか? 女神様の神託で直ぐに教会本部に該当者だけ集まる様にと言われました とでも適当な理由を言って。」

と海渡が言うと、


 スチャート・エンデルセンさんが、

「賜りました。誰か・・・ロッテムさん、王宮へ伝えてくれますか?」

と命じると、「はい!」と1人が走って礼拝堂から出て行った。


「念の為に、再度言う。司祭長は、女神様が信頼置ける人と言う事で、お決めになったスチャート・エンデルセン。

 前の司祭長、副司祭長2名、神託の巫女のお世話係の長、この4名は私腹を肥やすし、この本部の部屋や、外に借りた部屋・・・これは後で調査して没収して欲しいのだが、その部屋に教会本部からせしめた財産、収賄した財産を隠し持っている。

 これらは全て、女神様からの情報である。他にも、聖職者とは思えない様な人物が沢山紛れていると聞く。

 今更繕った所で、女神様の目からは逃れられないと思え。但し!但し、自ら自白し、不正を行った者は、その財産を教会本部へ献上し、自ら辞職し、悔い改めて生きるのであれば、今回に限り不問にする。

 考える時間は、明後日の午前10時まで。これを過ぎて、判明した場合は、前の司祭長らと同じ場所に行って貰う。楽しみにしていてくれww」

と最後に黒い笑みを浮かべる海渡。


 一部の教会本部職員は、かなり青白い顔になってガクブルと震えてらっしゃる。


「彼らがどうなっているか、見たいか?」

と海渡がニヤリと笑いながら言うと、全員が首を激しく横に振っていた。


「あ、あとスチャート・エンデルセンさん。女神様より、全土で孤児院を再開しなさいとの仰せです。

 私は、この大陸に来て、孤児院が教会と併設されてない事に、大変驚いた。

 だから、私は当初、ここの教会は、女神ジーナ様を主神として崇める教会ではないのではないかと、邪教なのではないかとさえ思った程だ。

 既に余所の大陸の話だが、大陸全土に蔓延った邪教団を1つ葬り去った。ほんの数秒のつまらない仕事だったが、ここでも同じ事をしないで済む様にして欲しい。

 あ、その時の映像もあるが、見たいか?」

と聞くと、やはり全員が青い顔色を、真っ白にまで進化させながら、首を激しく横に振っていた。




 王様達を待って居る間、海渡は砂漠送りになった4人の映像を確認し、まだ今は生存している彼らに、自白を促していた。

 ふふふ、勿論、全ては録画してある。

 王宮の誰と組んで、何をやったか、見返りに何を貰ったか、誰を陥れたか・・・等々、洗い浚い、スラスラと話してくれた。

 教会本部外にある部屋と言うか、屋敷の住所も全部自供し、そして、

「「「「考え違いをしておりました。どうか、どうかお許しを!!」」」」

と土下座して、頭を下げて居た。


 まあ、そんな安い土下座如きで許す気は無いがなw

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