第453話
さて、持って来られた城壁の拡張の費用と工事期間であるが、ザックリ8年で年間材料費込みで黒金貨348枚・・・つまり348枚×8年で合計黒金貨2784枚が最低限必要となっていた。
更に、突発的な事態の予備予算として、年に黒金貨20~30枚を見た方が良いとある。
そして、黒金貨2784枚掛けて8年後に完成し、それに伴う経済効果の方であるが、年に黒金貨200枚~280枚の増加とあった。
なるほどな~。これだと厳しいよなぁ。
海渡が書類をパラパラと捲りながら、速読していると、とんでもない物を見つけてしまった。
「これ、ダメだろww 城壁作るのに、石灰岩ってww 何のギャグっすかw」
と素で吹いてしまった。
「え? そ、それはどう言う事ですか?」
と驚くジャールさん。
「うーん、申し訳無い。説明しますね。石灰岩ってのはですね、水に溶ける材質なんですよ。
洞穴とかで、鍾乳洞とかって聞いたり見たりした事ないですかね?
ようは、地層の中に水脈があって、その水脈の水が、地層の中の石灰岩を溶かし、出来るのが鍾乳洞。
そりゃあ、勿論石灰岩が溶けるのにも、凄い年月が必要ですが、そもそも最初から溶けると判っている、脆弱な石灰岩を城壁に使う意味は無いですよね。
まあ、形成はし易いでしょうけど。」
と海渡が説明すると、愕然とした顔をしていた。
「そんな材質だったのか・・・。これを作った者を一度調べる必要があるようだな・・・。」
とジャールさんが法務担当?の側近に伝えていた。
「まあ、でもどちらにしても、やはりこれぐらいの見積もりになるでしょうね。『普通』なら。」
と海渡が話し始める。
「で、物は相談なんですが、この工事、我々に発注しませんか? 我々としては、この国に当方の商会の拠点が欲しい。しかし土地は余ってない。
我々は、そうですね・・・城壁の高さは、この見積もりと同じ、20mで幅を3mとします。
そして、直径20km~30kmであれば、期間は2~3日貰えば大丈夫です。直径1kmにつき、黒金貨2枚と言いたい所ですが、条件付きで、黒金貨1枚にしますよ。
つまり直径20kmにする場合、黒金貨20枚、直径30kmにする場合は、黒金貨30枚、40kmにする場合は、黒金貨40枚です。」
と海渡が言うと、
「「「「「・・・・」」」」」
全員が絶句していた。
「ん? どうしました? ああ、安すぎると言う事ですか? それとも期間ですか?
理由はですね、全部魔法で作っちゃうからです。
10人と1匹で手分けすれば、まあ、ぶっちゃけ、直径40kmでも1日あれば作れるでしょう。
強度は、ワイバーンの直撃でも壊れないぐらいの強度です。」
と説明した。
やっと再起動したジャールさんが、恐る恐る聞いて来た。
「それは何とも凄い話ですね。魔法ですか・・・。土魔法と言う事ですよね? そこまでの物を全て魔法で作るとなると、実際にどれだけの魔力を使うのか、全く想像出来ません。
で、その条件と言うのは、どんな事でしょうか?」と。
「ああ、条件は幾つかあって、
1)拡張したエリアに200m×100mの敷地を2~4箇所程、頂きたい。
2)城壁の外に飛行場を作らせて貰いたい。
3)先ほどの見積もりから比べ、浮いた分のお金の一部・・・
そうですね、年に黒金貨20枚ぐらいは、福祉や公共事業等に廻す分として、孤児院や、シングルの親子とかの救済に廻して欲しい。
4)エリーゼン王国と同盟を結んで貰い、友好国として、その約束事をキッチリ守って貰う事ですね。
今まではかなり約束事をスルーされてたみたいですし。
と言う感じです。」
と締め括ると、
「え?それだけで宜しいのですか? カイト様の日本の属国になれとか、そう言う事は無いのですよね?
しかも、3番目のなんて、全くカイト様の方には、メリットありませんよね?」
と狐につままれたような顔で聞いてきた。
「属国も植民地も要りませんよ。望むのは、平和と『信頼出来る』友好国です。」
とキッパリと海渡が断言すると、衝撃を受けつつも、凄く安心した顔になった。
全ての条件をクリアし、直径30kmに拡張する事が決定した。
4つの門は、今の門の延長線上に作る事で、決定し、細かい造形等はジャールさん側で行う事となった。
11人と1匹(ジャクリーンさん+レイアで1セット)が所定のポジションに着き、一斉に城壁を作成し始める。
正確にマップで半径15kmの地点をトレースしながら飛行し、城壁がニョキニョキと生えて行く様に、思わず立ち止まる商隊や通行人達。
中には、慌てて衛兵の所へと走る者も居た。
直径30km、円周にして、約90km強、一人頭約8.2km程が担当である。
時速約50km程度で作ると、10分程度で終わる。
各担当の開始ポイントまでやって来て、自分の城壁と結合し、折り返して城壁の上の通路部分を作成して行く。
海渡、フェリンシア、ステファニーさん、ラルク少年が、4つの城門をキッチリ仕上げ、残りのメンバーで、一定間隔で城壁へ登り降りする階段を設置する。
完全に形状が仕上がった城壁を、グルッと1周廻りながら、海渡が仕上げの硬化を掛けて最後に光魔法のコーティングを掛けて、終了。
合計で50分の簡単なお仕事である。
海渡は、全員の待つポイントに戻り、
「お疲れさん、これで終了だね。あ、ミケ達は、悪いけど、新しい西門の外に飛行場のセットを作っておいてくれる?
こっちは、新しく頂く敷地部分を精査して、建てちゃうからww」
とお願いすると、
「「「「イエス・サー」」」」
と瞬時に飛んで行った。
「で、だ。敷地はどの辺りにすかな?」
と海渡が聞くとはなしに言うと、
「西門に飛行場と言う事は、西側のメインストリートの王宮と、門の中間ぐらいですかね?」
とフェリンシア。
「うむ・・・そうだな。あ、でも、メインストリートがどの幅で作られるか、一応聞かないと、判りづらいよね。」
と海渡も悩む。
海渡は通信機を取り出して、ジャールさんに渡した通信機に連絡を取り、メインストリートの幅を聞いてみる事にしたのだった。
「と言う訳でですね、サービスでメインストリートも一気に作っちゃおうかと。
じゃないと、こちらの敷地の確保もちょっと難しいんですよね。
ああ、メインストリートは幅が広い方がお薦めですよ。そうですねぇ、今後を考えるのであれば、最低でも20mぐらい・・・出来れば25~30mは欲しいと思いますよ。」
と海渡が言うと、一度西門に行くので、待ってて欲しいと言われ、旧西門まで戻る事にしたのだった。
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