第452話
異世界7ヵ月と25日目。
外はまだ薄暗いが、雨音が外から聞こえる。
本日は1期生を連れて、ラースデンの城壁拡張を行う予定であるが、大陸が違うので、雨であっても工事には影響しない。
「工事と言えば、レイア! あいつ最近バタバタして放置してたから、シッカリ飯の分くらいは働いて貰わないとなw」
と朝から黒い笑みを浮かべる海渡。
「その前に、せっかく作ったたこ焼き、持って行こうっとw」
とゲートで教会へと飛んで、祭壇の前に跪く。
『女神様・・・』
「お久しぶりですね。待ってましたよ?」
と女神様が、少しトゲのある口調で初っ端から攻めて来る。
「申し訳ありません。ちょっと色々立て込んでいたもので。
それより、先にこちらをどうぞ!!」
と出来たて状態のたこ焼きを、アイテムボックスから50皿献上する海渡。
「あらあら、まぁまぁww これは良い物を 私、たこ焼き大好きなんですよね❤」
といきなり極上の笑みを浮かべ雰囲気がポアポアしだす女神様・・・チョロいww
「ええ、昨日女神様の差し入れのたこ焼きを思い出しましてね。作ってみた次第です。」
「あらぁ、ほれ、ほんとにおいひいれす(意味:これ、本当に美味しいです)」
と既にハフハフしながら食べてる女神様。
「女神様、もしかして、たこ焼きが好きと言う事は、お好み焼きもお好きですか?」
と海渡はお好み焼きも1皿出してみた。
「まあ!これがお好み焼き!!!」
と目を見開き、大喜び。
「私、実は1度食べてみたかったんですよね、お好み焼き!」と。
どうやら、初めて食べるそうな。
ヘラで切り分けて、箸でモキュモキュと食べて、口の周りに青のりを付けながら、
「とっても美味しいです!! 海渡さん、また持って来て下さいね!! 約束ですよ!」
と・・・どうやら、気に入ってくれたらしい。
「了解しました。また持って来ますね。今日は50枚程置いて行きます。」
と更に50皿のお好み焼きを出すと、目に見えて、テンションが上がっていた。
「わーーい!わーーい!! こんなに!! ありがとうございます! じゃあ、今日はお好み焼きパーティーだわ❤」
と普段の落ち着いた感じに装っている女神様のキャラが崩れていたww
「え?パーティーなら、他の物も出しておきますか。」
と海渡は、日本酒や、バーボン、ワイン、ジュース、焼き鳥、鯛焼き、ピザ・・・等々、色々な手持ちの食事類を出していった。
「えーー? こんなに!!! わーーーい♪・・・」
と言う所で時間切れ。祭壇の前に戻って来ていた。
「ふふふ、変な所で戻って来ちゃったなw まあ、たこ焼きの献上がメインだったから、良いんだけど。
でも、普段はああ言うキャラが素なんだろうなw 女神様、素の方が親しみあって、可愛いですよ?」
と女神様の像を見ながら海渡が呟くと、女神様の像が、ちょっとピンク色に染まった気がしたw
王宮の地下工房に戻って来た海渡は、女神様の「素のキャラ」から、「子供っぽい」を経て連想し、
「そうだ!新しいボードゲームを作ろう!」
となったのだった。
何を作るか? と考えて、真っ先に頭に浮かんだ物は3つ。
1つ目は、将棋! やっぱ、ボードゲームの王様と言えば、日本人ならこれだろう。
そして続く2つ目は、何と言っても『人生色々ゲーム』! 小学生の時は必ず誰かの家にあって、色々将来を夢見るアレだ!
そしてラストの3つ目は、某米国系の『モ○ポリー』! 高校時代に結構やった。
だが、3つ目の『モノ○リー』は作るのを止めておく事にした。
理由は、プレー中に陰湿な妨害を受け、それが発端で、友人関係が一時期壊れた事があったからである。
まあ、今となっては笑い話なのだがなw
まずは、将棋から作る事にした。
リバーシを作った際の用に、一般向けの簡素版と、王室貴族向けのゴージャス版と作る事にした。
一般向けは、移動中にも出来る様に、簡素なマグネット版の様に、盤に引っ付く駒を用いる事にした。
勿論、駒は木製で、日本の将棋の駒と同じ形にし、漢字の変わりに、マークを彫り溝を着色した。
更にルールの冊子を同封する様にした。
ゴージャス版は、これも日本の正式な将棋盤と同じ形をトレントから削り出して作った。
こちらは、駒もトレント製で、溝には、金を溶かして流し込む仕様にした。
ルール冊子も、ちょっとゴージャスにカラー印刷。
それぞれの生産ラインを作成し、トリスターの地下工房に設置して、ダスティンさんに指示書を出しておいた。
『人生色々ゲーム』の方だが、これって何気に必要パーツ数が多いんだよね。
車の形の駒に男女が刺さる穴を空けて、色つきの人(棒)を挿せる用にしたり、ルーレット作ったり、イベントカード作ったり、お金を作ったり、債権カード作ったり・・・
しかも1マス1マス、中の内容を色々考えないとダメだし・・・。
そして、最も根本的な問題は、お札と言うお金の概念が無い事。
もし、このゲームのお金を硬貨とした場合、コストと重量が大幅に掛かるし、持ち運びも大変になる。
逆に、お札とした場合、そもそもお札と言うお金のあり方を、ちゃんと受け入れてくれるのか?と。
アイテムボックスやマジックバッグがある海渡達にはあまり関係無いのだが、実際にこの世界で旅をするには、常時ある程度の重さを覚悟で重い硬貨を持ち歩く必要がある。
それは商人に取っては結構致命的で、嵩張り、重さもある硬貨を、取引用に持ち運ぶ為、馬車の重量制限で荷物に制限を受ける等、弊害が大きいのである。
と、まあそんな訳で、『人生色々ゲーム』の方は、取りあえず保留としたのだった。
朝練を終え、海渡らと1期生、そして久々登場のレイアは、ラースデンの王都へとやって来た。
サウザンド商会へとやって来て、
「ちわー!レイファルさん、いらっしゃいますか?」
と店員に挨拶をすると、
「あ!! カイト様ですね? 少々お待ちを!」
と慌てて店の奥へと飛んで行った。
直ぐに、レイファルさんがやって来て、応接室に通されそうになったので、慌てて要件を伝える海渡。
「すみませんね、突然で。やって来たのは、城壁の拡張の件で、ジャールさんにお目通りを・・・と思いましてね。」
「なるほど、その件ですね。すぐに王宮の方へ先駆けを出します。陛下より、直ぐに丁重にお連れする様にとのお達しですので。」
との事だった。
と言う事で、早速王宮へと自動車3台で移動開始する海渡一行。
王城の門番も直立不動で敬礼し、そのままフリーパスでスムーズに通された。
「何か、偉くVIP待遇ですね? どうかしたんですかね?」
と海渡が聞くと、レイファルさんが苦笑いしながら説明しだした。
「カイト様、お判りですよね? 先日来られた際、あれだけの物を見せておいてw
それに、最後に置いて行かれた、あのたぶれっと? あれで、何か陛下の話では、凄い映像が流れたと聞き及んでおりますよ?
おそらく、その効果ではないでしょうかね?」と。
「ああ、そう言えば、そんな事もありましたね。すっかり忘れてました。」
とタブレットを置いて行ったのを完全に忘れていた海渡だった。
そのまま、会議室へと通されると、既にジャールさん以下、この国の要人が集まっていた。
皆、顔色が悪い・・・。
「ジャールさん、ご無沙汰しております。やっと野暮用が終わったので、前向きな話をしにやって来ました。
あ、王位を継承されたそうで。おめでとうございます!」
と頭を下げる海渡。
「あ、いや、それはご丁寧にありがとうございます。
で、前向きな話とは、一体どう言う方面の前向きな話でしょうか?
あのぉ・・・出来ましたら、国民には何卒お慈悲をお願いしたいのですが・・・。」
とかなりビビってる様子。
「ははは、嫌だなぁw そんな怖がらないで下さいよ?
誤解がある様なので、ハッキリ断言しますが、うちは侵略国家でも、無理難題を押しつけるならず者国家でも、何でも無いですからね?
理不尽な事や権力を笠に着て、暴挙をされると、自衛の為に立ち上がるだけですし。
勿論、友好国や同盟国が、同様の事になっても、力の限り支援しますし。
基本、平和に、仲良く、共にWinWinで発展して行きたい・・・と願ってますよ。」と。
更に続けて、
「で、今日来たのは、本来前回お話する予定だった、ここの城壁の拡張工事の件で来ました。
多分、お力になれると思いますので・・・。
以前にこちらの国で概算予算の見積もりを出したと聞いておりますが、その際の合計費用と期間を教えて頂けますか?」
と要件を告げると、
「ああ~・・・」
とジャールさんサイドに、安堵の表情とため息が漏れる。
そして、一息着いて、ジャールさんがその見積もり資料を持って来る様にと、大臣に告げた。
せっかくなので、待っている間に、海渡がデザートのシュークリームや、プリンや、ケーキ類を人数分取り出した。
「これ、うちのカフェで出している、スイーツと言うデザート類です。
待って居る間に、是非食べて見て下さい。」
と言うと、
「ほう、スイーツと言うんですか。ではお言葉に甘えて。」
と各人が思い思いの物を手に取って、一口食べると、
「「「「「美味しい!!!」」」」」
と絶叫した。
それからは、早かったw
バクバクと出した全種類を全員が食べ、凄く満足そうな笑顔をしていた。
「やっと笑顔になりましたね。良かったw」
と海渡が言うと、
ジャールさんも側近達も照れ笑いをしていた。
そして、丁度その頃、やっと資料を抱えて文官3名が、会議室に汗を掻きながらやってきたのだった。
部屋の中の和やかな雰囲気に、一瞬狐につままれたような顔をする文官だったが、直ぐに復帰して資料を大臣へと手渡したのだった。
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