第441話
異世界7ヵ月と21日目。
昨日、トリスターでダスティンさんに、お酒を配給するついでに、新しく作るインスタントラーメンの工場の打ち合わせしたのだが、日本の王都に建設する方が、敷地の問題等も解決し易いだろうと言う結論になった。
と言う事で、今朝はいつもより、やや早めに起きて、王都支店の地下を拡張する予定。
王都支店の地下だが、軽く地下工房を作ってあるので、トリスターの本店と同じ感じで、エレベーターホールを挟む感じで、反対側に新規に作った。
「久々に地下の工事をしたな・・・ww」
とトリスターでの日々を思い出して微笑む。
そして、クリーンルーム仕様に仕上げる。やはり食品を扱う所は、衛生が一番である。
地下の工場が完成すると、今度は王宮の地下工房で、昨日の試作の手順を踏まえた麵の生産ラインを作成した。
スープ側の生産ラインはおっちゃんの子供や来来軒の娘さんらが到着してから、どこまで自動化出来るかを相談しつつ行う予定である。
麵の生産ラインは、全国一斉発売の時に、実演試食も行う予定なので、多めの20ラインを作った。
まあ、非常時には救援物資ともなるので、そこら辺は臨機応変で余っても良い。
どうせ、時空間倉庫に入れて置けば良いだけだしww
いつもの朝の訓練を終え、大食堂で朝食を取りながら、本日の予定を話し合う。
「今日は、おっちゃんと来来軒の所のエルフ達がやって来るから、午後から受け入れと打ち合わせの予定なんだよね。」
と海渡が言うと、
「じゃあ、私はまたジャクリーンさんと一緒にダンジョンで訓練かな?」
とフェリンシアがジャクリーンさんに視線をやると、ジャクリーンさんがウンウンと頷いていた。
どうやら、昨日貰った海渡作の刀をもっと使いたいらしいww
弟子ズの1期生はアーサーさんの所の軍事演習に付き合うとの事。
ミケ曰く、やはり付け焼き刃の身体強化は、大半の騎士達にとって魔力量の問題で、持続性に乏しいらしい。
だから、ここ一番の場面で瞬間的に運用出来る様に訓練を組み立てているとの事だった。
「いやぁ~、ミケは素晴らしい参謀だなwww 実に頼もしい! なかなか色々考えてくれてるんだな!
ありがとう! あと、ほかの弟子達も本当にありがとうな!! 君らは自慢の弟子だよ!!」
と弟子達にお礼を言う海渡だった。
弟子ズは実に分かり易い状態で照れていたww
さて、このところ、遊んで・・・いや、遠征ばかりしている海渡であるが、ちゃんと王なりの仕事もしているのである。
先日作った、決裁システムの恩恵で、場所や時を選ばずに決裁が出来る様になった事が、非常に大きい。
これはハネムーンから戻って来た、新婚カップル(オスカーさんとヨーコさん)にも好評で、全員のスケジュール管理も楽になったのであった。
以前までだと、このパターンで無理矢理何か予定を埋めようとすると、オスカーさんやヨーコさんから、制止が入ってたのだが、その恩恵で、今は割と自由時間を好きな所で満喫出来る様になったのであった。
海渡は、王都支店の地下に拡張した工場へと移り、そこに試作用のキッチンを作ったり、時空間共有倉庫を設置したり、細々とした設備をセットアップしていった。
うん・・・サクッと終わったね・・・滅茶時間余っちゃったよ。
どうしようかな? ラーメン隊がやって来るのって、午後って言っても、3時ぐらいだよな・・・。
エストニア王国の王都に偵察に行くか? いや、でも1人で行くと後で揉めそうだしなぁ・・・ダラッとするかww
と言う事で、王宮の地下工房に移動して、ダラッとする事にしましたww
まあ、やる事はそんなに無いので、エストニア王国のドローンの映像や、王宮の情報を収集し、助け出すべき人が居るかをチェックした。
特に2時間程かけて、王宮の内部をチェックした結果だが、要救助者は居なかった。
どれもこれも碌な奴がおらず、「ああ、これ帝国のミニチュア版だわw」と渇いた笑いが漏れるのだった。
これらの結果は、一応当事者であるアーサーさんに連絡し、
「アーサーさん、エストニア王国って、かなり腐ってますよ? これ統治するの決行骨折る事になりますっせ!」
と思わず関西弁になってしまう海渡だった。
残り数日となっているが、まだ宣戦布告も受けてないとの事。
「まあ、過去に国境を越えて来た時も、何も宣戦布告とかしてこなかったから、おそらく今回も無いよww」
と言っていた。
「ところで、妹はどうだい?」
とアーサーさん。
「ああ、ジャクリーン・・・さんですね。すみません、呼び捨てにする事を強要されてまして、思わず癖で。
元気に仲良くやってますよ。今日は朝からフェリンシアとダンジョンに、戦力強化で潜ってますね。
そうそう、戦力強化と言えば、以前に比べ、かなり強くなりましたよ!!
今なら、おそらくうちの弟子の中で言うと、4期生辺りと良い勝負かもですね。」
と海渡が言うと、
「あ、いや、そっちではなくてさww」
とアーサーさんが、通信機の向こうで苦笑しているのが窺える反応。
「ああ・・・、なるほど、そっちの意味ですかw
(と察する海渡)
実際の所、俺って6歳ですからね? まだまだ早すぎですよねww
でも、あれだけの美少女と言うか美女からダイレクトな好意を向けられて、無碍には出来ないですよねぇ。
それに、一番は性格も好ましい人ですから。
ただ、既にフェリンシアやステファニーさんが居ますので、この先どうしたら良いのか・・・とは悩んでます。
どちらにしても、もう少しお時間頂ければ・・・と。」
と海渡が言うと、
「だよなぁ~、いやどうしてもカイト君と話しをしてるとさ、自分より年下と話している気にならないんだよねwww
でも、一応真剣に考えてはくれている事が判ったから、ちょっと安心したよ。
また、良いにしろ、悪いにしろ、何かあったらそっちの方も、連絡してね。」
とアーサーさん。
「了解しましたw ご配慮ありがとうございます。ではまた!」
と通信を切ったのだった。
「ふぅ~・・・まったくぅ~、背中に汗かいちゃったよ・・・
大体、彼女いない歴28年だからね。いきなりハードルが高すぎるんだよねw」
と海渡が独り言を言いながら苦笑いするのだった。
まだ半端に時間が余ったので、エストニア王国の都市の領主館の中へとドローンを飛ばし、要救助者が居るかをチェックする事にしたのだった。
昼食後、ダラダラしていると、やっと到着するとの連絡があり、王宮の屋上へとステファニーさんと迎えに上がる。
飛行機が屋上に着陸し、男1名、女3名のエルフが降りて来た。
「ちーーっす! 君がカイトっち?」
とチャラいエルフの男性。
衝撃だった・・・あの厳ついおっちゃんの息子が、こんなチャラ男とは!!!
「あww 初めまして、カイト・サエジマです。遠路遙々お越し頂いて、ありがとうございます。」
と必死に笑いを堪え、4名に頭を下げる海渡。
「うぁ~、チャラっ!!www あのおっちゃんとは真逆やねww」
と爆笑するステファニーさん。
「はっはっは、良く言われるっすw」
とチャラ男君。
そして改めて、会議室で自己紹介をして貰った。
おっちゃんの息子、チャラ男君こと、ラインバックさん、その妹はジェシカさん。
2人共に見た目では、おっちゃんのDNAを微塵も感じさせない、美男美女wwww
「ああ、俺らって、100%お袋似なんすよw いやぁ~、危なかったっすww」
と笑うチャラ男君ことラインバックさん。
「ダメだ・・・ラインバックさんが濃い過ぎて、他が目に入らないwww」
と漏らす海渡。
来来軒の娘さん2人は、姉がリザさん、妹がラザさん。
この姉妹は、ステファニーさんと面識があったらしく、3人でキャッキャとお話している。
しかし、ジェシカさん、喋らないなぁ・・・さっきからラインバックさんしか口を開いてねいよね?
「あのぉ~? ジェシカさん、本当はこちらに来たくなかったとか?」
と海渡が恐る恐る聞いてみると、
「ああ、こいつっすか? こいつ元々余り喋らないんすよね。気にしなくても、大丈夫っす。
来る事には、喜んでましたし、見た通り、今もワクワクしてるっすよ?」
とライ兄。
「え!? 今って、ワクワクしてるの?」
と驚く海渡。
「あー、そーっすねぇ、慣れないと判り辛いかもっすね。ほら、微妙に口角が上がってるっしょ? これ喜んでる時っすw
こいつ、割と人見知り激しいっすからねw」と。
そんなん、判らんがな!!! ふむ、コミュ障なのか?
大食堂で、軽く軽食を取って休んで貰い、王都支店の宿舎へと案内したのだった。
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