第436話
海渡達は、ランバルディアのトランさんから推薦のあった10箇所の都市へ赴き、トランさんの推薦状を各領主へ直接届け、こちら側へ引き込む作戦である。
今回は事が事なので、11名全員で1箇所ずつ行動する事にしている。
そして、1箇所目であるグレース領の領都の城門の衛兵に、ギルドカードとトランさんから領主への手紙を見せ、
「ランバルディア男爵から、直接こちらの領主様へ手渡す様に言われておりまして。
領主様に面会のお願いをしたいのですが・・・。」
と言うと、
「なるほど、じゃあ一緒に領主館の方まで来てくれ。」
とゾロゾロと街の中を衛兵のおじさんに着いて行くと、辺りから良い匂いが漂って来る。
フッと振り返ると、フェリンシア、ステファニーさん、ケモ耳ズが涎を垂らしているしwww
「衛兵のおじさん、ちょっと良い匂いがしてて、ツレがヤバい感じなんですが、少しだけ買って食べながら行っても良いかな?」
と聞いてみると、後ろで涎を垂らす6名を見て、苦笑するおじさん。
「ああ、構わんよwww 何本か買っておやりww」
と暖かいお言葉w
「おっちゃん!肉串18本頂戴! 美味しい所を宜しく!」
とオーダーし、お金を払う。
「何だ、君達、昼ご飯食べてなかったのか?」
とちょっと気の毒そうな顔をする衛兵のおじさん。
「あ・・・いや、一応食べたんですがね、一部底なしのが混じってましてww まあこれって割といつもの事なんでねw」
と海渡が説明すると、おじさんが苦笑いしていた。
焼き上がった肉串を受け取りながら、おじさんにも1本手渡し、底なしの6名には各2本、海渡を含め残りの者には各1本を手渡した。
肉串を食べながら移動していたが、底なし6名の肉串は既に2本共、消えていて、彼方此方の屋台をキョロキョロと見回していたのだった。
その様子を見た衛兵のおじさんは爆笑していたが、
「悪いが、後は面会後にしてくれよ?」
と釘を刺され、6名はトボトボと後ろを着いて来ていたw
衛兵のおじさんが領主館の門番のおじさんに伝達し、バトンタッチ。
「じゃあ、俺はここまでだから、後は指示に従ってなw」
とおじさん。
「どうも、ありがとうございましたw」
と頭を下げて、許可が出るまで領主館の門の所で待つと、3分ぐらいで中へと案内された。
「やあ、君達かい? トラン殿からの親書を持参したってのは? 私が、ここサンジェリカ領の領主、ローランド・フォン・サンジェリカ あれ? もしかして、君、ジャクリーンちゃんじゃない?」
とローランドさんが声を上げる。
「おじ様、お久しぶりです。」
とジャクリーンさん。
「なんだw 知り合いだったのかww」
と緊張が緩む海渡。
「ええ、と言っても4年程前に1度程お会いしただけなので、まさか、覚えて頂けてるとは思いませんでした。」
とジャクリーンさん。
「ふふふ、まあ私も、まさかあの幼かった少女が、ここまでのレディに、成長しているとは、思っても見なかったから、一瞬勘違いかと驚いたぞ?」
と返す。
「あ、おじ様、ご紹介します! 私のダーリンのカイト・サエジマさん・・・とある大陸の国王様です。」
と早々から飛ばすジャクリーンさん。
「初めまして。カイト・サエジマです。ジャクリーンが少々暴走気味ですが・・・数日前に他の大陸より、観光旅行にやってきました。
身分としては、ジャクリーンがお伝えした様に、別の大陸で国王をやっております。
あと、ランバルディア男爵からお預かりしている親書がこちらとなります。先にお読み頂けますでしょうか?」
と親書を手渡す海渡。
「ふむ・・・なるほど。」
と親書を読み終えたローランドさんが呟く。
そこで、海渡が大型のガラスディスプレイを取り出して、トランさんの時と同じプレゼンを始めるのであった。
~~
「ふっふっふ・・・なるほどww まあ、元より他の選択肢は無かった訳だが、それがより強固になったぞw
その話、喜んで受けさせて貰いたい。そしてこの話を持って来てくれた事に感謝したい。本当にありがとう!」
とローランドさんが頭を下げたのであった。
海渡はアーサーさんに連絡を入れて、ローランドさんをエリーゼンの王宮へとお連れし、一通りの話が終わったら、通信機をローランドさんに渡し、使い方を伝授した。
「これで、不足の事態が起こりそうだったりしたら、ご連絡下さい。私やアーサーさんやトランさんの番号をお教えしときます。
あと、トランさんからこちら側へ勧誘する領主の方のリストを頂いてまして、これなんですが、何か拙そうな所があったら教えて頂きたいのですが・・・」
とローランドさんにリストを見せた。
「ふむ・・・、私もこれで問題無いと思うぞ。同じ様に選べと言われれば、同じリストを出すだろう。」
とお墨付きを頂いた。
「そうですか、それを聞いて安心しましたw じゃあ、急かす様で、申し訳無いのですが、他の領主様の所にも廻らないと行けないので、早々にお送りしますね。」
と言い終わる前にゲートを開いた。
「ふふふ、えらく急ぐのだなww」
とローランドさん。
「ええ、他の領主様の所に行くのもあるのですが、その前にそちらの街の屋台に用がありましてねw」
と海渡が言うと、後ろの腹ぺこシスターズ6名が、ウンウンと力強く頷いていた。
領主館を出て、一通り屋台や露店を買い漁った海渡達は、次の領主の元へと移動するのであった。
結局、この日は余計な屋台巡りが祟り、ローランドさんの所ともう1つの領主 デルスター男爵の所で終わってしまった。
デルスター男爵こと、ジェルミン・フォン・デルスターは渋いロマンスグレーのチョイ悪系オヤジ。
実に話しやすいオッサンでww 非常に話が早かった。
アーサーさんの所から、戻った際、結局強引なまでの押しに負け、そのままジェルミンさんの所で夕食をご馳走になったのだった。
料理は、そこそこ美味しい洋食系でだったが、食事の味もさることながら、ジェルミンさんの話が面白くて、全員大爆笑しながらの食事であった。
「しかし、面白いですが、せめて熱いスープや飲み物を飲んでる時は、笑わせるのを止めて貰えませんかね? 本当にヤバいですから!」
と海渡が抗議した程であった。
しかし、
「はっはっは、うちの料理はここまでがワンセットなのだよw」
と悪びれもせずに、ガンガンに攻めて来るジェルミンさんに、思わず海渡は、心の中で、「小学校の給食の時間かよ!」と突っ込むのであった。
小学校の給食時間で牛乳を飲んでいる際、友人に何度も笑わせられ、牛乳を吹いた事を思い出す海渡であった。
そして、ドッと疲れた食事が終わり、お暇をする頃、
「今日は、我が領を選んでくれて、本当にありがとう! お礼と言っては全然足り無いが、何時でも遊び来てくれ! 新しいネタで歓迎するよw」
とガッチリ握手を求めて来た。
「いやw ネタはもう結構ですからwww」
と大爆笑する海渡達だった。
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