第433話

 異世界7ヵ月と11日目。


 早朝から弟子ズと合流し、朝の鍛錬を終えた後、早めの朝食を済ませて、11名でランバルディアへとやって来た。


 冒険者ギルドのロビーに入ると、揃いの装備に身を包む異様な集団に、ざわめく冒険者達。


「ちわーー! 21件の依頼受けにきましたーー!」

 と海渡が大きめの声を上げると、奥からギルドマスターのホルテンさんがすっ飛んで来た。


「おお!来てくれたのだな! 何と!これ全員がSランクなのか!?」

 と驚くホルテンさん。


 海渡達は、ザッと、一糸乱れずギルドカードを翳すwww


「「「「「「「「「「「おおおーーーー」」」」」」」」」」」

とそのSランクカードに響めくロビー。


 会議室に案内され、21件を海渡達11名のパーティーとして受ける手続きを行い、タブレットで地図を表示して、各ポイントを教えて貰った。


 結局の所、21案件ともほぼ街道付近の案件で、200km程の道のり間に巣くっている魔物の討伐であった。


 海渡達は、1人2案件、ジャクリーンさんは1案件と言う事で、その200kmの区間の案件を割り振って、現地へと向かったのであった。



 ジャクリーンさんの担当する依頼は、一応一番簡単そうな、レッサーオークの集落の壊滅である。

 別れる寸前に確認すると、219匹のレッサーオークが確認出来た。


「判っているとは想うけど、油断せずに、219匹全部逃さない様にな!」

と海渡が言うと、


「了解であります!」

と気合い十分の返事が返って来た。


 そして、海渡は、自分の担当するエリアへと移動した。

 海渡が担当するのは、またもやキラー・アンツの巣の壊滅、そしてもう1つが、ハンター・ウルフの群れの壊滅であった。

 15分ぐらいで、アンツを片付け、10分も掛からずに103匹のハンター・ウルフの群れも壊滅し終わった。

 集合場所(ジャクリーンさんと別れた場所)に戻ると、今回は海渡が1番であったw


 到着から10分程すると、ジャクリーンさんが戻って来た。

「あら、ダーリン、お・ま・た❤」


「ふふふ、その様子だと、問題無かったようだねw」

と海渡が言うと、


「ダーリン聞いて! 以前の私だと考えられない程の勢いで殲滅出来たの~♪」

とキャッキャと喜んで飛び跳ねていた。


 テーブルを出して、海渡はコーヒーを、ジャクリーンさんはカフェオレを飲んでいると、フェリンシアちゃんとステファニーさんが、ほぼ同着で戻って来た。


「「うぁーー、今回は負けた(てもうた)ーーー!!」」

と悔しがる二人w


「やっぱり、たまには勝たないとなwww まあ座って一服しようよw」

とカフェオレを2杯出して、椅子を奨めた。


 それから、約1分置きに弟子ズが戻って来た。

 弟子ズ一番乗りは、ラルク少年、二番手はミケ・・・・と続き、ラストがプリシラであった。

 全員が揃って一休みした後、ギルドへと戻ったのであった。




「ただいまー! 討伐完了のご報告に来ました!」

とギルドのドアを開けて、海渡が言うと、ギルド内の職員が、


「「「「「「えーーーー!!!」」」」」」

と声を揃えて叫んでいた。


 取りあえず、獲物を確認して貰う為に、ホルテンさんや職員と一緒に、毎度お馴染みのパターンで、裏の訓練場へと向かう。


 そして、順に討伐した魔物の死体をアイテムボックスから出して行く

   ↓

「何処から出したの?」

   ↓

「アイテムボックスから」

   ↓

「「「「おーー!」」」」

   ↓

「時空間倉庫要りませんか?」

   ↓

「その話乗った!!!」

   ↓

 時空間倉庫設置

   ↓

「じゃあ、これで討伐完了の確認は完了ですね?

 じゃあ、代金(倉庫代と素材買取料金)と報酬と、あと領主様との面談の件、お願いしますね。」←今ここ


とここまでがセットであるw




 そして、約束通り、ホルテンさんと一緒に領主館へとやって来た。


 実は海渡自身は、既にドローンの映像で、ここの領主であるランバルディア男爵と一方的に面会済みなのであるが。


「初めまして、冒険者のカイト・サエジマです。今日はお時間を頂きまして、ありがとうございます。」


「うむ。私がここの領主をしている、トラン・フォン・ランバルディア・・・男爵である。」

と30代半ばなのだが、心労が祟り、かなり目の下のクマが目立つ、温和そうな顔の領主が挨拶をする。


「何でも、フィールド・ドラゴンの討伐の件でご尽力してくれると、ホルテンから聞いておるが、間違い無いか?」

とトランさん。


「ええ、色々とフィールド・ドラゴンの件も含んだ話があります。

 一応、今朝21件の街道沿いの討伐依頼を片付けて置いたので、今現在はそのエリアを安全に使う事は可能だと想います。」

と海渡が言うと、


「それは、ありがたい。ホルテン、間違い無いのだな?」

とホルテンさんに確認を取るトランさん。


「ええ、アッと言う間に討伐依頼21件を完了してくれました。」

とホルテンさんが確定してくれた。


「で、フィールド・ドラゴンの話をしたいのですが、申し訳無いのですが、色々と秘匿事項を話さないといけないので、ホルテンさん席を外して貰えないでしょうか?」

と海渡がお願いすると、


「ふむ・・・人払いをすべき話とな・・・。良いだろう。」

とトランさん。


「ええ、そう言うお約束でしたね。了解しました。また話が決まったら、ギルドの方へお願いしますね。では、私はこれにて失礼します。」

とトランさんに挨拶して部屋を後にした。


 一呼吸置き、

「では、改めて自己紹介をさせて頂きます。私の名前は、カイト・サエジマで、冒険者でもありますが、こことは違う別の大陸の神王国 日本の国王をしております。」

と再度自己紹介して、頭を下げ挨拶をする。


 それと同時に打ち合わせ通りに、スタンド付きの大型ガラスディスプレイを3つ取り出して、セッティングする。


 さあ、プレゼン開始だwww



「こちのモニターをご覧頂けますか? これが、今現在の大陸で、ここ、この位置にランバルディアがあります。

 私の国は、(ここでズームアウトして横へスライドして)この大陸のこの部分が我が国日本の領土となります。

 我々の大陸には、うちを含め4つの国家があり、全ての国が助け合い、仲良く発展する事を誓い合っており、勿論侵略や紛争もありません。

 とまあ、ここまでが前提ですが、先日こちらの大陸に初めて訪れ、お隣のエリーゼン王国と友好関係を結び、同盟国となりました。

 これから、技術支援や貿易を行う事となります。

 元々我々は、観光や美味しいその土地土地の料理や食材を楽しむ事を目的として、旅をしております。

 しかし、友好国が侵略を受けるのを座して観戦する程、愚かではありません。

 現在、我々の大陸は平和ですが、私が王となったのは、約3ヶ月前でして、それ以前は我が国の領土は、『ゲルハルト帝国』と呼ばれておりました。

 しかし、そのゲルハルト帝国は、愚かにも、当時私が居た国にちょっかいを出して来ましてね。

 私の世話になっていた都市と、私の愛する料理のある隣国に、魔物を約2万匹嗾けたのです。」

と海渡が説明すると、


 目を見開き「2万匹!!!」と息を飲んでいた。


「そこで、その『ゲルハルト帝国』の皇帝や貴族を一掃し、建国したのです。

 何をこんな小僧が・・・と思われるでしょうけど、嘘ではありません。

(とここで、『ゲルハルト帝国』の宮殿が壊滅するシーンをモニターに表示する)

 ご覧の様に、『ゲルハルト帝国』の宮殿や70余りの都市の領主館を一瞬で殲滅致しました。」


「こ、これは!!!」

と冷や汗を流すトランさん。


「で、私が何を言いたいかと言うと、同盟国が攻撃を受けた場合、同じ事がその敵国に起こると言う事です。

 ご存知の様に、エストニア王国はエリーゼン王国へ何度も侵略戦争を仕掛けていますよね?

 では、何故エリーゼン王国へ侵略戦争を仕掛けているか、ご存知でしょうか?」

と海渡がトランさんに尋ねてみると、


「領地拡大や物資と言う事じゃないのか?」

とトランさんが答えるが、海渡が首を横に振り、


「こちらをご覧下さい。」

とエストニア王国の王宮での王と側近の会話の映像を表示した・・・。


 そう、あの『ジャクリーンを・・・』と言う鳥肌動画である。


 それを見て、ガックリと項垂れるトランさん。

「陛下・・・マジか・・・」と。


「だから、何度王宮側へフィールド・ドラゴンの討伐の軍派遣を要請しても、無理なんですよ。

 この王は一切自分以外考えてないでしょうからね。

 で、今朝21案件の依頼を当方でやりましたけど、あれは申し訳無いけど意味が無い依頼です。

 何故なら、フィールド・ドラゴンは餌を求めて拡散している現状で、餌を狩り取った訳ですから、当然更なる餌を求め、この後数日で街道まで足を伸ばしてくるでしょう。

 つまりフィールド・ドラゴンを一掃しない事には、被害は拡大するだけ。

 街道が潰れてしまうと、ここは陸の孤島になってしまいます。

 しかし、もしこのランバルディア領が、エリーゼン王国に編入するとしたらどうでしょうか?

 エリーゼン王国のアーサー国王は、非常に国民想いの素晴らしい人物です。

 だからこそ、私も友好国として手を結んだ訳なんですが、どうでしょう? 領民の平和と安全と発展の為に、エリーゼン王国に編入しませんか?

 滞っている物資や、フィールド・ドラゴンのせいで、小麦が作れなくなっている事も含め、農業技術支援も行えますよ?

 真面目な方だと、裏切り行為と考えるかも知れませんが、良く考えてみて下さい! 最初に国民を裏切っているのは誰か?」

と海渡が言うと、本当に気の毒になるほど、ガックリとしている。


「言いたい事は良く判りました。もうこれらを見ると、言葉が無くなってしまいますね。

 今まで、本当に不思議に思っていたんですが、しかし、これを見て逆に納得がいきました。

 そして、このままでは、この国に未来が無い事も理解しました。どうか、その話、宜しくお願い致します。」

と頭を下げられた。


「了解致しました。そうと決まれば話は早いw ちょっと待ってて下さいね。」

と海渡は言って、通信機を取り出して、アーサーさんに掛ける。


「あ、アーサーさん? 海渡です。ども。今ランバルディアの領主、トランさんと話が着きまして。

 ええ、是非宜しくと言う事で。

 ・・・・

 そうです、で、今からそちらにお連れして、顔合わせと、今後の話を詰めて頂ければと思いましてね。

 はい、ゲートで行きます。あ、あの部屋ですね?了解しました。」

と通信を切った。


「えっと、カイト様? それは??」

と空かさずに聞いて来る。


「これは魔動通信機です。ああ、元々冒険者を始めてからその後、魔道具とかを販売する商会を立ち上げましてね。この通信機も、その商品の1つです。

 1つ差し上げますね。」

と言って、1つを取り出して、使い方を説明した。


「これは滅茶滅茶便利ですね!! 是非何台か欲しいです。」

と目を輝かせるトランさん。


「まあ、それは話し合いの後にして、先にアーサーさんの所へ行きましょう!」

と海渡が話を切り替えて、ゲートで先日の会議室へと繋いだ。


「こ、これは!!!」

と驚くトランさん。


「これは、ゲートと言って、一度行った事のある場所へ繋ぐ時空間魔法です。じゃあジャクリーン、一番先頭で、続いてトランさん達、行っちゃってください。」

と全員をゲートに促して、移動したのだった。


 ---------------------------------------------------------------------------------------------

 暫くの間、話数の更新ペースが1日1話ぐらいになる予定です。

 宜しくお願いします。m(__)m

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る