第430話

「ふむ、ここの冒険者ギルドも、レイアウトとかって、同じ作りなんだなw」

とドアを開けてギルドの中に足を踏み入れ、エリーゼンの王都のギルドとほぼ同じ作りで有る事に感心する海渡。


朝のピークを過ぎてる為、残っている冒険者の数は少ない。

見慣れない、お揃いの衣装(装備)を身に着けた子供と美少女と美女、そんなハーレムパーティに目をクワッと見開く冒険者達。

ある者はポカンと口まで開けているwww


暫く眺めていて、いち早く復帰した冒険者の20歳ぐらいの男が、

「何て羨ましいパーティーだ!」

と呟いていた。



「こんちはー! 流しのSランクパーティーですw 何か面白い依頼がないかと旅して廻ってます!」

と最初に宣言しておく海渡。

要らないテンプレの回収はしたくないからねぇ~w


「げ! Sランクパーティーだと!?」

「マジか! あの若さでSランク・・・」

「ヤベぇー! 顔レベルだとSSランクだぞ!」

と冒険者達の声が聞こえる。


受付嬢のおーねーさんが飛んで来て、

「ようこそ、ランバルディア支部へ。本当にSランクの方々なんですか? 依頼を受けて下さるんでしょうか? キッツい討伐依頼OKですか?」

とグイグイ来るw


「ええ、何か面白いのあれば、受けたいと思ってますよ。 あ、一応これがギルドカードです」

と海渡が言いながらギルドカードを提示する。

それに続いて、他3名も提示した。


「わぁ~♪ 本当にSランクですねw 嬉しいわぁ~♪ あ、失礼しました。 思わず興奮してしまいました。是非依頼を受けて下さい。こちらの支部では、Sランクが居ないので、困ってました。」

と受付嬢のおねーさん。


海渡達は、勧められるままに応接室へと案内されて、ゆっくりと依頼書を見る事にしたのだった。



応接室で出されたお茶を飲みながら待っていると、依頼書の束を持ったおねーさんと、年の頃は50代くらい、ガッチリした体格のおじさんが入って来た。

「お待たせしました。ご紹介します。こちらが当方の支部のギルドマスターです。」

とおねーさん。


「どうも、ギルドマスターのホルテンだ。その若さでSランクだそうだな。凄いな!」


「初めまして、カイト・サエジマと申します。こちらは左から順にフェリンシア、ステファニー、ジャスリン(ジャクリーンさんの冒険者名)です。

彼方此方を旅しながら、面白い依頼を受けてますww」

と海渡が言うと、


「ガハハハw その若さでシッカリしているなw しかし美人揃いで、羨ましいパーティーだなwww」

と豪快に笑う。


うん、このノリは、おじさんと言うよりも、屋台の『おっちゃん』的な感じだなwww


「しかし、見た所、スゲー装備しているなぁ。これ程の物がそこまでキッチリあるとはビックリだぞ!」

と目の付け所がひと味違うホルテンさん。


「ほう! なかなかお目が高いw この装備の本質を褒められたのは、初めてかも知れません。流石ですねw」

と海渡が言うと、


「そ、そうか? ふふふ」

と照れていた。オッサンのデレは要らん!


「コホン。 早速本題の依頼なんですが、この中からどれか1つでもやって頂けると、助かるのですが・・・」

と横道に逸れたのを、無理矢理本筋に戻すおねーさん。


テーブルの上に広げられた20枚程の依頼をザッと見ていると、殆どがフィールド・ドラゴンから生活の場を奪われ押し出された魔物に関する討伐依頼であった。

つまり、

 フィールド・ドラゴンが繁殖

   ↓

 魔物が押し出される又は逃げる

   ↓

 フィールド・ドラゴンが散った魔物を捕食する為に広がる

   ↓

 魔物が押し出される又は逃げる

   ↓

 魔物が街道に出没  ←いまここ


と言う感じらしい。


「なるほど、これ、元凶であるフィールド・ドラゴンを狩らないと、魔物だけを狩るんじゃフィールド・ドラゴンが直接街道に出て来るんじゃないですかね?」

と海渡が指摘すると、ホルテンさんが苦い顔をして、


「ああ、気付いたか。そうなんじゃ。元凶はフィールド・ドラゴンなんだが、現在推定で500匹を超える大集団になってると言われててな。

前に200匹ぐらいの時に、領軍と冒険者の合同で討伐軍を編成して向かったんじゃが、半壊してしまってなぁ・・・。

1匹だとAランクなんじゃが、5匹だとSランク相当・・・10匹だとSSランク相当になるんじゃよ。

それが、500匹・・・とてもじゃないが、無理じゃろ?」

とホルテンさんが嘆く。


「なるほど。まあ、この20件?21件か・・・この依頼は当方で受けますよ。あと7名仲間が居ますから、明日から一緒に受ける事にします。

この21件が完遂した後で結構ですが、フィールド・ドラゴンの事で、提案があるので、こちらの領主様と面会出来ませんでしょうかね?」

と海渡が言うと、


「おお!21件を受けてくれるのか!! ありがたい。

領主様と面談? それは直ぐにでもセッティング出来るがのぅ。

21件の依頼達成後にセッティングするんで良いんじゃな? 了解したぞ!」

とホルテンさん。


「では、明日の朝、再度こちらに伺うので、明後日辺りにセッティングお願いしますねw」

と海渡が言って、冒険者ギルドを後にしたのだった。


海渡達が去った会議室で・・・

「ん? 奴ら明後日にセッティングとか言っておったよな? どう言う事か? 21件を終わらせた後にセッティングと言っておったが、明日の朝、もう一度聞いて見るかの。」

とおねーさんと一緒に頭を傾げるホルテンさんだった。



「さてと、一旦アーサーさんに連絡して、状況の報告して、久々に王宮にも顔を出して、状況を確認しておくかな。」

と海渡が言うと、


「あ、じゃあその前にこちらで食べる物を色々廻って置きましょうよ!!」

と若干焦り気味のフェリンシアww

ステファニーさんもウンウンと激しく同意しているw

ジャクリーンさんは、苦笑い。


そこで、海渡は3人が店を荒らし回って居る間に、各方面へ連絡を入れる事にした。

「あ、アーサーさん? 海渡です。ご報告がありまして。~~」

と海渡が、ランバルディアの状況を伝え、21件の依頼を達成後、領主と面会し、フィールド・ドラゴンの一掃と引き換えに、エリーゼン王国へ参入する事を説き伏せる予定と伝えた。

どうせ、フィールド・ドラゴンを一掃しなければ、餌が無くなったフィールド・ドラゴンが街道まで出て来て、余計に悪化する未来しかない。つまりどっちにしても、エストニア王国側の支援が受けられない事になる。

であれば、ランバルディアの取るべき道は、2つしかない。物流も途絶え、孤立無援のまま、エストニアに属したままでいるか、領民の為にもエリーゼンに編入するか。

前者は衰退を、後者は戦争の最前線を意味する。


まあ、戦争の最前線と言っても、元々エストニアとエリーゼンの戦場は街道がシッカリしているもっと東側。

交通の便が悪い、ランバルディアにわざわざ軍を派遣したとしても、フィールド・ドラゴンが巣くっているから、自然の魔物防壁になっている訳である。

全滅の危険を冒してまで、ランバルディアへ派兵する事は無いだろう・・・と解説すると、


「カイト君!凄いよ!! 事実上、無血で領土拡張じゃないかww 良いね良いね!!ジャンジャンやっちゃって!!」

とノリノリのアーサーさん。


「で、編入後は、アーサーさんの方から、農業支援する・・・とw ああ、あの魔道農機具をアーサーさん経由で支援すれば、領民を含め、大喜びだと思いますよ?」

と海渡がニヤリと笑いながら伝えると、


「うん、良いね! 色々迷惑掛けるけど、宜しくね!!」

とアーサーさんからお願いされて、通信を切った。


次は、ミケ。

「ミケ!お疲れさん。そっちの状況はどう?」


「あ、ボス! 大丈夫です。こっちは順調ですよ。」


「明日の朝から、ラルク達も連れて7名でこっち・・・ランバルディアの方に来て欲しいんだけど、大丈夫かな? Sランク案件が21個有ってね。」

と海渡が説明すると、「了解ですww」と大喜びしていたw




連絡が終わり、女性陣と合流した海渡は、1時間程買い物を楽しんでから、ゲートで王宮(日本)へと戻ったのだった。

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