第394話
大行進の列は、王宮前広場のヒラメ君の所に辿り着いた。
ゾロゾロと大人数で、帰って来た海渡達を発見した衛兵が、城内へと走り、慌てて、騎士団長と、大臣、王様までもが広場へとやって来た。
「カイト殿。昨晩は大変申し訳なかった。今後はもっとシッカリとした教育を行う故・・・何卒許しては貰えぬだろうか?」
と王様が引き攣りながら謝っている。
「まあ、もう良いですよ、昨晩の事は。それに、ご長男のハリウスさんとは、仲良くやって行けそうですから。
ただ、申し訳ないけど、それ以外の・・・特にあの2人が跡継ぎとなられた場合は、おそらく、我々はお付き合いを止めると思います。
あ、あとこの国には、孤児を支援する機関が全くないらしいですね。驚きました。この子らはスラムに居た子供達ですが、何日も食事に有り付けていない状態でした。
謂わば、国に捨てられたも同然の状態でした。よって、我が国で保護しますので、ご了承下さい。」
と海渡が言うと、エッ?って顔をしていたが、納得して貰った。
「あと、れいの邪神とその信徒の一件は安心してお任せ下さい。 キッチリとあるべき状態にさせて頂きますので。
これから10日程は、何だかんだで、チョコチョコこちらへお邪魔させて頂く予定ですが、その際、この広場に直接着陸したりして良いですかね?」
と聞くと、問題無いと許可を貰えた。
「なあ、カイト殿、相談なんじゃが・・・、まあ君に聞くのは筋違いとは理解しておるが、意見を聞かせて貰えないだろうか?」
と王様が言う。
「ん?何でしょうか? 私なりの意見程度で良ければ。」
と答えると、
「あの我が儘娘なんじゃが・・・どうしたら良いと思う?」
とwwww
おいおい・・・自分の娘だろwww どうするもこうするも・・・w
「えーーw それですかwwww 流石に、あれはねぇ・・・ 言葉はキツいけど、バカでしょ? バカがバカを増産した様にしか見えませんでしたよ?
言葉が悪くて申し訳ないですが・・・。 私も知り合いに沢山の貴族や王族居ますけど、みんな自分の立場や力、それに伴う大きな責任ってのを自覚した人達でしたからね。
悪いけど、初動教育を間違えましたね。『三つ子の魂百まで』じゃないですが、今から矯正するなら、相当な荒療治・・・最悪死ぬかも知れない様な荒療治が必要なんじゃないですかね?
それこそ、無人島に島流しにしてしまうとか・・・生き残るサバイバルだけを叩き込んで。で、今まで、どれだけ自分が恵まれていたのかを、実感し、自分が如何に愚かだったか、如何に自分が何も出来ないか、自覚させる事ぐらいしか無いと思いますよ。
もしくは、平民として、そのまま城から叩き出すか・・・。まあ無理なんじゃないですかね? 昨日の様子だと、多分反抗するだけで、心底理解出来なかったんじゃないですか?
骨身に浸みて無いから上辺だけで謝るかもしれませんが、きっと、また同じ様な事をしでかすでしょうね。
私の勘ですが、ハリウスさんの育児には、かなり王様が関与されたんじゃないですか? ご長男って事もあって。 で、その後のお子さんは、殆ど奥方任せだったんでは?」
と言うと・・・
「何故それを!?・・・」と言う目で見ていた。
「そりゃあ、見ればそう思いますよwww 私の国に、『朱に交われば赤くなる』って言葉がありまして、身近に赤い物があると、段々と赤く染まっていく って意味なんですがね。
身近に悪い例があって、その悪い例の通りに育った結果では? じゃあ、悪い例から遠ざけるぐらいしかないですよね。難しいでしょうねぇ・・・。
ハリウスさん、将来、本当に苦労しそうですね・・・。」
と締め括った。
王様が本気でガーーンとした表情で心底落ち込んでいたwww
「じゃあ、そろそろ行きますね。何か突発的な何かあれば、通信機でご連絡を! では、また!」
と挨拶して、機体に乗り込む海渡の行列。
興味深そうに機体の中でキョロキョロする子供達。
王様達が、側を離れたのを確認してから、メインキーを入れて静かに離陸する。
そして、上空100mで光学迷彩をONにして更に上昇する。
子供らは、機体内部に映し出される王都の様子に大興奮している。
「あ、あそこが俺達が居たスラムだよ・・・。」
とか色々と叫んでいる。
そして、高度1000mで、ゲートを使ってショートカットした。
機体は一気に日本の王都上空へと到着し、王宮の屋上へと着地した。
「ようこそ、神王国 日本へ。」
と子供達に告げ、ヒラメ君から降り立った。
屋上へは、ジュリア率いるメイド部隊がスタンバイしていて、子供らを任せたのだった。
一旦、部屋で休憩した後、海渡は大陸A邪教壊滅作戦用のコマンドスクリプトを作成し、2368箇所の邪教の教会位置に1機、教会本部には5機を配置する様にした。
但し、教会本部の5機は、作戦当日の朝に到着する様に時間差を持たせた。
これは、堕天使ザイリーが関知するのを警戒しての事だ。
腐っても天使・・・侮ると痛いしっぺ返しが待って居ないとも限らないからな。
何度かスクリプトを見直し、問題が無い事を確認して、コマンドボタンをポチッとクリックしたのだった。
そして、海渡はフェリンシアとステファニーさんを連れて教会へとゲートで向かう。
『女神様・・・』
「いらっしゃい!海渡さん、フェリンシアさん、ステファニーさん♪」
と初っ端から上機嫌の女神様。
「どうもw 一応、あの大陸の邪教壊滅作戦、開始しました。
問題の堕天使ザイリーですが、教会本部に居ると思って大丈夫でしょうかね?」
と気になっている事を聞くと、
「おそらくその筈だと思うのですが、腐っても天使なので、そこら辺の隠匿が上手いんですよね。
それに教会であれば、独自に結界を張ってしまうと、余計にファンテスタ神域からは確認し辛いのです。
あまり有益な情報をお知らせ出来なくて、申し訳ありません。」
と女神様。
「なるほど、逆に結界が無ければ、俺でも近付けば関知出来ますかね?」
と聞くと、大丈夫との事。
「あ、そうそう、ザイリーは、俺が使徒である事を遠くから関知出来たりするんでしょうか?
つまり、近付いてしまうと、バレるのであれば、拙いかと、偵察は控えている状況なんです。」
「ああ、なるほど・・・そうですね・・・、戦闘力だけで言えば、断然海渡さんの方が上なんですが、事、感知能力だけで言えば、ザイリーの方がやや上になりますね。
うむ・・・確かに問題ですね。」
と考え込む女神様。
「一応、初手で決めないと、逃げられる恐れがあるかと思いまして。逃げて潜伏されると、厄介ですからね。
奴が居ると思われる、教会本部へは、当日の朝に攻撃機が到着する様にしてます。事前に関知されると厄介ですからね。」
「そうですね、それが無難でしょうね。」
「仮にですが、小型の偵察ドローンを教会本部に飛ばした場合、見つけられる可能性は高いでしょうかね?」
と聞くと、
「そうですね・・・ザイリーは性格的に、ズボラで怠け者で雑な者なので、多分小型で、強力な魔力を出して居なければ、バレる心配は無いと思います。」
「なるほど、じゃあ、もっと小型で魔力放出を押さえた物を作ってみます。
それはそうと、ザイリーの他には堕天使とかって紛れ込んでないでしょうかね? ザイリーの後からドンドン出て来られても困るんで・・・。」
と念を押したのだが、大丈夫だそうだwww 本当かなぁ?
そして、王宮に戻った海渡は、地下工房で、超小型偵察隠密ドローンを作成するのであった。
1時間半の格闘の結果、もの凄い物を作り上げた海渡は、自画自賛して喜んでいた。
サイズは、1cmにを大幅に切る5.5mm! 魔力の放射を極限まで遮断した、超小型ドローン。更に光学迷彩も採用しているので、普通に見て、ハエよりも目立たない。
気配も羽音がする訳でもないので、作った本人が、自分で関知出来ない程である。
但し、欠点もある。
今までのドローンの様に普通の魔石を搭載出来ないので、小さい欠片を使用している。
その結果、通常運用期間が短く、2ヶ月がリミット。
その間に回収して、リチャージする必要がある。
また、魔力の放射量を減らす為、高出力で、直接データを飛ばす事が出来ない。
よって、周囲500m以内に母艦兼用の中継ドローンを待機させる必要がある。
そして、その母艦の中継で、全てのデータをサーバに送信する為、最大約0.5秒のラグが生じる。
更には、低出力故に高速移動が出来ない。 最高速度で時速約70kmとなっている。
そして、最高速度を2分続けると、3日分の魔力を消費してしまう。
母艦となるドローンには、リチャージ機能を付けたので、母艦に戻ってローテーションする様にした。
超小型ドローンと母艦の製造ラインを作成し、稼働した。
明日の朝には、ドローン3000個と、母艦3機のセットが完成する予定である。
(各母艦には1000機の小型ドローンが内蔵される)
運用してみて足り無いようなら、補充が出来る様に、生産は続ける予定。
更に、ヒラメ君に装着された30mmガトリングガン用の弾と20mmのガトリングガンの弾、9mmのマガジンの弾だが、『神滅』を付与する様に変更し、既存のストックの弾にも付与をかけ直した。
これで、出来る準備は終わったと思う。
大食堂で久々にみんなの顔を見ながら食事し、風呂に入った後は、ノンビリと部屋で購入した錬金の本を読む事にした。
錬金の初級入門書だが、これは大して役に立つ内容は無く、一般的な予備知識等で、テクニック等以前の触り部分しかなかった・・・3冊も要らなかったな。
で、ポーションの初級編からが、重要な部分で、用語が意味する作業や錬金道具の使い方まで、細かく書かれていた。
ジックリ読んだつもりであるが、身体加速とクロックアップを使ったお陰で、2時間で初級編を読破し、完全に頭に入れた。
逆に中級、上級、特級・・・となると、用語や作業の説明が無い分だけ、本が薄く、レシピや手順、注意事項がメインとなり、サクサクと読み進める。
そして、とうとう最後の神話級の本となり、ワクワクしながら本を読む・・・。
判った事、それは海渡には神話級(エクサー)を大量に作る事が可能と言う事だった。
エクサーの一番主な原料は、ユグドラシルの葉と聖水(ラピスの泉の水)、それにマギマッシュである。
アイテムボックスには、こちらに来た当初に皿代わりに使っていた、ユグドラシルの葉が大量に保管されていた。
また、マギマッシュは、希望の岬のダンジョンの第5階層のジャングルでかなりの数を確保している。
「うーーん、出来るなww ちょっと試しに作ってみるかw」
時刻は午後10時を過ぎていたのだが、こうなってしまうと、止められないw
海渡はステファニーさんを誘い、地下工房の横に新設した、錬金工房で、エクサーを作成する事にした。
エクサーの作り方は実に簡単?で、ユグドラシルの葉を乾燥させて、それを聖水で煮出す。
この際、出来るだけ魔力を込めてかき混ぜると良いらしい。
ユックリと沸騰させずに2日間煮出した物に、今度は乾燥させたマギマッシュの粉末を混ぜ、冷暗所で1日置けばできあがり。
(これは、1日でマギマッシュの成分が水の溶け込むのに必要な時間との事。)
太陽と言うか、紫外線で劣化するらしいので、茶色い紫外線を排除する様な容器に入れれば、10年でも100年でも保つらしい。
海渡には、時短の魔道具があるので、そこら辺は魔力を込めてかき混ぜる魔道具を作成した。
かき混ぜる棒は、魔導効率を考え、強化TFGのかき混ぜ棒を作成した。
また、沸騰しない温度と言う事で、成分が一番出やすい88°を保持する様にし、溶液の鍋も魔力を掛ける為に、強化TFGで作成した。
10分で2日間が経過する時短加熱器具を作成し、魔力を掛けながらかき混ぜて88°で煮込む。
一瓶の容量が、100ccとあったので、100ccの茶色いアンプルを作るラインを作成した。
乾燥させたマギマッシュの粉末を冷ました煮汁に混ぜ、時短空間で1日(5分)安置。
出来た溶液をかき混ぜて濾し、アンプルに入れた。
「うん・・・出来たね。鑑定結果もエクサーって出るね。」
と淡々と語る海渡。
今回、お試しで作ったエクサーは、全部で50本。
「凄いなぁ、これだけで、部位欠損まで治るポーションになるねんなw おもろいわぁw」
とステファニーさんが感心している。
「明日、錬金ギルドのアンドリューさんの所に、一応持って行ってみるかw」
と反応が少し楽しみな海渡だった。
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