第393話


『兄貴!今何処っすか? 俺、アンとサニーの服選びから脱出して来たんすけど、兄貴と合流して良いですかね?』

と丁度昼飯を何処で食べようかと思案していると、伝心が来たwww


『おう!俺も服選びはしたくないから、別行動で、今は1人だぞ!こっちに来るか。』

待ち合わせして、一緒に食事を取る事にした。


「いやぁ~、女の子の服選び・・・地獄っすよ。俺なんか、適当で良いじゃんって思うんですがね?」

とラルク少年が嘆く。


「俺も同感だが、女性とは本来そう言う物らしいぞ? 下手に着いて行って、『ねえ、どっちが可愛い?』って聞いて来た時は、地雷に気を付けろよ?

不正解を選ぶと、機嫌が悪くなるらしいぞ。 つまり聞いて来た時には、大体自分の答えがあってな、その正解を外すとダメらしいだ。」

と海渡が言うと、


「なんて理不尽な・・・」

とガクブルしていたwwww


「だから、正解は、着いて行かないwwww」

と言うと爆笑していた。


海渡らは、適当に屋台の肉串等を買い漁って、食べ廻っていた。


すると、路地の裏から、見窄らしい服装で、少し汚れた感じの、同じぐらいの歳の子が、指を加えて見て居るのに気が付いた。

海渡が、1本出して手招きして差し出すと、一瞬目を輝かせ1歩踏み出したのだが、立ち止まり、辺りをキョロキョロと伺っている。

「ん?何か訳ありか?」

と海渡が呟き、ラルク少年と2人で、その子の方へと足を向けた。

辺りを見ても特に異変は無さそうなのだが・・・。


「やあ、お腹へってるのかい? 沢山あるから、君も一緒に食べようよ。」

と肉串を渡すと、


「あのぉ・・・ホントに頂いて良いですか?」

と言いながらも、お腹がグキューと壮大に鳴いている。


「もしかして、他に仲間いるのか?」

と聞くと、ウンと頷く。


「よし、じゃあ、そこでみんなと、一緒に食べようか! まだまだ沢山持ってるから。」

と言うと、嬉し気に頷いていた。


子供に案内されながら、裏路地を進み奥の寂しい、匂いのキツいエリアへとさしかかってきた。

なるほど、やはりスラムの子か。


海渡は、半径50mの範囲を歩きながらクリーンを掛けていった。

そして、立ち止まった場所は、


沢山の子供が居る所だった。

「君ら、みんな孤児なのか?」

と聞くと、全員が頷いていた。


「俺もだ! よし、じゃあみんな集まって!」

と全員を集め、半径200mにクリーンを掛ける。


「うお!なんか、体の痒みがなくなった!」

とか、

「あれ?何か良い匂いしないか?」

とか言っている。


「食べ物も沢山あるから、心配しないで良いよ。あと体調の悪い子や、怪我してる子、病気の子いるかい?それも治せるよ!」

と言うと、数人が手を上げている。


なので、ラルク少年に言って全員の治療をさせた。


まずは、全員にハチミツ水を飲ませ、胃腸を整えさせ体力を付けさせる。


海渡は大きなテーブルを3つ出して、その上に沢山の料理やサンドイッチをドンドンと並べて行く。

飲み物やスープ、パン、果物・・・子供らは目を丸くして、驚きつつも、大喜び。


「さあ、じゃあみんなで食べよう! お替わりは沢山あるから気にしないで良いよ。 いただきます♪」

と言って、全員に好きな物をたべさせる。


海渡もラルク少年も自分の分を取って、食べながら、色々話を聞くと、さっきは、お腹が減ったので、時々物をくれる人が居るらしいのだが、通らないかな?と眺めていたらしい。

子供の中には、2日振りに食べる子もいたようで、仕事に有り付ける時はまだ良いが、最悪な時は悲惨な物らしい。でもなるべく、犯罪はしない様にとみんなで助け合っているらしい。

時々、屋台や露店のおじさんやおばさんが、余った物を分けてくれる事もあるとか・・・。


「そうか、結構苦労してるな。もし希望者居れば、何人でもうちで働く事も可能だぞ? 心配するな、俺もさ、とある魔物だらけの森の中の集落で暮らしてたんだけどな、ある日結界が壊れて、魔物の襲撃にあって、両親も周りの大人達も死んでしまってな。

フェリンシアって言う女の子と2人だけが生き残ってさ、それから一番近くの都市まで700kmぐらい歩いて森を抜けて、今も生きている。一番近くの都市で、良い人に助けられて今の俺が居る訳だ。

人ってのは、ちょっとした巡り合わせで、人生が大きく変わる事がある。俺も同じ孤児だし、切っ掛けぐらいは手助けしてやれるぞ!」

と言うと、単純に喜ぶ子半分、本当に良いのか?と困惑する子が半分・・・。


まあ、普通はそうだよな。


「ああ、ちなみになんだが、おれの所ってのは、この大陸じゃないんだよ。となりの大陸なんだ。昨日、王宮の方に、空から飛んで来たのが降りたのを見た人いる?

あれに乗ってやってきたんだよ。」

と海渡が言うと、


「あ、俺見たよ! あれって、人が乗れる物だったんだ!? すっげーーー!」

と騒いでいる。

どうやら、15人ぐらいが、見ていたらしい。


「そうか、見てた子が居たんなら、話が早い。 うちはね、商会をやっていて、空飛ぶ『飛行機』という魔道具や、地面を走る馬の要らない馬車の様な、自動車とか色々な魔道具なんかを販売しているんだよ。

これが、自動車だよ。」

と自動車を出して見せると、


「「「「「「「「「うぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」

と子供らがビックリしている。



丁度そこへ、

「海渡みっけ!」

とフェリンシアとステファニーさんがやって来た。


「お! パーティなんか!? ええなぁw うちも参加してええか?」

と食べる気満々のステファニーさんw


2人に今までの経過を話し、この子らを連れて帰ろうかと思っている事を伝えた。


「うん、ええんちゃう? ここに居るよりも100倍も1000倍も愉しいし、色んな事も学べるし、美味しい物も沢山食べて、きっと愉しい人生になるでw

何よりもな、カイト君の所におると、おもろい事沢山なんやwww」

とステファニーさんが、バクバク食べながら、子供らに言うと、不安気にしていた子供らも段々と目をキラキラさせて来た。


すると、孤児の1人が聞いて来た。

「なあ、兄ちゃんよぉ、俺達って、具体的にどんな仕事をすれば良いんだ? 俺達に出来る仕事あるんか?」

と。


「ああ、そうだね。漠然としていると、不安だよね。

えっとね、まず12歳未満・・・つまり11歳までの子供は、孤児院か、又は孤児支援プログラムと言って、将来に役立つ字の読み書きが出来る様にとか、計算が出来る様に、勉強をして貰うんだよ。

そして、店員や物を作る裏方や、ご飯を作る料理人になりたい人は、12歳になったら、それぞれうちの商会で働いて貰う感じだね。

執事とかメイドとかをやりたい人は、うちの宮殿で働いて貰うし、強くなって冒険者として働きたい人は、このラルク君みたいに、武術や魔法を教えて冒険者として、自分で生活して行く感じだね。

そこら辺は本人次第。全部手助けは出来るし、色々な役立つ事を教える事も出来るけど、最終的な方向を決めるのは各自で決める。やりたくない事を無理にやらせる事は無いよ。

現在、12歳以上の人は、ザザッと文字の読み書きと計算を覚えて貰って、さっき言った店舗の店員とか色々を決めて貰って、仕事に就く感じかな。まあ、どちらにしても、衣食住全てちゃんと揃ってるよ。

暖かいベッドで寝て、3食ご飯を食べて、勉強や訓練や仕事をやって、毎日お風呂に入って寝る・・・そんな感じだね。働き出すと、全員週に1日は必ず休みが取れる。

給料もちゃんと出るし、待遇は良いと思うよ。孤児支援プログラムの場合は、ちゃんとお給料も毎月支払われるし。」

と説明する。


「え?宮殿って??」

と声が上がった。


「ああ、俺さ、冒険者であり、商会の会長であり、向こうの大陸の神王国 日本の王様でもあるんだ。だから、その宮殿・・・王宮だな。」

と答えると、

「「「「「「「「えーー王様ーーーーーーー!!!!」」」」」」」」

と絶叫していた。


「よし、こうしてみてはどうかな? 不安だろうから、まず半数ずつで、これから行く先の宮殿、街、うちの商会、孤児支援プログラム、うちの国の孤児院・・・これらを見て廻って、そして一度ここに戻ってくる。

で、交代して、次のグループも同じ様に見て廻る。戻ってみんなで騙されてないか?とか不安は無いかを話し合って貰って、最終的にどうするか、決めて貰い、一緒に来る人は連れて行く。

と言うのだったら、不安が少ないんじゃない?」

と提案してみた。


「え?どうやって見に行くの?」

とキョトンとしてたので、


「ああ、魔法で『ゲート』って言うのがあってね、こうやって、繋ぐと一瞬で行った事ある場所なら行けるんだよ。」

とゲートを宮殿の屋上へ繋いでみた。


ゲートの向こうに見える、お花畑の様子に、

「「「「「「「「魔法、すっげーーー!!!!」」」」」」」」

と大興奮。


「どうする?」


「「「「「「「「お願いします!!」」」」」」」」




って事で、王宮、商会、孤児支援プログラムの子らの居る、託児ルームや、訓練場、孤児院を40分ぐらいで見学して、戻って来た。

そして、次のグループのバトンタッチし、全員が見学し終えて、元のスラムの一郭へと戻って来た。

見学先で、大興奮していた子供達であったか、ここに戻って来たら、悲しげな顔をしている。

夢の世界と目覚めた後のギャップで、ガックリしているのと同じかな。


「どうだった? 嘘じゃなかっただろ? みんな同じ様な境遇・・・中には、もっと酷い状態からあの状態になった訳だから。そして、君らにも扉は開かれている。

だれが何処の扉から、どの道を進むかは、君ら次第。君らの頑張り次第だよ。怠け者や嘘つきを優遇する事は無いけど、ちゃんと真面目に、正直に頑張る子達への援助はするよ。」

と海渡が言うと、


「お願いします!」

「私も、お願いします!!」

「俺もお願いします!」

と次々にお願いされ、結局明日を待たずして、全員が着いて来る事になった。


よし、そうなれば、話は早いね。

必要な荷物をマジック・ポーチに入れさせ、弟子ズの残り6名も合流して、72名の子供の大行列が出来上がったw


途中で、衣服を購入して、着替えさせて、サッパリとして行く。



何処へ向かっているかと言うと、王宮前の広場へと向かっている所。

一応、国から捨てられたも同然の扱いだった子供らだが、この国の子供らなので、筋として、王様へキッチリ報告を入れてから、連れて行く予定。

聞くと、この国には、孤児院と言う制度も、孤児を助ける様な機関も、全く無いらしい。



子は親に取っても、国に取っても、宝なのだよ。

馬鹿娘を量産する前にヤル事があるだろうよ・・・。悪い人ではないが、足りてないな・・・。

と海渡は心の中で思うのだった。

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