第390話
ニヤつくSSランク冒険者パーティ『絶対領域』の5名が、訓練場へ到着すると、そこは異様な雰囲気であった。
何故かただの子供の能力テストを、47名の冒険者が青い顔をしたりして、見学しているのである。
そして、当の10名の新人はと言うと、何故か椅子とテーブルがあって、お茶や飲み物を飲んで、優雅に談笑している。
(声は聞こえてなかったので、和気藹々の雰囲気に思っている、バカな『絶対領域』。実際は酷い内容なのだがw)
「おう、すっげー美人に美少女・・・8名も居るじゃんwww どんだけ、『おご馳走』なんだよww」
とザックがホクホクしている。
『絶対領域』の他4名も、「俺、あの狐っ子、壊したいww」とか、「むふふ、猫良いな猫!尻尾で吊して・・・ぐふふw」とか、散々である。
観客席に居た冒険者達の中には、かなりまともなパーティも居て、本気で心配してやって来た者も混じっていた。
そんな冒険者達が、ヤバい噂の絶えない『絶対領域』の姿を見て、騒ぎ始めた。
「おい、見ろよ、試験管・・・『絶対領域』みたいだぜ? ヤベーよ! おい、誰か、ギルマス呼んで来いよ!!」
「何で新人の試験管でSSランク出て来るんだよ? しかもあいつらに壊された女、50人じゃきかなって話だぜ! ヤバいよ! あの可愛いケモ耳っ子が壊されちまう(汗」
と心配していた。
最後に凄く取って付けた笑顔でやって来たナニーニが、椅子とテーブルに着いて寛いでいる海渡らを見て、一瞬顔を歪めたが、
「お待たせしました。これより能力テストを始めます。今日はラッキーな事に最高の試験管が引き受けてくれる事になりましたよ。
まずは、この能力テストのルールをお知らせします。
1)相手を殺す事は禁止です。と言っても不慮の事故による怪我はあり得ます。
とにかく死なない様にして下さいね?
2)武器は皆さんのお持ちの武器でも、こちらで貸し出す武器でも構いません。
3)魔法・・・プププ・・・魔法の使用は自由ですが、相手を殺さない様にして
下さい。
4)皆さんが、降参をすると、試合終了。又は皆さんが気を失ったりして、
戦闘不能になったら試合終了となります。
5)この訓練場には、壁にあらゆる攻撃・・・物理攻撃も魔法攻撃も防御する特殊な
結界が張り巡らされています。なので、心置きなく戦って下さい。
以上ですが、何かご質問は?」
海渡が手を上げて聞く。
「なぁ、おねーさん、そこの変態雑魚5匹やっつければ良いのか? で、その哀れな雑魚側は降参無しって事で、認識はあってるか? 殺さなければ良いんだよな? 生かしておけば? で、ランクは、そいつらを倒せば、そいつらと同じランクになるって事で良いのかな?」
と燃料を投下しつつ質問をすると、
「何を? 誰が変態雑魚だ? 殺されてーのかよ!!!!(怒」
とザックが吠える。
「ええ、万が一にもあり得ませんが、試験管ですからねw 試験管に降参は無いですよw ふふふ、殺しちゃダメですよ?ちゃんと生きてないと。
ランクは、プププ・・・試験管を倒せれば、勿論試験管と同じランクでスタートとなりますwww」
と。
「なるほど。それはありがたいなw 話が早くてwwww」
そして、海渡らは、モメていた。 誰が最初にヤルかでwww
「だって、絶対最初の5人以外には廻って来ませんよ? それはズルイです!!」
と口を尖らせるプリシラ。みんなもウンウンと頷いている。
「ボス、あんな雑魚が5名しかいないんですよ? あんな雑魚5人纏めても秒殺所か、瞬殺ですよ?瞬殺! 逆に殺すな!って方が難しですよ?」
とヒートアップするミケ。頷くみんな。
「おいコラ!ガキ共! 聞いてりゃ、雑魚雑魚って、舐めてるのか! こちとら泣く子も黙る最強SSランクパーティ『絶対領域』様だぞ!?」
とザックが吠える。
「あー、ほら、変態領域の人が怒ってるよwww 悪いけど、初手は俺にやらせてくれ。 ちょっと我慢の限界なんでね。」
とみんなにお願いする海渡。
「「「「「「「まあ、兄貴(ボス)がそう言うなら・・・」」」」」」」
と引き下がる弟子ズ。
「あーー、変態領域の皆さんプププ・・・もっと良いパーティ名付ければ良いのにw 変態領域だってwww」
と爆笑する海渡。
「おい、聞いたかwww 変態領域だってよw 言い得て妙だwww 上手いな坊主www」
と爆笑に包まれる観客席。
顔を真っ赤にして、ファビョる変態領域の5名。
「あーー、すみません、何言ってるのか判らないです。 オーク語はちょっと・・・」
と海渡が更なる燃料を投下する。
「しかしあれですね。雑魚相手に何か弱い者虐めみたいに思われるのも嫌だなぁ・・・どうですかね? そちらは5名 変態フルセットで来るってのはどうですか? プププ・・・変態フルセットwwww
あ!そうだ!! 折角だから、試合に掛けますか!? 俺に1人vs変態フルセットで戦う。 えっと・・・あこれで良いか・・・じゃあ、俺の勝ちに白金貨1枚掛けます。
あ、でも雑魚な変態さん達には、白金貨1枚なんて掛けられませんよね? 値段落としますか?」
と海渡が煽りに煽りを入れる。
「よし、良いだろう。こっちも白金貨1枚・・・いや、2枚掛ける。ふふふ、金の力でSSランクパーティが何とかなるとは思わん事だなww」
との事。
「へーw 持ってるんだww じゃあ、更にレイズしても良いけど、ここは華を持たせて上げて同額にするだけにしとくよww」
と白金貨1枚合計2枚を揃えておいた。
そして、海渡が悪い笑みをして、風魔法の拡声を使い、
「あー、ギルドの皆様、今この変態領域だか自称SSランクパーティの5名との能力テストにおける『掛け』を行いました。
変態5匹がオーク語で言うには、変態5匹vs私、カイト・サエジマ 6歳との試合で勝つと豪語しています。
私は、自分の勝ちに白金貨3枚・・・つまり金貨300枚分を掛けます。変態領域だか絶対変態だかのSSランクパーティに掛ける方居ませんか?
あ、ああ、こいつら頭も性格も悪そうだから、人気無さそうだな。さあ、掛けた掛けた! 冒険者ギルドの外のご通行の皆様も良ければ見学でも掛けでもして行って下さいねーー!」
と宣言した。
「せっかくだから、ギャラリーが沢山居ないと勿体ないですもんねwwww」
と海渡が黒い笑みを浮かべながら言うと、変態5匹は激憤、ナニーニはオロオロしてらっしゃるww
いつの間にか、またフェリンシアが今朝の机を出して、伊達眼鏡を掛け、キリリとしている。
机の上には、
「6歳の少年」 と 「変態5匹」の紙が下がっており、隣に陣取るステファニーさんが、風魔法の拡声を使い、
「さーさー!お立ち会いお立ち会い! 暇な方も、夕飯の準備で忙しい方も、暫しお付き合いを!
腹黒受付嬢が推薦する自称SSランクパーティ変態領域の5匹と、義憤に怒る人族の6歳の少年 ・・・なんと能力テストのついでに、無謀にも掛け試合を提案し、この勝負に白金貨2枚を双方共に掛けるそうです。
更に、自分の勝ちに白金貨3枚・・・・つまり金貨300枚を掛けるそうです。さあ、掛けに乗る奴はいねーかーー!
何処の坊ちゃんだか知らない人族の少年vsゴロツキ冒険者 パーティー名・・・ああ、変態領域ではなく、絶対領域? だそうです。さあ、この勝負に掛ける方は居ませんか?
さあ、掛けた掛けた!! 今夜のご飯が、サンドイッチからステーキに変わるかも知れませんよ!!」
と何時か何処かで聞いたフレーズww
次々と掛けに群がる冒険者や後から入って来た街の通行人もドンドン掛けて行く。
あれよあれよと言う間に、絶対変態・・・いや『絶対領域』の方の掛け金額が増えていく。
「さあ、そろそろ〆切りますよーー! 絶対変態・・・いや絶対領域?に掛ける人はいませんかーー? では〆切ります。」
と言う声と共に、OKサインが出される。
「お待たせしました。腹黒受付嬢の方、お進め頂いて結構です!」
とステファニーさんが、ニッコリ笑って告げる。
引き攣るナニーニ。
「あー、あー、では、これから能力テストを開始します・・・。変則的ですが、本人の希望により、カイト・サエジマ君は1人、対する試験管のSSランクパーティー、絶対領域はフルメンバーとなります。
では、開始!」
と号令が掛かり、瞬時に『身体強化』、『身体加速』、『クロックアップ』を全開にし、軽いアッパーカットで全員の顎を砕いた。
観客が見たのは、号令と共に上へ跳ね上がる絶対領域の姿のみ・・・。そして飛び上がった5名の股間をアイスアロー5発で撃ち抜き、更に全員の足首から下を刀で一刀両断。
これだけの事が、僅か、1秒に満たない間に起きた。
次に観客が見たのは、股間と足首から血を流し、のたうち回る変態5名と、その前で腕を組んで極悪な笑顔をしている海渡の姿だった。
更に海渡は、上空に飛び、上から足首と股間を狙い15発の小さいファイヤーボールを出して傷口を焼いた。
「「「「「ギャガーーーーーーーー」」」」」
と顎の骨が折れて声にならない悲鳴を上げるゴミ5匹。
チラリと見ると腹黒受付嬢のナニーニは、ペタンと地面に座り込み、失禁してアワアワ、ガタガタ。
海渡は、大きな声で、
「何でしたっけ? 俺が降参するか、俺が戦闘不能になるまでは、試合続行ってルールでしたよね? まだこの通り、俺は幾らでも行けるんですが、殺さなければ良いんでしたよね?
不慮の事故で怪我をするのは、しょうがない? でしたよね?」
と黒い笑みを浮かべつつ宣言する。
更に海渡は上空30mまでの大きな青い火柱を作り、ジリジリと動かして行く・・・。
「おおおーーーい、待った! 待ってくれーーー!!!!!」
と叫び声が聞こえ、海渡が上空から見下ろすと、ガタイの良い50代ぐらいの男が叫んでいた。
海渡は、
「すみません、まだ能力テストの最中なので・・・、後にして貰えますか?」
と笑みを浮かべつつ、叫び返す。
「能力テストは終了だ!!! 全員合格だ! だから、もう止めてくれ!」
と男・・・多分ギルマスが叫ぶ。
「えーーー? でも、そこの腹黒受付嬢が、言ったルールと違いますよ? 彼らだって、ヤル気満々でしたから、こんな所で寸止めされると、嫌なんじゃないですかね? 多分これから反撃されるでしょうから。
まさか、この程度の攻撃で、降参とかも無いでしょうし。」
と言って、海渡は空中に大型のガラスディスプレイを出して、これまでのドローンを使って撮影したやり取りを見せる、そしてナニーニとザックの小声の会話まで全部を聞かせた。
ザワザワと騒ぎ出す、満員のギャラリー。
すると、
「すまない、当方のギルド職員の不正・・・ワシは、このギルド支部のギルドマスターで、ドワンゴと言う。君らの実力は良く分かった。
この通りだ。この後は我々による裁きに任せては貰えないだろうか?」
と頭を下げて来た。
海渡は火柱をキャンセルして、地面に降り立ち、
「そこの受付嬢、ナニーニでしたっけ? 相当悪どい事をやっていた様ですよ。自分の担当とする為、体を使って、ゴミ5匹を買収し、難癖付けて担当を奪い取り、更にランク上げの為に、依頼のランクを改ざんした物を受けさせて、SSランクまで引っ張り上げたらしいです。
そこのゴミ5匹はもの凄い数の女性冒険者や一般人の女性を毒牙に掛けて、俳人同様に壊したり、実際に魔物の餌にしたりと・・・それ相応の報いを受けさせるべきだと思います。」
と大声で宣言する海渡。
ガタガタと震えるナニーニは、ギルド職員によって拘束され、同様にゴミ5匹は半ば引き摺られる様に、その場を退場して行った。
「と言う事で、この勝負は私の勝ちで、問題ないですかね?」
と聞くと、
「ああ、この勝負、この少年の勝ちとする。文句のある奴は・・・まあこれを見たら居ないだろう?」
と言っていた。
そして、
「申し訳ないが、君ら、ギルドマスター室まで来て貰えるだろうか?」
とお願いされ、みんなに撤収の合図を送る。
「では、この勝負、ギルドマスター ドワンゴさんの裁定により、6歳の少年カイト・サエジマの勝利とします。 おつかれしたーーー♪」
とステファニーが拡声を使って締めた。
白金貨5枚+2枚を回収し、残りは全員で山分けwwwww
ニヤニヤと笑いが止まらない10名は、ギルドマスター室まで案内されたのだった。
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