第386話


王宮から出て、ヒラメ君に戻った面々。


「いやぁ~~、一時はハラハラしちゃいましたwwww」

と笑うオスカーさん。


「いや、せっかく助けた国を闇雲に壊したりしないからね?」

と海渡が言うと、


「そりゃそうかw」

と全員笑っていた。


「ところで、みんなお腹減ったよね?」

と言うと、全員がウンウンと頷く。一部3名・・・いや2名と1匹、何故君らも頷く?と納得いかない者が混じっていたがw


「オスカーさん、街を見て来たんでしょ? 何処か良さげな食堂とかなかった?」

と聞いたら、何軒かピックアップしているらしい。


「流石、オスカーさん! じゃあ、ゲートで案内して!」

と路地裏にゲートを繋いで貰って、街に出た。


全員、お小遣い分をザインバッファ王国のお金に両替しておいたので、買う気満々である。

店へ案内される道すがら、露天や屋台で、チョコチョコと買い食いをしつつ進んで行く。


まあ何処にでも必ずある肉串だが、豆板醤?辛味噌風味なのが美味しかった。

「ねえ、オスカーさん、ここの名産とか特産って何だったの? 何か良い物あったりした?」

と聞くと、


「そうですね・・・。特産なのかは不明ですが、私が良いと思ったのは、焼き物ですね。

お皿とか、ティーカップ系です。壺とかも素晴らしい物でした。買うなら焼き物はお勧めかと。

あと、携行食が面白かったですね。何というか、我々の方だと、干し肉、堅いパンぐらいじゃないですか。

ここは、スープを乾燥させて、固形にしていて、お湯を注ぐとスープに戻る・・・と言うのがありましたね。

ああ、そうそう、アクセサリーの細工は凄かったですよ!ふふふ。

まあ時間がそこまで沢山あった訳じゃないので、まだまだ有るとは思いますけど。」

と。


「なるほど、ヨーコさんへのアクセサリー選定に時間の大半が取られたと・・・なるほどねw」

と笑うと、


「いえいえ、そんなこはww」

と笑っていた。


そして着いた食堂は、結構な人数の客が居たのだが、何とか席が取れて2テーブル続きで座る事が出来た。

店員のおねーさんに、お勧めの料理を適当にバンバン持って来て貰う様にお願いして、ワクワクと待った。


「どんな料理が出るのか、ワクワクだねw」

と海渡が言うと、みんなもウンウンと頷きながら、他のテーブルで食べられている物をチラ見している。



暫くして運び込まれた料理は、大変美味しかった。

特にモツの煮込みは大変に美味しくて、お替わりをした程。


「ねえ、おねーさん、これ何のモツなの?」

と聞くと近辺で捕れる、マッド・ブルと言う魔物のモツらしい。


「へぇー、じゃあ、これの肉とかも美味しいんじゃないの?」

と聞くと、


「そうなんだけどね、結構高いのよね。予算に余裕あるなら、出すけど、どうする?」

と聞いて来た。


「じゃあ、人数分・・・ああ、12人分お願いします。」

と言うと驚いていた。


運ばれて来た12枚のマッド・ブルのステーキは、美味しかった・・・。美味しかったが、ミノタウロスやカモフラージュ・カウに比べると・・・ね。


「なるほど、こう言う感じなのか。美味しい事は美味しいが、ソースが良ければもっと美味しいだろうなぁ・・・。」

と呟く海渡。



そうそう、周りの客の話し声が聞こえて来るのだが、殆どの話題が、今日海渡達が乗って来たヒラメ君の事と、聖騎士団との戦争の話だった。


「俺達も志願して、何とか守れるのだろうか?」

とか、


「家族だけでも、最悪を考えて逃がすべきか?」

とか、


「いっその事、教会と聖騎士に滅茶苦茶されている他の国と手を結んで、反撃に出られないか?」

とか、


「今日空からやって来た、あれは味方なのか? もしかして、聖騎士が乗り込んで来たのでは?」

とか色々だった。


「すみません、ちょっと話し声が聞こえたので・・・。教えて欲しいんですが、聖騎士に負けて滅んだ場合って、生き残った国民はどうなるんですか?」

と横のテーブルのおじさんに聞いてみると、


「なんだ、坊主は余所から来たのか? そんな事も知らないのか? まあ良い、滅んだ国の国民は、みんな奴隷か神の名の下に惨殺だよ。

生き残っても、女子供は奴隷墜ちして聖騎士達や司祭達の性奴隷で、壊されておしまいさ・・・。悲惨なものだよ・・・。

俺らはこの国の人間だから、最後まで守り抜くつもりだが、余所の国の者なら、早めに逃げるこった。巻き込まれるからな・・・。」

と言っていた。


そこで、海渡は・・・

「ご心配、ありがとうございます。

あれ?でも大丈夫じゃないですかね? 聖騎士って騎士って言うぐらいだし、馬に乗ってるんですよね?」

と言うと、


「そりゃそうだろw 聖騎士様だもんな、歩いて来たりはしねぇーだろw 徒歩は可哀想に無理矢理招集された一般兵共だよ。何が大丈夫なんだ?」

と聞いてきた。


「なるほど、じゃあ、海側から船とかで来ない限り、大丈夫でしょうよ? だって、あんなに立派な国境の城壁あるんですもん。いやぁ~見てビックリしましたよww」

と無邪気に答えると、


「何!? 国境に城壁!?? おい、お前ら誰か、俺っちの国の国境に城壁なんかあったの知ってるか?」

と周りのテーブルの人に聞いている。


それを聞いたオスカーさんも、フェリンシアも、ステファニーさんも下を向いてクックックと笑っている。


「何だ何だ、坊主は国境の向こうからやって来たのか、教えてくれ、どんな城壁があったんだ?」

と興奮するおじさん。


「城壁、凄かったですよ! 高さ・・・あれは、確かに20m以上ありましたね。

しかも表面が磨かれた様にツルツルで、まずよじ登る事は無理ですよね。しかも上の方に行くと反り返ってましたし。

鼠ですら登れませんね。しかもですよ、圧巻だったのは、その手前に幅4mぐらい?の堀まであって、上の方には監視場とかもあったから、万全なんじゃないかと思いましたね。」

と答えると、店の中の興奮は最高潮。


「え?じゃあ何か、とてもじゃないけど、国境を越えるのは無理って感じか?」

と聞くので、


「いやいや、それこそあれを超えるとなると、空を飛べないと無理でしょ? あんな立派な城壁は、何処のお城にも無いですよ。

それが国境グルッと全部囲んでいるみたいでしたからね。

流石、国民想いのザインバッファ王国の国王様だなって仲間と話していたんですよね。」

と言うと、


「「「「「「「「「うぉーーーーーーー!!!!」」」」」」」」

と歓声が、鳴り響いたのだった。

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