第372話

アルマーさんの城壁の件は、これから行う事となった。

領主館を中心に半径12kmの円周に幅2m高さ15mの塀を作る様に依頼される。


と言う事で、3人で手分けして智恵子さん情報に従いながら、城壁を作る事とした。



「さて、じゃあ、全員右手に領主館がある回転方向で1/3ずつ塀を作ろう。城門は後回しで良いかww」

と号令を掛けて、土魔法でガチガチに固めた城壁を作る始める。

流石に距離が長いので、一気にとはせず、途中の森や沼や池や川など、有る時は伐採し、有る時は埋め、有る時は水路の様に城門を作りつつ進む。


1時間半ぐらいでステファニーさんが作った城壁が見えて来て、更に20分で完全に繋がった。

『こっちは完了した。今から城門を作って廻るね。』

と伝心を入れて、南門、西門、北門、東門と作って廻った。


一部では、街道が途切れ立ち往生している商隊が3組程いたが、城門用の穴を開けたら驚きながらも、「助かったw」とお礼を言われた。


城壁の上には、更に高さ1.5mの通路の外壁(場外側)を作って融合させた。これに約30分。

更に、内側の通路の壁と階段を融合させながら作って廻った。これに50分。


斯くして、トリスターの領都は半径12kmに広がったのだった。


知らせを受けた、アルマーさんが、自動車に乗って、新しい南門へと飛んで来た。



「え??? 本当に出来てる!!! 4時間ぐらいしか経ってないのに? もう出来ちゃったのか!!!」

と愕然とするアルマーさん。


「本当にビックリだよ・・・」

と呟いて居た。


「取りあえず、サービスで前の門まで道を整備しておきましょうか?」

と言うと、


「おお!是非頼むよ!!」

と即答だった。


早速、海渡は南と北を、東をフェリンシア、西をステファニーさんが、受け持つ事にして、散った。

海渡は、唖然とするアルマーさんの前に、10m幅の道路を土魔法で固めて滑走路と同じ仕様で作成して行く。

見る見る消えて行く海渡の後ろ姿・・・見送るアルマーさんの目には、涙が光っていた。

「寂しくなるなぁ・・・」と。


海渡が道路を申し出たのは、トリスターの為に本腰を入れて何かを出来るのは、おそらくこれが最後になるかもしれない。

色々と良くしてもらった、アルマーさんやトリスターのみんなへの感謝の気持ちからだった。

(もっとも、ちょくちょく来るつもりではあるのだがね。)



通行人やトリスターに向かう商隊の馬車等に協力して貰いながら、南門までの道路を完成させた。

今度は、北門へと移り、北門から新しい北門までの道を作って行ったのだった。



完成した道路とトリスター全体を見渡す様に、上空へ飛び、3ヶ月お世話になったトリスター・・・新しくなるトリスターを一望する海渡。


「結局、女神様の言った通りになっちゃったな。」

と呟く海渡だった。



そして、宿舎へと戻り、フェリンシアとステファニーさん2人と合流し、ヨーコさんに至急全チーフを会議室に呼んで貰う様にお願いした。




「ごめん、忙しい所を急に集まって貰ってしまって。ちょっと余計な方向に話が進んじゃって、皆さんの協力がどうしても必要になりました。

申し訳無いのですが、お力をお貸し下さい。」

と頭を下げる海渡。


「え?? どうしたんですか? 急に・・・ いえいえ、そりゃあカイト様の為なら、みんな協力しますって。なぁ?」

とオスカーさんが言うと、全員がウンウンと頷いている。

ありがとー、オスカーさん、言質取れたぜwww と心の中で黒い笑みを浮かべる海渡。



「じゃあ、まずは、今日の両国王との会合で決まった事をお伝えします。

当初は両国で分割して統治すると思いきや、両国王が放棄しまして、成り行きで、俺が新しく国を作る事になってしまいました。」

と言うと、全員がポカンと口を開けている。


海渡は、取りあえず、前任に渋いお茶を入れて廻し、続きを始める。


「まあ、当初から断ってはいたんですが、ワンスロットも、コーデリアもそこまでの余力もメリットも無い事が、一番の問題で、自国の国力を大幅に割いて、国民の税金を増やしてまでつぎ込むつもりは無いと言う事でした。

しかし、かと言って、誰かを派遣して、あれだけの領土を統治と言うのも、国のバランス的に良くないのも理由かも知れませんが・・・つまり、下手するとあのまま放置になってしまう状態らしく、このままでは無法地帯になってしまい、将来に不安の種を残す事になります。

そこで、なし崩し的にお鉢が廻ってきちゃいました。」

と説明した。


「つまり、カイト様が国王様になると言う認識で合ってますでしょうか?」

とオスカーさん。


頷く海渡。


「一応、一時的だが、治安維持に必要な兵士や統治に必要な最低限の人材は両国から支援して貰える事になった。後は獣王に連絡し、500名から1000名程傭兵として治安維持に借りようと思っている。

で、まず、オスカーさん、ヨーコさん、大臣やってね。まあちょっと規模は大きくなるけど。

で、メイド長のリリーさん、悪いけど、あっちでメイド長お願いします。

ダスティンさん、悪いけど、こちらの商会の総取締役ね。

アニータさん、本当に申し訳ないんだけど、そんな感じで、スタッフ急募して、ドンドン調理増産お願いします。まあ、出来れば向こうに最終的に来て欲しいんだけどね・・・。

で、他のみんなも、悪いけど色々急なお願いすると思うので、宜しくお願いします。」

と一気に言って、ふぅ~ とため息をつく海渡。


ポカンと固まっている全員に、骨粉入りハチミツ水を配り、海渡も飲んだ。



「「えーーー!大臣なんて無理ですよーー」」

とオスカーさん、ヨーコさんが再起動して絶叫。


「悪いね・・・もう決定してるから。両国王様にも了承済みで(←大嘘)」

と言うと、ヨーコさんが、またシクシク泣いていた。 すまん・・・。



「と言う事で、ここ3日ぐらいで、引き継ぎや準備をお願いします。」

と言うと、


「なあ、カイト君、うちはどないなるん?」

と聞くので、


「ああ、ステファニーさんが、良ければ付いて来て欲しいんですが、どうですかね? やる事一杯あるんで。」

と言うと、

ニッコリ笑って、「勿論や!」と胸を張っていた。




全員が解散した後、獣王に連絡を入れた。


「どうも、海渡です。ご無沙汰しております。」


「おう!カイ坊!! どうだ元気か? グフフ、プリシラと上手くやっとるかww」

といきなり下世話な方向に振ってきた。


「プリシラも頑張って日々強くなってますよ?

さて、ちょっとドタバタになってしまって、通信で恐縮なんですが、折り入ってお願いありましてね。」

と言うと、


「えーー!?もう出来ちゃった系? 早いねぇww 良いよ、遠慮せずにお父さんと呼びなさい。」

と・・・orz



「あーー、話進まないので、スルーして進めます。

まず、先日ゲルハルト帝国と言う国を滅ぼしました。

現在、治安維持モードで自動的に犯罪者を排除してますが、いつまでも放って置く訳にもいきません。

当初は喧嘩を売られ、宣戦布告も無く侵略されたワンスロットとコーデリアで分割するかと思ったんですが、デメリットしかないと、言う事でお鉢が廻ってきまして、国を作るハメになりまして。

両国から、一時的に兵は借りられるんですが、警備兵が足り無い状態でして。

申し訳ないのですが、500名~1000名程、傭兵としてお借り出来ないかと言うご相談です。

武装放棄させていますので、今の所はほぼ略奪等に対する報復ぐらいしかありません。

なので、おそらく、これから大きな戦闘には発展しようが無いとは思ってます。

勿論、それなりの代金のお支払いは致しますし、如何でしょうかね?」

と言うと、


「ちぇ・・・そう言う事か。了解だ! 1000名行けるぞ!! どうすれば良い?」


「そうですか。助かります。では、明後日そちらにプリシラと数名を向かわせますので、用意した機体に分乗して貰えますでしょうか?」


「了解だ! そうか、カイ坊は王様になるんだなww そりゃ楽しみだなww」

と獣王。


「で、1000名、2~3ヶ月ぐらいお借りする事になると思うのですが、お幾らぐらいお支払いすれば宜しいでしょうか?」

と言うと、


「うーーーん、そうだなぁ、3ヶ月ったって、伸びる可能性あるんだろ? 1ヶ月1人金貨2枚を給料として各自に支払って貰って、伸びたら伸びた分、支払い延長な!

で、サルド共和国としては、紹介料って事で、黒金貨10枚と飛行機2機ってのでどうだ?」

と格安料金を提示してくれた。


「判りました。じゃあ、その条件に飛行機8機と、バス、トラックを各20台追加しますよ。ありがとうございます! では後ほどプリシラから連絡させますね。」

と通信を切った。



そして、今度は弟子ズを呼び出し、諸々の経緯を話し、ケモ耳ズ4名には、明後日向こうに発ち、1000名の傭兵諸君を明後日連れてきて貰う様にお願いしたのだった。


「兄貴! おいら達の出番は?」

と期待を込めた目でラルク、アン、サニーに見つめられたのだが、

「うーーん、今すぐ思いつく事はないかな・・・。」

と言うと、凄くシュンとされたので、


「まあこの後、希望の岬のみんなに報告しに行くから、付いてきてよ。」

と言うと、少し機嫌が直ったよう。

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