第371話


異世界3ヵ月と24日目・・・1月16日。


結局、夜中近くまで、ドワーフと刀談義になってしまい、グッタリとして、トリスターの部屋に戻って寝た。

朝はいつも通りに起き、ドワーフの家用の別荘を12軒作成した。(奥さんが来た時用に・・・って気が早いか!?)


あと、多分必要になると思うので、お酒を造る魔道具を作った。

時短モードを使って寝かせ、最終的に蒸留酒を造る。

記憶と智恵子さん情報で補填したので、大丈夫な筈。


まあ当の本人が、お酒を飲めるのは、まだまだ先の話なのだがな。

この体になって判った事だが、前の体では嗜む様に飲んで・・・いや飲めていたお酒だが、子供の体になったせいか、飲みたいとは思わなくなった。

その為か、前に試した際、苦み等が先行し、舐める程度で止めてしまったのだった。


完成した酒造機に原料のトウモロコシを入れ、起動した。

あとは、3日ぐらいで飲めるお酒になる筈である。




朝練の時間になり、地下訓練場で弟子ズと共に訓練を行う。

弟子ズ達の進歩は目覚ましく、プリシラの魔法以外は安心して見てられる様になった。

「お前ら、凄い成長っぷりだな。あ、プリシラはもっと魔法も鍛えろよ?

それは、それで、お前達って、野営出来るのか? まあゲートあるから、不要と言えば不要だが、商隊の護衛依頼とかを受けた場合、野営も必須になるぞ?」

と言うと、「「「「「「「なるほど!」」」」」」」と声を揃えていた。


「で、野営するとなると、最悪の場合、自分らで飯を作る必要がある。」

と言うと、ハッとした顔をして数人が目を背ける。


「今、目を背けた者は、ちゃんと今度の調理スキル講習会に出るようになw」

と言うと、「「「「「「「イエス・サー」」」」」」」と敬礼していた。


「あ、兄貴、ちょっと折り入ってご相談が。」

とラルク少年。


ちょっと前から孤児支援組の子、数名から相談を受けていて、彼らも強くなりたいらしい。

で、海渡にお願いして貰えないか? と言われていたのだが、先日の開戦前と言う事で、タイミングを見計らっていたとの事だった。


「なーんだ、そんな事かw 第一期生のお前らが育ったから、良いぞ? 朝食後に集めろ。」

と海渡が微笑みながら言うと、「了解であります!」と嬉しそうに敬礼していた。


ふふふ、みんな安定志向の子達ばっかりかと思ったが、そうでもないんだな。

まあ、安定志向で冒険者じゃなくても、家族や愛する者を守る力があって、邪魔な事はないからなw

と海渡は素直に喜んだ。




朝風呂に入って、朝食を終え、会議室に弟子志望者を集めた。全部で10名の少年少女達。

彼らのブレスレットの権限を書き換えて、地下訓練場へ入れる様にした。

そして、地下訓練場に移動し、全員の現状を鑑定で行って、ドーピング後に、魔力感知、魔力操作、身体強化、身体加速までを午前中一杯かけて特訓した。

全く鍛えて無かった為、魔力量が少なく、何度もハチミツ水を飲んだ為、お腹がガボガボになった様だが、その甲斐あって、全員が脱落する事無く、スキルを生やす事に成功した。


続きは明日と言う事で、第二期生の訓練は終了とし、昼食へと向かった。



昼食後、海渡はフェリンシア、ステファニーさんを伴って、アルマーさんの領主館へと向かう。


「はぁ・・・気が重いなぁ・・・」

と歩きながら海渡がため息をつくと、2人も苦笑い。

時間は十分に早いので、気晴らしに買い食いしながら、領主館を目指すのであった。




そしてここは、領主館の会議室。

アルマーさん、ワンスロット王、ワリス大臣、コーデリア王、コーデリアの大臣、ドロスさんの6名と海渡ら3名が席に着いている。


「今回は本当にお疲れ様じゃったな。ありがとう。お陰様で両国の兵士の損害は0じゃった。」

と口火を切るワンスロット王。


「本当にありがとう。コーデリアからも損害は0だった。更に武装放棄と投降までが、信じられない程に早かったと聞いておる。」

とコーデリア王。


「まあこちらの作戦通り120%ぐらい上手く運んだのでw」

と海渡。


「・・・・」


とその後に若干の沈黙・・・嫌な予感しかしないのだが?


「あー、えっとじゃな・・・」

と歯切れ悪くワンスロット王が話し出す。


「カイト君、旧帝国領なんじゃがな、お主貰ってくれんかのぉ?」

とド直球に投げて来た。


「は? いやいや、前にも言った様に、統治無理ですから。 そんな経験なんて6歳にあると思いますか? しかもそれを行うだけの人材も足り無い。」

と海渡が反論する。


「そこを何とか・・・」

とコーデリア王も追従する。


「・・・・」


「あー、もしかして、両国で半分ずつ併合するにしても、自国のメリットより、出費が多くて、人員も足り無い的な感じでしょうかね?」

と聞いてみると、やはりその通りらしい。


「なあ、カイト君、お主、国王にならないか? そうすれば、八方丸く収まるじゃがなぁ・・・」

「そうだよ。カイト君。それが可能なら、こちらとしても、人的支援や物資も出しやすいんじゃよ。」

と両国の王様が海渡を推す。


「一国を立て直すったって、行政とか全く判らないですよ?

ちゃんと行政を暫く任せられる優秀な人材、各国50名、その護衛兵500名、合計1000名を都合付けてくれるのであれば、考えなくもないですがね・・・。」

と呟くと、



「「そうか!判った!!!!」」

と即決で決まった。



「あ、あと足り無い人員は、こちらでサルド共和国の獣王様に傭兵を依頼したりしますから、そこら辺の伝達もお願い致しますね。あ、ドロスさんも暫く貸して下さいね!」

と言うと、


「「了解だ(じゃ)!」」

と肩の荷が下りた様な爽やかな声で答えられた。


しかし、一瞬の間を置いて、

「え?ドロス!?」

と慌てた様な声が聞こえて来たが、スルーしたったwwww

コーデリア王の横でドロスさんが、頭を抱えている。


「あと、ワンスロット王様、そうなると、当方の商会の存在って拙くないですか?」

と聞くと、


「うん?塩とかの生命線を握っておる事を言っておるのか?」

とワンスロット王。


「はい。その通りです。仮にも余所の国に国の生命線を握られてる事になりますよ?」

と言うと、顔の前で手を振りながら、


「いやいや、それは問題にはならんぞ? そもそもじゃが、お主が本気で掛かれば、この大陸の全土は数分で掌握出来るじゃろ?」

とあんまりなお言葉・・・まあ事実だったりするけどね。


「ははは・・・まあ、本当に怒ると可能ではありますがね・・・。でも平和主義者ですから、余程うちの店舗が荒らされたり、理不尽な事をされたりしない限り、そんな気はサラサラないですよ?」

とチラリとコーデリア王を見ると、ガクブルしていたwwww


「あ、あと問題が。 前にお話した事ですが、ワンスロット王国の最南端に農業研究所を作っちゃったんですよ。あのエリアってうちにくれますか? 代わりに国境線をズラしても良いですけど。」

と聞くと、飛び地としてくれるらしいww ラッキーww


更に、ワリス大臣の息子さんを人材として何年か貸してくれるとの事。

ワリス大臣は、苦い顔をしていたけどねww


「あ、そうそう! コーデリア王! 帝国に捕まっていたコーデリアのエルフやドワーフが、隷属の首輪をされて、収容されていたので、救出したんですが、ドワーフの皆さんが、その農業研究所を気に入ってしまって、『ここに住むぞ!』と言ってるんですが、それは構わないでしょうか? 勿論帰国を希望される方はそちらに送りますけど。」

と言うと、問題ないとの事だった。 そして救出してくれてありがとうと頭を下げられた。


「あ!そうなると・・・アルマーさん!!! 城壁の件、早急に始めないと!」

とポカンと聞き役に徹していたアルマーさんに話を振る。


「あ!!! そうだ!! カイト君早々にお願いしたいんだが、良いのか?」

とアルマーさん。

「今日、この後からでも大丈夫ですよ。頼もしい戦力増えましたからねww」

と両隣を見る海渡。照れる両隣の美少女と美人エルフ。そして何故かレイア。


「あ、話変わりますが、帝国の皇帝って、どんな奴か、見た事ありますか?」

と海渡が聞くと、全員首を横に振る。


「映像あるんですが、見ますか?」

と言うと、是非!! と言われ、大型のガラスディスプレイを壁の所に掛けて、再生を始めたのだった。



「あ、これはですね、隷属の首輪をされて、ボロ雑巾の様にこき使われていた少年らを助けた所から始まった作戦で・・・~~」

と食料、物資、武器 強奪作戦を説明する海渡。


「わぁ・・・容赦ねぇなぁ・・・」

とアルマーさんが中盤で声を漏らす。



そして夜中は何もないので、早送りして、終盤・・・

「お!動き出したな。朝飯の準備か!」とワクワクしてるコーデリア王。


「あ!気付いたのぉwwww 固まっとるぞw」と悪い笑顔のワンスロット王。


「ん?何か拾った?」

ここで、全員が、「「「「「「リンゴの芯だーーwww」」」」」」と大爆笑。


「フェリンシアの仕業ですw」


「あ!今度は別の倉庫に走ったぞ!」

と更にワクワクする6名。


「あ!何か拾ったな?」


「「「「「「バナナの皮ーーーーーwwww」」」」」」と腹を抱え転げ落ちそうになる6名。


「ステファニーさんの仕業ですww」


「最後の倉庫に来たなw」と目をキラキラさせる面々。


「お!今度はなんじゃろうか?」とワクワクが止まらないワンスロット王。


「「「「「「鼠ーーww あ!噛まれたwwww」」」」」」

全員が椅子から崩れ落ち、ヒーヒーと笑いながら涙を流していた。


ベッドで激怒する皇帝・・・そして外から鳴り響く音楽・・・海渡の声の後、画面が切れた。


「ちょっ・・・君ら戦争をこんな面白エピソードに変えちゃってwwww」

とゼイハー言いながら、一頻り笑い、解散の運びとなったのだった。


両国の王様からは、人員に関しても、起動に乗るまでの2~3年は無条件に可能な限り無償で貸し出す事、その他、必要な協力は惜しまない事を確約して貰った。

更に希望する者の国籍の移動は了承してくれた。




まあ、だからと言って、これからの作業量が簡単に終わる訳ではないが、少しでも早くまともに機能する政府を立ち上げる為には、有効利用しないとね。


「はぁ~・・・一気に老けそう・・・」

と最後に海渡が言うと、全員が爆笑していた。

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