第337話


領主館を出て、冒険者ギルドに向かう。

残ったサンド・ワームの外皮や骨の需要を聞いて、ついでにワイバーンの肉を受け取る予定だ。



ギルドの扉を開けて、中に入ると、

「うぉーーー!!! カイトさんだーーー!」

とか、

「きゃーー!フェリンシアちゃーーーん♪」

とか、

いきなり、騒がしい。


「ん?何かいつもより、反応が濃いですね?」

とフェリンシア。


だよな? 何だ?



「あ、カイト君、フェリンシアちゃん!! 凄いですよ!!!!」

とアニーさんが飛んで来た。


「ん? 何かあったの? 解体の件か??」

と聞くと、


「何言ってるんですか! サルド共和国で大暴れしたそうじゃないですかwwww」

と情報の早いアニーさん。


海渡は背中に冷たい汗を掻きつつ・・・


「え? もう伝わったの? 城門の副隊長潰した件? あ、ギルドの冒険者を売り飛ばした件か??」

と浮気を誘導尋問で自白してしまう、ダメな旦那モードの海渡。


「え?? サルド共和国の城門の副隊長潰したんですか!!!! 冒険者を売り飛ばした?????」

と出て来た自白が余りにも酷くて絶句するアニーさん。

周りの冒険者も、ドン引きである。


「え? 違うの? いや、暴れたって言うから・・・その件かと・・・」

と後半徐々に声が小さくなる海渡。

隣で腹を抱えるフェリンシア。


「いや、どっちも絡まれての自己防衛だからな? 向こうが掛け試合に乗ったから、逆に潰して、お金が無い悪質な冒険者を奴隷商に売って支払って貰っただけだし。

それに、フェリンシアとか連れの女の子を置いて行けとか言われたら、潰すだろ?」

と自己弁護する海渡。


「「「「「「・・・・・」」」」」」




「まあ、それは聞かなかった事にします。 聞きましたよ、ダンジョンの奇跡の救出劇。50名も救ったらしいじゃないですか!!! もう全ギルドに速報で流れてて、ギルドマスターとか50cmぐらい、鼻が伸びてましたよwww」

とアニーさん。


「ああ、それかwww 50名も居たっけ? コカトリスの石化したのって、28名だったと思ったが? 何時の間に増えた??」

と海渡が首を傾げると、


「ああ、もしかして、所々で、全滅しかけてた冒険者も人数に入ってるんじゃないですかね? 最後の第10階層でブラック・ワー・ウルフが率いるワー・ウルフ70匹ぐらいに囲まれてたのって、15,6人いましたよね?」

とフェリンシアが思い出してくれた。


「ああ、なるほど、あいつらか!! そう言えば、居たなww」

とポンと手を打つ海渡。


周りの冒険者は、ワー・ウルフ70匹と聞いて、ガクブルしていた。


「まあ、助けたって言えば、確かにヒールは掛けたけど、大した事なかったから、俺は手を出してないよ? ほぼ全部弟子4名が嬉々として瞬殺してたからなw」

と言うと、


「カイトさんの弟子・・・恐るべし」

と周りが呟いていた。


「まあ、そんな訳で、トリスター支部は、お祭り騒ぎだったんですよw」

とアニーさんが締めていた。


その後、ギルドマスターのアルベルトから呼ばれ、部屋で大変感謝され、居心地が悪かったので、お土産でお酒を置いて、早々に退室し、解体が完了しているワイバーンや、その他の魔物の素材を受け取り、要らない物は買い取りに回した。

サンド・ワームの外皮や骨の需要を聞くと、「是非お願いします!!」と言われ、残った外皮と骨を買い取って貰う事にした。(価格は要相談らしいので、後日口座に振り込みになった)

「ついでに、肉もあれば・・・」

とアニーさんに物欲しそうな目で見られたので、


「じゃあ、売るのではなく、ギルドの皆さんにお裾分けしますよw」

と肉のブロック10kgを上げると、アニーさんとギルド職員がフィーバーしていた。



ギルドを後にし、宿舎へ戻りながら、

「いやぁ、見た目は酷いんだけど、サンド・ワーム大人気だなwww」

と海渡が苦笑いすると、


「美味しいは正義です!」

とフェリンシアが宣言していた。




久々にワイバーンの肉が補給出来たので、スタッフで手分けし、ワイバーンステーキをジャンジャン焼く。


ケモ耳団の面々は、

「いやぁ~、本当にボスの配下になれて幸せっす!!」

と大喜びしていた。


賞賛されたり、感謝されたりするのは、良いのだが、何か、凄く食い物だけで褒められてる気がするのは、気のせいだろうか?


・・・とちょっと納得のいかない海渡であった。




そして、夕食の時間となり、休み最終日と言う事で、全員揃っての夕食は、久々のワイバーンステーキで沸いた。

かなり多めに焼いた筈なのだが、それでも足りなくなって、追加で焼く事になった・・・2回も。


「何か、これからは、うちの商会のエンゲル係数高くなりそうだな・・・あいつら、滅茶苦茶食うしw」

と苦笑いする海渡だった。



ちょっと心配していたプリシラも、既に馴染んでいるようで、楽しげにしている。

「おい、プリシラ! 親元を離れて遠くまで来たけど、ホームシックに掛かってないか? お前、何気にお嬢育ちだろ?」

と海渡が聞くと、


「え? 全然大丈夫ですよ? やっとお父様から離れられたから、スッキリですよw しかもボスのお側ですしw」

とニヤニヤしていた。


「そ、そうか? 何か娘を持つ父親って、可哀想な存在だな・・・」

と獣王に少しだけ同情してしまう海渡。



まだ、夕食後のドンチャン騒ぎは続いているようだったが、子供の海渡は、一足先に風呂へ行く事した。


レイアと自分を綺麗に洗って、湯船に浸かり、ユッタリと寛ぐ至福の一時。


湯船に背を預けて、ポケーッとしていると、ラルク少年が雪崩れ込んで来たw


「兄貴ー!! 風呂行くなら一声かけてくださいよーー!!」

とプンスカ言ってる。


4日間空けただけなのだが、前以上に絡みたがるなww


「そうか、悪い悪い、忘れてたよ。」

と軽く謝る。


ラルク少年は急いで洗って、横にやってきた。

「おいおい、えらく早かったなw ちゃんと洗ったのか?」

と言うと、


「勿論です! 身体加速使いました!」

と胸を張っていた。


「なるほど!そう言う使い方は思いつかなかったなw」

と笑う海渡だった。

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