第336話
何故こうなった・・・
行儀良くとは言ったが、何故か足並み揃えて2列縦隊で行進している!?
屋台のおっちゃんとか、ビックリしながら、
「おい、坊主、暫く見ない内に、軍隊でも作ったのか!」
とか笑いながら言ってるし。
フェリンシアは腹を抱えて声無く笑ってるし。
やっと、本店の前に辿り着き、後はヨーコさん達に丸っと投げた。
「はぁ~、トリスターに入ってからの方が何か疲れたなぁ・・・。」
と大食堂でコーヒーを飲んで一休み中の海渡とフェリンシアとステファニーさん。
元祖の方のケモ耳ズは、ラルク少年達に会いに行ったようだ。
プリシラは、他のケモ耳団と一緒に、レクチャーを受けているらしい。
すると、そこへ、
「兄貴ーーー!!!」
と涙目の少年少女隊がやって来た。
と言うか、飛びついて来た。
後ろから、ケモ耳ズの3名も一緒に。
「「「長かったっす(です)ーー!!」」」
とむせび泣いている。
「いやいや、それ程長くは無かった筈だが?」
と言うが、聞く耳持たずの状態。
少し収まった頃合いを見て、
「おい、面白い土産話あるだが、聞くか?」
と言うと、
涙でグショグショの顔を上げて、
「「「はい!」」」と。
ダンジョンに潜った話を始めたら、一気に機嫌が良くなり、3人とも目をキラキラさせ始める。
「と言う訳で、コカトリスの巣にかなりの数の石化した冒険者が居て回復魔法を掛けたんだけどな、驚いたのは10年ぐらい石化していた人も居た訳だ。」
と言うと、3人はガクブルしていた。
「まあ、結局その冒険者達を連れて戻る事になって、第18階層でストップする事になったけど、ソコソコ面白い所ではあった。
なんせ、地下の巨大な空間が太陽や空のある、森林だったり、岩場だったりでな。不思議な所だった。そのうち、また何処かのダンジョンに行く際には連れて行ける様に、力を日々付けておけよ!」
と締め括ると、
「「「はい!!」」」
と元気に返事をしていた。
さて、次はどうするか。
まずは、サンド・ワームの解体の続きをするかな。
「フェリンシア、これから大好評だったサンド・ワームの解体の続きでもしようかと思うのだが、手伝ってくれる?」
と聞くと、そもそも戦力外のステファニーさんまでもが、グッと親指を立てて来た。
まあ、良いだろう。食った分は存分に働いてもらおうじゃないかw
と黒い笑みを浮かべてしまう海渡。
少年少女隊も勿論、ケモ耳ズはプリシラと合流して直ぐに行きますとの事だった。
血抜きは終わっているのだが、下手な所でやって汚れないようにと、地下工房の開いてる空間へと降りて来た。
「よっこらせ!」
と言いながら(実際重い訳でもないのだが、雰囲気でw)、サンド・ワームを取り出した。
ドーーンと出て来た巨体に驚く少年少女。
「でっけーー! 兄貴! これが伝説のグルメ魔物なんすね!?」
「「わぁ~、太くて美味しそうw」」
と海渡にしてみれば、驚きの反応。
「そ、そうか・・・」
とその反応に若干退き気味なのだが、スルーして作業分担して作業を開始する。
ステファニーさんには超高速回転アイスカッターで胴体を適当な長さに輪切りにして貰う。
少年少女隊とケモ耳ズにはそれらから外皮や、食用で無い部分を切り離して貰い、残りのメンバーや手が空いた者で、10~20kgぐらいのブロックにする。
「ステファニーさん、絶対に地下工房は壊さないでね? 絶対に壊さないでね?」
と念を押す海渡。
「え? それは押すな押すな! っちゅうやつなんか?」
と え?やっちゃうの? って感じで聞いて来る。
「そんな訳あるかーー! マジで落盤とか洒落にならないからね? マジでやめてよ!!」
と言うと、ケケケと笑いながら、超高速回転アイスカッターで、サクサク胴体の輪切りを作って行く。
20分ぐらいで、全ての解体が終了し、肉のブロックを収納した。
「お疲れさん。思った以上に早かったな。
で、この外皮と骨だが、売れるかな? まだ午後3時ちょっとか・・・ギルドで聞いてみるかな? ついでに、アルマーさん、ドミニクさん&ドリンガさんところにもお土産持って行くか。」
「あ、皮なら、コーデリアの・・・ほら、ドラクさん? あの人の所で使えませんかね?」
とフェリンシアが提案する。
「ああ、あまり良い効能なさそうなんだけど、聞いてみるか?」
と通信機で連絡し、近況等を話した後、
「ところで、サンド・ワームの外皮があるんですが、何かに使えそうですかね?」
と聞いた所、
「え? 伝説のグルメ魔物? あるの?」
と言う事で、試しに見てみたいと言われた。
「了解しました。 じゃあ時空間共有倉庫に入れますね。あと、お肉も。あ!そうそう、他にも面白い物を入手したんですよね。
それも、メモと一緒に入れておきますのでww」
通信を切った後、ユグドラシルの実(10切れ)、タンカー・ホエールの皮、タンカー・ホエールの肉ブロック、そしてサンド・ワームの外皮と肉ブロックにそれぞれ、メモ付けて共有倉庫に入れておいた。
暫くすると、大興奮のドラクさんから、お礼だか何だか判らない状態の連絡があったwww
要約すると、大喜びって事らしい。
海渡とフェリンシアは、ドミニクさん&ドリンガさん経由、アルマーさん の順で廻る為、街に出た。
ステファニーさんも誘ったが、地下工房で試したい事があるそうな。
久々のトリスターの屋台や露天を荒らしつつ、ドミニクさんの店に到着。
「こんちは! お久しぶりでーす!」
と店に入ると、
「おう!坊主!! 暫くトリスターを離れていたんだって?」
「ええ、ちょっとサルド共和国の方に4日間程行ってました。 で、お二人にお土産を持って来ました。」
と言うと、すぐにドリンガさんを呼んで来た。
「まずは、サルド共和国のお土産のお酒w そして、まあサルド共和国はあまり関係ないんですが・・・」
と、タンカー・ホエールの肉ブロック、皮、骨、サンド・ワームの外皮、肉ブロックを説明しながら出した。
「「・・・・」」
固まる2人。
思い出した様にゼイハーと息をして、
「坊主、これ全部、ヤバい物ばかりじゃないか!!」
と大興奮。
「まあ肉は食用なんですがね。他は色々使えますよ。サンド・ワームの外皮は用途が判らないので、参考までですが。
実は、あともう1つあるんですよ。」
とユグドラシルの実を2切れ出した。
「これ、ユグドラシルの実なんです。味も最高だけど、効能凄いんですよ。是非お二人にも食べて頂きたくて。」
と言うと、子供の様にはしゃぐはしゃぐww
一応、先に、効果が倍増を狙い、骨粉入りハチミツ水を飲ませ、ユグドラシルの実を食べさせた。
口に入れて、蕩けた表情をして、その後に声にならない叫び声を上げ、驚いている。
「ね? 凄いでしょ?」
とニヤリと笑うと、
「いや・・・凄いなんてもんじゃねーぞ!!」
と2人。
なんでも、鍛冶スキルや裁縫スキル等、仕事に使う加工スキル類が全てコンプしたらしい。
で、海渡は2人に、自分が作った刀と包丁を見て貰った。
「これ、先日私が打った物なんですが、どう思いますか?」
本職であるドリンガさんの目が光り、刀の掲げ色んな角度から出来映えを確認している。
「坊主、これをお前が打ったのか! 確かに素晴らしい出来ではある・・・しかし正直に言って、素材は凄い物なんだが、やはり本職からすると、残念な出来ではある。」
とドリンガさん。
「やはり、そうですよね!! それを聞いて安心しましたwww」
と笑う海渡。
「ん? どう言う事だ?」
と不思議そうなドリンガさん。
「いえね、元々、師事していた武術の流派の方針で、鍛冶スキルは持っていたんですが、素人同然で、戦場で自分の必要な武器等を間に合わせで打てる程度と、自負してました。
しかし、ユグドラシルの実のお陰で、スキルはコンプしたんですよ。
スキルはコンプしても、実際のノウハウや、絶対的な経験がある訳じゃないですから、こんなズルだけで、本職の目から見ても、『素晴らしい出来映えだ!』なんて言われたら、ガックリじゃないですかw
一応、コーデリアのカネミツさんの所に押しかけて、お願いするまでの、間に合わせのつもりで打った物だったんで。安心しました!」
と答えると、2人とも凄く納得してくれた。
「しかし、お前凄いな。何が凄いって、その歳でソコソコ打てる事よりも、その答えに行き着くって事の方が凄いと思うぞ?」
と。
そこで、海渡は、この刀の素材や製法を事細かに教えた。
「なるほど、このタンカー・ホエールの骨の粉か!!! これは凄い発見だな! 言われてみれば、確かに理にかなっている。」
そこで、海渡が作ったヤスリや、ベルトサンダー、その他骨粉入りの素材を打つ為に必要な治具をドリンガさんに渡した。
勿論、焼き入れの後に漬けるタンカー・ホエールの肝油も。
「これで、もっと良い剣を作ってやって下さい。先日の弟子達に。 今の素材の剣だと、残念ながら、既に彼女らの実力に、武器が負けてる状態なんですよ。」
と海渡が頭を下げる。
そして、海渡は2人に魔力感知、魔力操作、身体強化、身体加速、クロックアップのスキルを1時間掛かりで生やした。
「まさか、この歳で新しいスキルが生えるなんてなwww これで仕事が捗るぜww」
と大喜びの2人。
店を後にした海渡とフェリンシアは、領主館へと歩いている。
「いやぁ~、前から気になっていたスキルの件を、上手く伝達出来て良かった。これで凄い剣が出来そうだな。」
「ふふふ、2人とも、子供の様に喜んでいましたねw」
そう、海渡はズッと前から、ドミニクさん&ドリンガさんの2人に、これらのスキルを生やしたかったのだ。
だが、骨粉入りハチミツ水と言うドーピングが無いと、早々簡単には生えないだろうと、そのままになっていたのである。
特に、冷める前に打つ必要のある鍛冶仕事と身体強化、身体加速、クロックアップのスキルの効果は大きいと思っていた。
実際に自分で打ってみて、それは確信に変わった訳だ。
やっと、心に引っかかっていた事が上手くいって、スッキリw
領主館に辿り着き、門番のおじさんに、
「お久しぶりです! お元気そうですね!」
と挨拶をしながら門を通り抜け、ケージさんの案内で、アルマーさんの書斎へと案内される。
「どうも、新年開けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。」
と頭を下げて新年のご挨拶。
「ふふふ、面白い挨拶だなw おお、今年も宜しくなw」
とアルマーさん。
そして、サルド共和国のお土産のお酒、スパイス、コーヒーと、土産話する。
「ハッハッハ!!! 流石カイト君達だなw 行く先々で騒動に愛されてるなwww」
と嬉しくない愛され方。
「それ、全然嬉しくないですからね? まあ、結果的に、旅行の代金分以上になって帰ってきたんですがねw」
と笑う。(掛け試合の件ね)
「そうそう、それとは別で、他にもお土産あるんですよ。」
とユグドラシルの実1つ、タンカー・ホエールの肉ブロック、サンド・ワームの肉ブロックを取り出して、説明しながら渡す海渡。
「っ!!!!!!!」
口をパクパクしているアルマーさん。
やっと、言葉が見つかったらしく、
「こ、これは!!!」
と息を吐きながら呟く。
そして深呼吸して、
「これか! 陛下が騒いでおられたのはw」
と苦笑している。
何でも、年末に連絡が来て、何か「おい、お前の所には何かあったか(貰ったのか)?」と何回も連絡が来て、ウザかったそうなwww
「このユグドラシルの実ですが、一切れだけで、凄い効果があります。部位欠損のある人でも、完全に回復出来ます。 大事に食べて下さいね。」
と注意しておいた。
あと、北門の飛行場の件、何処に作ります? と聞いたら、南門と同じぐらいの位置関係で作っといて との事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます