第315話
ゴンザレス商会の馬車から離れ、30分程走ると、大きな川に掛かった橋を渡り、また森の中の街道を進む。
この先はほぼ一直線の道の様なので、時速100kmまでスピード上げる。
車内では、ミケにゴンザレス商会についての情報を質問する海渡。
「なあ、ミケ。ゴンザレス商会の評判って、ぶっちゃけどうなの? 悪い噂とか、商売が汚いとかって事は無いの? 見た所、狸オヤジだったけどw」
「そうですねぇ、私も7歳までしか首都に居ませんでしたから、あまり気にした事が無いんです。お役に立てず申し訳ありません。」
と心底すまなさそうに、ミケが答える。
他の2人も同様で、サルド共和国最大の商会と言う事ぐらいしか知らないらしい。
ちなみに、サルド共和国では、商人は狸族や狐族が多いそうだ。
何それw 『狐と狸の化かし合い』しか思い浮かばんwww
と内心ウケる海渡。
思わず、クックックと笑ってしまった。
それから40分程すると、道の遙か向こうに、大きな城壁が見えて来た。
「あ!ボス!見えて来ました!! あれが首都の城壁です!」
とミケが身を乗り出して指を指す。
「おお! 結構高い城壁だな? 20mぐらいはあるぞ?」
と海渡が言うと、
「ああ、でもあの城壁って、結構いい加減なんですよ? 低い所だと10m無いですしw 獣人って割とそこら辺はいい加減なんですよww」
とミケ情報。
「えーー!? そんなでたらめで良いのかよww 何?何? 作ったその日の気分で高さが変わったとか?」
と冗談で言うと、
「流石ボスですね! 良く分かりましたね!!」
と感心されちゃった。
マジかwww その日の気分が高さに影響するのかよw
と心の中でマジ突っ込みする海渡。
気分次第って事は、良い時は良いのだが、一歩間違うと商売としては危ういなぁ・・・と心の中で警戒する海渡。
それから10分も走らない内に、城門が見えて来た。
海渡はスピードを時速30kmぐらいまで落とし、城門のを通る為の最後尾へに停車した。
すると、周囲が騒がしくなる。
海渡は一度車から降りて、伸びをする。他の5人も後に続く。
そこへ100m先の城門の衛兵が、10人凄い勢いでやってきた。
「おい、お前ら、これは一体なんだ?」
と凄い剣幕の虎族の衛兵さん。
「ああ、こんにちは。 これは魔動自動車という馬の要らない馬車の様な乗り物ですね。」
と答えると、
「魔道具なのか?」
と質問される。
「ええ、魔道具ですよ。最近、ワンスロット王国で発売しました。コーデリア王国でも既に発売してますね。」
と答える海渡。
「で、お前らは首都に何しに来たのだ?」
と目的を聞く衛兵さん。
「観光半分、スパイスの買い物半分と言う所ですかね? 初めて来るので、良く勝手が判らないのですが、もし可能なら、支店を出すのも良いかと考えてます。」
「ほう、するとお前らは商人って事で良いのか?」
「はい、私は、冒険者でもあり、商人でもあります。ここに居るのは全員冒険者でもあり、当方の商会のスタッフでもあります。」
と答えると、
「ふふ・・・人族のガキが、冒険者かよw」
はい!テンプレ頂きましたwww
その後ろの別の衛兵さんは、アチャーーって感じで手で額を押さえるし。
すると、
「虎のおっちゃん、うちのボスを甘く見ると、痛い目みるよぉ~」
とミケが煽りを入れる。すかさず、「そうだ!そうだ!!」とパトリシアとキャスも追従する。
コメカミに#マークを浮かべ、虎族の衛兵さんがその煽りにまんまと乗っかる。
「なんだ、よく見ると、お前ニャンコと犬ッコロじゃねーか! 何だお前ら、こいつの護衛なのか? 見ればエルフも一緒かよ。」
「いえ、彼女らは、うちのスタッフであり、弟子でもありますね。」
と海渡が言うと、
「はぁ~? 弟子だぁ? 人族風情が何の師匠になるって言うんだ? 俺らをなめるのも大概にしとけや!」
と激おこです。
面倒なので、冒険者ギルドカードを見せると、
「なんだこりゃwww できの悪いカードだな? なんだよこのSSSランクってww 坊主、冒険者のランクはなぁ、SSまでしか無いんだよw」
と爆笑していた。
「ありゃ? 最近SSSランクが新設されたのをご存知ないですか? ワンスロット王国でも、コーデリア王国でも既に知れ渡っているんですがねぇ?
情報収集怠慢なんじゃないですか? 城門の衛兵さんがバカやると、サルド共和国が恥を晒す事になりますよ?」
と具申すると、
「よし、そこまで言うなら、勝負だ!!!!!」
と既に怒りの炉心が融解しそうな虎のおじさん。
「いや、まあ、良いですけど、本気ですか? 一勝負したら、ちゃんと中に入れてくれますか?」
と言うと、
「ああ、男に二言はない。俺に勝てたら入れてやるさw ついでにフルチンで逆立ちして踊ってやっても良いぜww」
と。
「あ、入れて頂くだけで、良いです。汚い物は見たくないですしww その代わり、先にあなたの役職や階級と名前を教えて下さい。
なーに、簡単な事ですよ。戦って勝ったは良いが、実は単なる下っ端で、最初から自分にそんな権限は無いなんて言い逃れされたんじゃ、割に合わないですからね?」
と海渡が大袈裟なやれやれと言うジェスチャーで虎の衛兵を見る。
「ふん、良いさ、きかせてやるよ。俺はこのサルド共和国、首都の守備4番隊の副隊長、ガルーダ様だよ。ガハハ」
と胸を張る虎。
「うーん、4番隊の副隊長か・・・なんか微妙だけど、大丈夫かな?」
とブツブツ言いながら、
風魔法の拡声を使いながら、
「さーさー、街道を行く皆様、お立ち会い、お立ち会い。
ここの城門の衛兵である、守備4番隊の副隊長、ガルーダさんが、無謀にもワンスロット王国からやって来た人族の6歳児、この私、カイトに無謀な戦いを強要しています。
何と、このガルーダ副隊長さんは、私が勝てば、無審査で私達を城門を通してくれて、更に1日中、真っ裸で逆立ちして城門の外に居るそうです。まあ、あまり汚い物は見たくないのでご遠慮したいのですがね。
さー、お急ぎで無い方は、是非このガルーダ副隊長さんの人生を掛けた大勝負、ご覧下さい。
尚、私はこの勝負に、ワンスロット王国の金貨100枚を掛けます! ガルーダ副隊長さんに掛ける方はいらっしゃいますか?」
と散々に煽りを 入れる海渡。
判ってらっしゃる、フェリンシアとステファニーさんは、海渡の後方で、机と椅子を出して、ノートとペンを出して、『カイト』100枚 『ガルーダ副隊長』--- と掛けの受付を瞬時に用意している。
フェリンシアはノリノリで伊達眼鏡を掛けてキリリとしているww
「さぁ、掛ける人はこっちやでーー! 果たして人族の6歳児、カイト君は虎族のガルーダ副隊長はんに勝てるんやろうか? さーー、張った張った!!!」
とステファニーさんも、風魔法の拡声を使って、掛けに乗る人を大募集している。
「な、なっなにをお前ら・・・」
とガルーダ副隊長さんが、事が大きくなりすぎて、『これは拙いかな?』って顔をしている。
その後ろで、先ほど頭を抱えていた衛兵の1人は城門の中へと走って行った。ふふふ、しめしめw
海渡は、受付に金貨100枚を並べて積み上げる。
すると、周りで見ていた、通行人のおじさんらが、ガルーダさんに掛けて行く。
掛けた金額をメモ帳に書いて、千切って半券として渡すフェリンシア。
その後ろでは、ケモ耳3名が我慢出来なかった様で、後ろ向きになり、腹を抱えて声無く笑っている。
おお!結構な額がガルーダ副隊長側に集まってるなぁ。
「さあ、もう掛ける方は居ませんかーーー!? そろそろ締め切りますよーーー! あれ、ちなみに、私は自分に掛けましたが、当の本人であるガルーダ副隊長さんは、ご自分に掛けないのですか??」
と言うと、周りから、
「そうだ!そうだ!!」
とヤジが飛ぶ。
「くそぉー、俺は今金欠なんだよ。 おい、お前、俺に金貨1枚掛けて置いてくれ。後で儲けを半分ヤルからよ!」
と後ろの同僚に、指示をしている。
「えーーっと、ガルーダ副隊長さん、ちなみに、勝負の方法はどうしますか? 素手? 武器あり? 魔法もあり? 私は何でも良いですよ?」
と言うと、
「俺は素手だ。お前は武器を使っていいぜ!」
とガルーダ副隊長さん。
「えーー、皆様、今ガルーダ副隊長さんより、勝負方法にご提案がありました。ガルーダ副隊長さんは素手で、私には武器の使用をお認めになりました。しかし、ここは男と男の勝負。この人族の6歳児も、素手で行きたいと思います。
尚、勝負は、どちらかが戦闘不能になるか、降参するまでとし、殺す事は厳禁と致します。命に関わらない怪我はOKとする。それで宜しいですか?ガルーダ副隊長さん」
と海渡が聞くと、ニヤニヤ笑いながら、ウンウンと頷いている。
いつの間にか、ケモ耳3人は、フェリンシアからの指示で、肉串や、冷たい水、ジュースなんかを行商しているwwww
「さーー、他に掛ける人はおらへんかーー? そろそろ締め切るでーーー!!」
と拡声で叫ぶステファニーさん。
「よし、ほなこれで締め切りやー! カイト君OKやでーw」
と親指を立てるステファニーさん。
集計の終わったフェリンシアも、ニヤリと黒い笑みを浮かべているw
海渡とガルーダ副隊長を中心とし、200名以上のギャラリーが円を描いて、ワーワーと囃し立てている。
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