第306話
地下工房では、真剣な表情でブツブツと独り言を言いつつ魔道具を作っているステファニーさんの所に行き、作ったナイフを1つプレゼントした。
「キャッホーー!」
と奇声を上げて、子供の様に喜ぶ可愛いステファニーさんw
抱きついて来るのを手で顔を押さえて阻止し、足早に2階の託児ルームへ向かう。
海渡らは、ラルク少年とアン、サニーを呼び出して、別室でそれぞれの武器を渡した。
「あ、兄貴!! これは?」
と恭しく受け取る3名に、
「今日、やっと時間が出来たから、俺が打った。良いか?滅茶滅茶切れるから、本気で注意して使う様にな。 これで自分や仲間切ったりしたら、洒落にならんから。体がデカくなったら、また新しいのを作ってやるからな。」
と注意を促しつつ、プレゼントすると・・・
3人共に号泣。
特に、少女2人の号泣っぷりは凄かった。
「あ、あとな、明日の午前中は、防具を揃えに行くから朝食後、一緒に着いて来てね。」
と伝え、頑張れよと頭を3人の撫でて部屋を後にした。
最後は、大食堂の厨房に居るアニータさんに、包丁をプレゼントしたのだが・・・。
大喜びで食材を試し切りしたアニータさんが、まな板までサクッとみじん切りしてしまった・・・。
「「あ・・・」」
と絶句するアニータさんと海渡。
最初は羨ましい羨望の眼差しで見ていた周りの調理スタッフも、
「「「「「えええええええーー!!」」」」」って叫んで青い顔になってる。
ギギギギと首を動かして海渡を凝視し、口をパクパクするアニータさん。
海渡が、
「なんか、ごめん・・・切れすぎたね・・・」
とやり過ぎた事を謝った。
「しかし、せっかく打って頂いたので、実用は『危ない』ですが、『記念』に飾って置きますよw」
と復帰したアニータさんから、お礼と言うか、フォローを頂いた。
「次回はもうちょっと切れ味を考えるね。」
と言いつつ、その場から逃げる様に立ち去ったのだった。
(あの包丁はカボチャとか?マグロの兜割りとかの、堅い食材専用だな・・・と暫く封印する事にした。)
さて、みんなが待ち構えていた夕食の時間となった。
全員から拍手で迎えられた大食堂で、何故か挨拶をさせられる海渡。
「うん・・・まあ、500年に1度と言う時期に生まれた事の幸運をみんなで味わいましょう!」
と短めに挨拶し、更なる拍手と歓声を受ける。
海渡、フェリンシア、ステファニーさん、オスカーさん、ヨーコさんは既に、と言うか、まだ満腹なので、パス。
レイアにも1切れ食べさせたら、プルプルとレイアが恍惚の表情で震えていたwww
その他の全員が1切れを乗せた皿を受け取り、席に着いてパクリと一口食べていた。
食べた者は暫く蕩けた顔をして、その後驚愕の表情に変わり、そして幸福の余韻に浸っていた。
それを見た者も、パクリと・・・~~(ry
自宅組はその様子を見て、家族の分まで分けて貰い、イソイソと帰って行った。
海渡は、みんなが幸せそうな余韻を楽しんでいるのを見届け、地下工房へと降りて、訓練室用の魔道具を作る事とした。
個人のグレードに応じた難易度で、闇魔法の黒い球を動かし、負傷しない程度の弱い雷撃を撃つ様にする。
ランダムにフェイントや意外性を持たせる為、2つの魔動CPUとプログラムを作り、合間合間に変な攻撃が入る様にしてみた。
各個人に持たせる、カード(表面にガラスディスプレイを備え、内部に各人の成績やデータを残せる様に水晶記憶体を内蔵)を入り口のスロット(10名まで同時プレイ可能な10スロット仕様)に差し込む様にし、現在のグレード、総合点数、防御や回避や素早さや攻撃力等の成績、注意点等がカードに表示される様にした。
グレード(難易度)は30段階にして、黒い球がランダムな動きをするように注意してプログラムした。
完成した各グレードを試し、不備が無い事を確認して、満足な出来映えになったと喜ぶ海渡。
(まあ、べーリーハードのグレード30でさえ、海渡にはべーリーイージーなんだけどね)
「これ、もしかして、ギルドや軍隊に売れるんじゃね?
明日の訓練で様子を見て、それからオスカーさんに見せてみるとしようwwww」
とワクワクする海渡だった。
早速、この戦闘訓練魔道具・・・戦闘シミュレーターと戦闘シミュレーター・カードを作成する製造ラインを作成し、ラインを起動した。
その後、棟梁達の作品を入れ替えを行い、部屋に戻ってレイアを連れて風呂に入る。
すると、風呂場に居るスタッフ達から、口々にお礼を言われ、微笑む海渡。
まあ、確かにスタンダードでさえ、凄い実だよな・・・。部位欠損まで治しちゃうしw
ちなみに、子供の体である海渡には『そう言う変化』と自覚が無く、知らなかった事だが、成人男性も女性もかなりな変化があったようで・・・、この日を境にかなりの職場カップルが誕生したらしい。
海渡は、部屋に戻って、フェリンシアとユッタリと紅茶を飲みながら、今後の予定の話をしていた。
「ゲルハルト帝国のせいで、余計な時間取られちゃってるけど、一区切りしたら、サルド共和国に行きたいんだよねぇ。」
「ああ、獣人の国ですね? でもコーヒーは既にあるけど、何か特別他に欲しいものとかあるんですか?」
とフェリンシア。
「ふふふ、まあ欲しい食べ物と言えば、スパイスかな? 胡椒とか主要な物はあるけど、どうやらあの国には他にも色々スパイスがあるらしいんだよね。
俺の元居た日本って国には、カレーライスと言う、万人に喜ばれる美味しい料理があってね、それが食べたいんだよね。
で、カレーを作るには、沢山の種類のスパイスが必要なんだけど、この国でもコーデリアでも手に入らなくてさぁ。
ああ・・・カレーライス食べたい!!!」
と思い出して、涎が出て来る海渡。
そう、このトリスターにやって来て、アルマーさんの所の料理長に色々聞いた時に、結構な数のスパイスがある事は判明したのだが、決定的にこの国に入って来ていない無いスパイスがあり、試作したが、思った味にならず、制作を断念した過去があった。
よって、智恵子さん情報で、サルド共和国では普通に手に入ると言うそれらのスパイスを大量に買う予定でもある。
そんな様子を見て、涎を垂らすフェリンシアww
「それじゃあ、是非とも早々に行かないとですね!!」
とフェリンシアもノリノリ。
カレー道は奥が深いらしい。
実際にルーを作った事は無い海渡だが、そこら辺の分量等は智恵子さんに聞けば何とかなるんじゃないかと、考えている。
それに! ケモ耳沢山のワンダーランドにも興味があるwww
あ!そう言えば、コーデリアで助けた元冒険者のケモ耳3人娘は、順調に訓練しているのかな?
時々大食堂で見かけるけど、あれ以来、特に直接話はしてないなぁ。
コーデリア組全体はそろそろOKとの報告が来てるから、大丈夫だとは思うけど、本人の希望を聞いて、サルド共和国に帰りたいと言う事なら、サルド共和国に支店を出す際に連れて行くのも手だな。
と考えていた。
「まあ、来年の戦争が終われば、サルド共和国に行くよ! あ、そうなると、ステファニーさんも連れて行かないと、拗ねそうだなw」
と海渡が笑いながら言うと、
「そうですよ!ステファニーさん連れて行って、一緒に色々食べないと!!」
とフェリンシアも力を込めて言っていた。
「あ、でもアルマーさんから頼まれている、トリスターの城壁の建築もあるのか。 先に城壁? うーーん、悩むなぁ。」
と唸る海渡。
「じゃあ、どうせ年末年始に休みあるし、その間に先にサルド共和国行くってのはどうでしょうか?」
とナイスな提案。
「ああ、それ良いかもね! 一応、明日オスカーさんやヨーコさんに打診してみるよ。何か忘れている予定とかあるかもだし。」
こうして、ユッタリとした時間の中で、異世界での最初のクリスマスの夜は雪も降らずに終わるのだった。
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