第270話


東の森に辿り着き、ドローンからアジトを発見した通知を受け取り、隠密スキルで気配を消しつつ、アジトの洞窟の前の木陰まで移動した。


洞窟の前に散乱した馬車や、血の跡が残っている。

焚き火の跡もあり、見張り役の小汚い盗賊が2名入り口付近に座り込んでいた。


洞窟の中をマップで確認すると、20個の赤い点と、青い点が15個あった。

『海渡さん、攫われた子供が1人かなりの怪我をしているみたいで、危ない状態です。他にも病気になっている人が3名程居るようです。』

と智恵子さん情報。


『じゃあ、早急に片付けないと拙いね。了解!』

と海渡は、洞窟の前に居る見張りに向かってファイアカッターでザックリ首を落とした。

切り口が焼け、出血も無く綺麗に始末出来た。


無闇に殺生する気はないけど、盗賊は良いだろ・・・と海渡は思っている。

元々こう言う手合いの犯罪者の死刑は、当然と考えている海渡にしてみれば、人と言うカテゴリーに、こいつらは分類されていないだけだった。



物言わぬ骸から、身ぐるみを剥いで、隅に放置した。


隠密に加え、身体強化、身体加速、クロックアップのスキルを全開にして、洞窟の中に入り、赤い点の群れ3つ、合計で10名を始末した。


そして、最後は奥のホールに、残りの8個の点が集まっていて、宴会をしている様子。

一気にファイアカッターで首を落として終了した。

そして、闇魔法の触手で、洞窟の外まで盗賊の遺体と首を運び出して、20体を纏めたのだった。



後は攫われた被害者の救出である。

青い点が集まっているホール?に向かい、檻に向かって話しかけた。


「冒険者のカイトと申します。助けに来ました。今から檻を開けますので、少し離れて貰えますか?」

と言うと、突然現れた少年に驚く女性と子供達。


しかし、すぐに動きだして、檻の出入り口から離れてくれた。

見た所、檻は鉄製の粗末な物だったが、面倒なので刀を取り出して、『鋭利増加』『貫通増加』『斬撃加速』を3回掛けて、×印に刀を振り、

蝋燭を熱いナイフで切ったように、サクッと切れて崩れ落ちた。


「さあ、どうぞ、出てください。あと、病人と怪我人が居るようですから、治療します。ご安心下さいね。」

と声を掛け、まずは状態の悪い怪我をしてる子供の所へと駆けつけ、状態を確認する。


腹に包帯代わりの布を巻いた4歳ぐらいの男の子が居た。

顔色が悪く、息も浅い。


『智恵子さん、これどうかな? 感染症とかになってるんじゃない?』

と聞くと、骨まで達した傷口から、細菌が入り感染症になっているらしい。


なので、まずはクリーンをかけて、綺麗にし、細菌やウィルスを殺し、炎症を抑え、傷ついた内臓や骨や神経まで細胞レベルで再生するイメージで『ヒール』!


子供の体が激しく光り、苦しげだった表情が落ち着き、呼吸も正常になった。



ハチミツ水を与える様に、その子に付き添っていた女性に言って、コップとスプーンを渡し、病気の女性3名にも『ヒール』をかけた。


全員にクリーンを掛け、ハチミツ水を与えて軽いサンドイッチを与えた。


怪我をしていた子供も病気の女性も目を覚まし、やっと助かった実感が出て来た全員からお礼を言われる。


着ている服がボロボロに破けているので、15名分の服を出してやり、着替えるようにと言って、他の部屋(ホール)をくまなく探した。



結果、倉庫にしているホールから、大量の物資や武器、お金等が出て来たので、サクッと収納した。


洞窟の前に集めた盗賊の死体を取り囲む様に焼却炉を作り、入り口から大きめのファイヤーボールを入れ、綺麗に燃やした。

煙突をちゃんと作ったお陰で、嫌な匂いもせず快適に灰にする事が出来たのだった。



仕上げは、拉致被害者全員を洞窟の外に連れ出して、洞窟が悪用されぬように、土魔法で入り口を塞いだ。



被害者達を見たが、全員を引き連れて、徒歩で森を脱出するのは、体力的にも厳しいと判断し、飛行機で一気に脱出する事にした。


洞窟の周りの木々を根元からアイスカッターで切断し、25m程の空間を作り、2号機を取り出した。


「ひとまず、近くのドージャス村へとお送りしますので、これに乗って貰えますか?」

と後部ハッチを開けて、シートに座らせる。


シートベルトの締め方を教え、ハッチを閉めて、コクピットへと座る海渡。


助け出された女性も子供らも、あまりの出来事の連続で、ポカンとしており、言われるがままの状態で、頭が追いついて無い様子。


「では発進しますね!」

と言って、機体を上昇させる。


森から出て、先ほど作った盗賊の檻へ向かって飛んだ。


やがて、檻の上に到着すると、上空から盗賊の檻溶かしてて地面に埋めた。

魔物とかが繁殖しないようにとの優しい配慮である。

そして、改めてドージャス村へと進路を取ったのだった。



途中、ガルンダさんの馬車を追い抜き、ドージャス村の柵の外に到着。


飛行機が着陸したのを見た村人達が飛行機へと集まって来ている。


幸い、自動販売機を設置した際に、既に飛行機は確認済みなので、パニックにはなっていない。


「さあ、村に到着しました。降りて大丈夫ですよ?」

と後部ハッチを開ける。


やっと怒濤の救出劇から、生還した実感を味わい、お互いに抱き合って涙を零す女性と子供達。


「ありがとうございました。このご恩は忘れません。」

と口々にお礼と嗚咽を漏らす。


村人の集団から、村長が前に出て来たので、自己紹介して挨拶をしをする。

事情を説明した。


被害者の女性2人がこの村の住民であったらしく、久々の再会に抱き合って喜んでいた。

そうこうしている内に、ガルンダさんの馬車も到着。


「いやぁ~、これが噂に聞く『飛行機』という物ですか! 凄いですね!!」

と初めて見る飛行機に大興奮のガルンダさん。



海渡は被害者全員を集め、盗賊の倉庫から押収した物を出し、自分らの持ち物を聞くと、

「何もお礼が出来ませんので、せめてこれらは受け取って下さい。」

と言われた・・・。


「うーん・・・お気持ちだけで結構ですよ。命が助かったと言っても、これから先、無一文じゃあ、生活の立て直しが出来ないでしょ?

例えば、こう言うのはどうでしょうかね? 取りあえず、ご家族とかの形見となるような物はご自分で持って頂いて、他の不要品は私が買い取ります。

買い取った金額を全員で均等に割って、これからの再出発の資金にするってのは如何ですか?」

と提案すると、全員が涙を流して喜んでいた。


やはり、推測通り、商団として移動中に襲われた商会の馬車であったり、盗賊に襲われた村の住民であったりで、遺品となる品も混じっていたらしい。


残った商品を海渡が買い取り、全員に金貨5枚づつ手渡した。


余りの金額に全員が驚くが、

「問題ありません。幾らで買い取るかは、俺の判断なので。」

と事も無げに手を振った。



「みなさんの中で、帰る場所とか行く宛ての無い方は居ますか? もし帰る宛ての無い方や、生活の基盤が無い方は、俺のやってる商会で働く事も可能ですよ。

あと近隣の村に帰る方は、飛行機でお送りします。」

と言うと、15名の内、この村の2名はこのままこの村に残る事に。


近くの村(50km程東)に2人の女性、別の村(北東に45km)が1人帰る事になった。


他は今回の拉致で家族と全てを失った女性と子供が10名。

帰る宛ても無いとの事で、海渡の商会で働きたいとの事。


夕暮れ間近なので、挨拶も早々に再度飛行機に乗り空へと飛び立った。

近隣の村経由でトリスターへ戻る事にした。


『智恵子さん、ここからトリスターまでって、何キロぐらいあるの?』

と聞くと、500kmぐらいとの事。


『じゃあ、ギリギリ門が閉まるまでに間に合いそうだね?』

と胸をなで下ろす。


5分くらいで、村に着き、女性2名を降ろす。

門から村人がやってきて、2名の女性と抱き合って喜んでいる。

2名は頭を下げながら手を振っていた。


「大丈夫そうだな。」

と海渡は安心して、離陸した。


村人と女性が大きく手を振っていた。



次の村に到着し、女性1名が降りた。

こちらの女性も、村から出て来た数人と抱き合って喜び、同じ様に手を振っていた。


海渡は離陸して、トリスターへ向けて、オートパイロットをON。

夕日に染まる空を機体が時速1000kmで駆け抜ける。


ヨーコさんに子供3名と女性7名を連れて帰る事連絡し、準備をお願いした。


子供らがお腹が減ってる様だったので、全員にきな粉餅と磯辺焼きを皿に出して、お茶と一緒に渡した。


初めて食べるお餅に、おっかなびっくりな様子で一口食べると、後は満面の笑みでアッと言う間に完食。


「初めて食べましたが、これは何と言う食べ物ですか?」

と聞かれ、


「これはお餅と言う食べ物です。うちの商会は、大食堂があって、食事も宿舎もありますから、ちゃんと働いてくれれば、衣食住は心配要りませんよ。

詳しくは、これから向かうトリスター本店のヨーコと言う者がご説明しますので、ご安心下さいね。労働条件も悪く無いと思いますよ。」

と説明した。


放置になっていたフェリンシアに伝心で連絡すると、

『やっとノルマの半分が終わりました。残りは明日にしますね。』

と言っていた。


『お疲れ様。こっちはちょっと色々あって、全部終わった後に、寄り道したら、盗賊に出くわしてねw あと30分ぐらいでトリスターの飛行場に戻る所。』

と説明した。




25分くらいすると、トリスター近隣となり、着陸のアプローチに入る。

速度と高度を落として、飛行場へオートランディング。


飛行場の格納庫前でフェリンシアとステファニーさんが手を振っていた。

何故か、レイアも横でプカプカ浮いていた。

(あれ?レイア置いて行ったんじゃなかったっけ??)


後部ハッチを開け、全員が降りる。


海渡は、

「あ、みなさん、ご紹介します。俺のパートナーのフェリンシアと、さえじま商会の開発部門のチーフのステファニーさんです。横に浮いてるのは、俺の従魔のレイアです。」

と言うと、


「親分、酷いっす! あっしを置いて行きましたよね!? 探したんすからね!?」

とプンプンしていた。


女性と子供10名はポカンとして、再起動し、

「「「「亀が喋ったーーー!」」」」

とお約束通りに叫んでいた。



「あ、初めまして、カイト親分の舎弟のレイアです。亀じゃないっす。こう見えても、シルバー・ベヒモスっす!」

とぬいぐるみの様な姿で、誇らしげにしていた。


やはりお約束通り、

「「「「ベヒモスーーーー!」」」」

と叫んでいた。


そんな反応をスルーしつつ、暗くなって門が閉まる前にと、南門へと急いで向かうのだった。

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