第262話


時刻は午後4時50分、ギルド入ると、依頼から戻って来た冒険者達がかなりの数居た。


「あ!カイトさんとフェリンシアさんだ!!」

と数人が声を上げると、一斉にこちらを見る冒険者達。


すると、アニーさんが、受付からこちらにやってきた。

「カイトさん、どうされたんですか?明日の朝来られるんじゃなかったのですか?」

とアニーさん。


「あ、いやちょっと森で討伐してて、こいつをテイムしたので、従魔登録に来ました。」

とフェリンシアの胸に抱かれたレイアを指さした。


「え?? 亀?」

とアニーさんが呟くと、


レイアがジタバタとフェリンシアの腕から這い出して、プカプカ浮かびながら、アニーさんの方へ飛んで行き、

「あ、初めまして。あっしはレイアっす。この度、カイト親分の従魔になったっす。よろしくっす!!」

と挨拶した。


一瞬静まり返るギルドのロビー。


そして、その後、

「「「「亀が喋ったーーーーー!」」」」

と全員が大騒ぎ。


「あ・・・」

と顔に手を当てて、しまった・・・と言う仕草の海渡。



「あ、自分、亀ではないっす。ベヒモスっすね。」

と訂正を要求するレイア。


「「「「ベヒモスーーーー!!!」」」」

と更に大騒ぎ。


「ギルドマスター呼んで来ます!」

と走り去るアニーさん。


冒険者達に囲まれる取り残された2人と1匹。


「あ、みなさん、レイアっす。よろしくっす!」

と挨拶する礼儀正しいレイア。


冒険者の女性1人が、

「レイアちゃんって言うのね、可愛いわね!! 何処に住んでたの?」

と質問すると、


「ああ、森に住んでいたんすけど、何か魔物が騒ぎまくってて、起こされちゃって、寝起きで食いまくってたんすよ。

そしたら、親分が来て、何か周りの魔物を一瞬でやっつけてて、次に後ろに居たヒュドラも瞬殺したのを見て、これは敵わないと、必死に懇願して舎弟にして貰った感じっす。」

と雑な説明をしていたが・・・。


「「「「ヒュドラーーーー!!!!!」」」」

と今度は絶叫。


「ああ、大丈夫っすよ。親分がサックリやっちゃってましたから。あれは私でも無理っすからねぇ~」

と遠い目をしつつ回想していた。


落ち着きを取り戻した別の冒険者が、

「ところでベヒモスって、空飛べるんですね?」

と聞くと、


「ああ、これはこのサイズだからっすよ。元のサイズだと重すぎるから流石に飛べないっすね。普段は重さを軽減する為の補助を掛けてる感じっす。自分、足腰弱いっすからw」

と解説していた。




何か、会話の輪の外に海渡とフェリンシアが取り残されて、向こうはワイワイと楽しそうに話している・・・。

口止めも間に合わず、既に手遅れ感がバリバリなので、なんか諦めた。


そこへギルドマスターのアルベルトさんが慌ててやって来た。

「カイト君、今度はベヒモスを従魔にしたって!? で、そのベヒモスって何処に居るの?」

と驚いた顔で聞いて来た。


すると、冒険者に囲まれていたレイアがプカプカと浮かびながらアルベルトさんの前に進み、

「あ、あっしっす。カイト親分の舎弟になったレイアっす!宜しくっす!!」

と挨拶。


「え? 喋った?」

と驚きの余り、口をパクパクさせて、言葉に詰まっていた。




暫くして、水を飲んで落ち着きを取り戻したアルベルトさんが、

「いやぁ~、本当に驚いたよ・・・。まあ、凄く賢いし、凶暴性も無さそうだし、何よりカイト君の迷惑になるような事はしないだろうと言うのが判ったから、安心したよ。」

と従魔申請を進めるように、アニーさんに指示してくれたのだった。


待ってる間に依頼書の掲示板を眺めていると、素材の討伐依頼を発見し、

「ねえ、アニーさん、この素材の討伐依頼って、討伐場所の指定とかないけど、何処で討伐してもOKだったりする?」

と聞いてみた。


「ええ、素材の依頼なので、素材さえあれば大丈夫ですね。もしかして、その塩漬けになってる依頼受けて下さるんですか!?」

と嬉しそうな顔をしている。


「ああ、うん・・・と言うか、さっき討伐した中にあるんだよね。えっと、これと、これと、これと・・・~」

と30枚ぐらいの束を取って、アニーさんに渡し、

「これ、前後しちゃうけど、依頼受けた事に出来たりする?」

と聞くと、


「ええ!勿論ですよ!! 他に何かあれば、それも事後報告で任務達成に出来ますよ!」

と大喜びのアニーさん。


暫定プレートを返して、新しい正式なプレートをレイアに付けてやり、アニーさんと一緒に倉庫へと向かう。


依頼書の順に、アイテムボックスから、該当する魔物を順に並べて取り出す。


すると、

「あ、それ私もありますね。」

とフェリンシアも海渡の並べた物に一緒に並べて置いて行く。


ズラリと並ぶ30種類の魔物の山に、アングリと口を開けて見ているアニーさんと倉庫のスタッフ。


「アニーさん、取りあえず、こんな感じですが、大丈夫ですかね?」

と言うと、こちらの世界に戻って来たアニーさんが、


「ええ、大丈夫です!!! では、この30枚の依頼は任務達成と言う事で報酬と余剰分の素材買い取りを計算しておきます。

数が数なので、明日の朝までに精算しておきますね。」

との事。



ギルドから出て、屋敷に戻りながら、アルマーさんに連絡を入れた。


王様と何人かで端末の表示をリアルタイムで見ていたらしく、次々に消えて行く赤い点の様子にアルマーさんらは大興奮していたらしい。


ヒュドラとベヒモスが居た事を言うと、絶句していたが、ヒュドラも倒した事を伝えると、ホッとしていた。


しかし、ベヒモスを従魔にした事と伝えると、今度は驚愕していた。


「カイト君、それ従魔にしちゃって大丈夫なの?」

と言うので、レイアを呼んで、通信機に向かって自己紹介をさせた。


「あ、初めまして。あっしはカイト親分の舎弟になったベヒモスのレイアっす。宜しくっす! 決して親分の顔に泥を塗る様な事はしないので、ご安心下さいっす!」

と礼儀正しく?ご挨拶。


「と言う事なんで、ご安心下さいねw」

と海渡が締めると、


「はははww 何かもうビックリし過ぎて、判らんが、大丈夫なのは理解したよw」

と納得してくれたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る