第238話
風呂から上がり、火照った体を冷ましつつ、冷たいミルクを飲みながらくつろぐ2人。
「ねえ、フェリンシア、絶界の森の魔物の件だけどさ、監視用のドローンを作ろうかと思ってるんだ。」
と海渡が言う。
「ドローンって、あの空を飛んでフワフワ浮いてるアレですよね?」
とフェリンシア。
「そうそう、それの魔物レーダーバージョンを作ろうかと思ってるんだ。そしてそれを一定間隔で配置しておけば、現場に行かなくても、動向が判るから、時期を見計らって討伐しに行けば良いかな?とね。」
「なるほど!それは良いアイデアですよ。 そうすれば、色々やる事をやりながら、向こうの動きも把握出来るし。じゃあ、今から作りに戻るんですね?」
とフェリンシア。
「うん、そうしようかと思ってるんだけど、フェリンシアはどうする?」
と言うと、
「そうかぁ・・・、ここに一人で居ても、寂しいから着いて行っても良いですか?」
とフェリンシア。
「うん、OKだよ! じゃあ、行こうか!」
とゲートを地下工房へと繋ぐ。
2人で地下工房へ出て、棟梁達の進み具合を確認し、王都タイプの集合施設を収納。
新しくトリスター型を作成する。
先日のレベルアップのお陰で更に動きに磨きが掛かり、前回の75%の時間で王都タイプの作成が完了。
更に、店舗セットを回収し、新しい店舗セットを作る。
「さて、ドローン作るね。」
とフェリンシアの方を振り返り、
「どう?退屈じゃない?」
と聞くと、
「ええ、海渡が一生懸命物作ってるのを見るのも楽しいですよ?」
と微笑んでくれた。
「ごめんね、ありがとう。なるべく急ぐよ!」
と作業を開始する。
ベースになるのは例の証拠撮影用のドローン。
この撮影用ドローンの撮影部分を魔動CPUを使って、航空機に使用した対魔物レーダーに変更して、CPUとリンクする。
時空間リンクを使ってデータを本部の魔動CPUに送る様にする。本部のサーバは魔動CPUはデータを水晶記憶体へ保存しつつ、絶界の森の地形データ上に魔物の反応をプロットしたデータを作成して時空間リンクで端末となるガラス・ディスプレイに表示する。
こんな感じか。
対魔物レーダーは現在Ver.2となり、探索エリアが半径50kmから100kmにアップしている。
ドローンの対魔物レーダーが半径100kmと言う事だから、各70kmグリッドで配置すればOKか。
全幅が1200kmで全長が700km・・・つまり横600km×700kmのエリアか。つまり、横に9機×縦に10機=90機あれば余裕か。
よし、100機作ろう。
と言う事で・・・
ドローン製造ラインの対魔物レーダーバージョンを5個作成し、稼働する。
2分間で1機が完成するので、100機なら40分で完成する。
更に本部用のサーバを作成し、念のため、水晶記憶体を10個接続した。
サーバは地下工房にサーバールームを作成し、配置した。
次は端末用のラインを作成し、15機の端末を作成した。
これを余りバラ撒くつもりは無く、海渡とフェリンシアだけに管理者権限を付与し、他は期間限定のゲストユーザー端末とした。
トリスターに3機、王都に2機、コーデリア王国に3機を貸し出す予定とする。
サーバ配置や端末のラインを作成している間に、ドローンが125機が完成したが、製造ラインはそのまま稼働させて置く事にした。
「フェリンシア、お待たせ!必要な数のドローンも全部完成したよ。」
と言うと、
「じゃあ、これからバラ撒きに行きますか?」
とフェリンシア。
「うん、バラ撒くつもりだけど、絶界の森の上で、一気に放出すれば、各自が最適な位置取りをする様に、プログラムしているから、帰る途中で、バラ撒いて行こうと思うんだ。
「なるほど、それは楽ですねw 私は1つずつその場所に持って行くのかと思ってましたw」
とフェリンシアがホッとした表情で言う。
「それの方が、作るのは簡単なんだけど、配ったり回収したりするので、徹夜になりそうだったから、自動にしておいたw」
と海渡が説明した。
海渡のここら辺のシステム・エンジニア寄りの発想は、日本に居た頃にはあまり無かった物だ。
この世界に来て、あまりにも自動化されてなくて不便だった事で、成長したのか、もしくは元からその素質があったのかは不明だが・・・。
「じゃあ、一度絶界の森の上空にゲートで出てバラ撒こうかね。ゲートを出たら、すぐに飛行魔法使ってね。落ちるからw」
と注意して、ゲートを森の上空に繋いだ。
森の上空で2人はホバリングして、55機づつ起動しながら放り投げる。
手分けしたので5分と掛からず、放出を完了し、フェリンシア用の端末(さながらタブレットの様な形状)を手渡した。
「じゃあ、端末を起動してみて!」
ガラス・ディスプレイ上には、移動中の各端末が緑の点で表示される。
徐々に森の輪郭と赤い点が表示されて、中央(ユグドラシルの木)から西側は1列のみはみ出す感じで、菱形の森の東側をキッチリ全エリアをカバーするように自動配置される。
最後の3機が定位置に辿り着き、表示モードを魔物のみに切り替える。
「おお!!!成功したねww」
と赤い点が無数に表示される西側中央を見て海渡が、満面の笑みを浮かべる。
「これは凄いですね。マップスキルの表示と同じですが、エリアが広くて判りやすいですね。あ、でもこれ、前回偵察した時より、かなり進んでますよね?」
とフェリンシア。
「だね。やっぱり、襲撃はありそうだよね。しかも、北側と南側に徐々に分かれて行ってる感じするよね。」
と海渡。
『智恵子さん、これ南と北の両端に届くのって、どれくらいの日数が掛かりそう?』
と聞くと、
『そうですね。このスピードだと来年の1月10日ぐらいには、北と南両方が到着しますね。』
『なるほど!ありがとう!』
「フェリンシア、聞いた?」
「ええ、聞きました。」
「と言う事で、当分は大丈夫そうだね。じゃあ、夜中になっちゃったし、戻ろうかね。」
「はい。」
とゲートをコーデリア王国の新居の部屋へと繋ぎ、部屋に戻ったのだった。
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