第189話


あと30分前後で日が沈みそうなので、フェリンシアと手分けして、ドンドン作業を進める事にした。


海渡が畑スペースを焼いてシェイクし、柵を付ける間、フェリンシアが種をまく。

その間に次の畑を海渡が作る~~これを繰り返す。


12個の畑の下準備が終わったら、海渡がラピスの水を撒いて行く。


そして、最後の3つの畑は2人で実を植え、ラピスの水を撒いて行く。


6面+12面のコーヒー畑が完成した。

もう12面の最初の畑は海渡の身長を超える程に育っている。


「さあ、みんな美味しく育てよ!」

とコーヒーに声を掛けて、暗くなった畑から、ゲートで一気に北門の傍の陰へ出る。


まだギリギリ門は開いていたので、滑り込む。


店へと戻り、ヨーコさんに、事の顛末を話し、契約の詰めをお願いした。

「なるほど、昨日の馬車の中でカイト様が仰っていた通りの展開になりましたね。良かったですね。」

とヨーコさんが微笑んでくれた。


店長のドッチさんに、進捗状況を聞くと、

「あの12人は、なかなか優秀ですよ。商品の説明を教えたら、メモ帳に一生懸命メモして覚え、接客の訓練もしてますが、明日に開店してもソコソコ行けそうです。

まあ、余裕をみれば、明後日オープンと言う所でしょうか? レジの使い方も覚えたので、当面はベテラン4人が1人につき3名のチームを組んで、1階のみで行きます。慣れてきたら分散して2階もオープンします。」

との事だった。


「じゃあ、明後日オープンでお願いしちゃって、明日の午後には、次の都市へと向かっても良いかな? 何かあれば、連絡してくれれば、何とかするし。」

と打診すると、OKとの事。


ヨーコさんにも明日の午後出立すると伝え、午前中にジャックさんとの契約を済ませて貰う様に、お願いした。


今夜は、この宿舎で泊まる事にして、みんなで夕食を取り、宿舎の風呂に入る。

12名の新規組は初めての風呂に感激していた。


しかし、ラピスの湯を知るトリスター組は、残念そうな顔をしていた。

なので、

「風呂に浸かりながら、この宿舎の前ってかなりスペース空いてるでしょ? あそこにトリスターと同じサイズのが入るんだよねw ここの敷地、意外に広かったから、ラピスの湯と、更に託児ルームも作ろうかと思ってるんだよね。」

と告げると、大興奮してたwww


新規組は良く判らずに、ポカンとしていたけど、トリスター組から内容を聞いて、やっぱり大興奮。


あまりにみんなが興奮して、湯船の中で踊り出すもんだから、バランス崩して、危うく溺れかけたじゃないか!!!w


まったく・・・早く成長したいものだ・・・。

まさか、いつまでもこのままって事はないよね? 女神様!

せめて、10歳ぐらいの体にしてくれれば・・・と嘆く海渡であった。

しかし、本人は余り気付いていなかったが、この世界に来て本日で2ヵ月最後の日までに、身長は約1cm伸びている。


時空魔法で時間短縮を使える海渡だが、流石に自分の体でそれを試す気はない。

理由は、時間短縮は、あくまで外の観測者視点での事であって、時短空間内に観測者が居る場合、それは普通の時間の流れと同じな訳で、傍から見ると、短縮された様に見えるだけ。

つまり、孤独に耐え、時短空間で1年過ごせば、出て来ると1年分成長しているだけと言う事。


であれば、諦めてこの幼少期も含め、楽しむしかないか・・・と。



大騒ぎだった風呂から上がり、コッソリとゲートで第一地下工房に置いてきた銭湯を確認すると、気を利かせた棟梁達が完成させてくれていた。


今度は、託児ルームと2階と3階にシングル親子が住める居住スペースを付けたバージョンの託児所を建設した。サイズは敷地に温泉を置いた残りで通路を確保できる程度のサイズとした。


棟梁への依頼書指示書を置いて、テリラスへと戻り、敷地のカフェの後ろに土台固め、銭湯の建物を設置し土台と融合させる。

更にトリスターと同じ様に、地下へ階段をつくり、洞窟風呂を男女分作成する。


そして、ラピスを呼ぶ。

「やあ、ラピス。また温泉お願いします!」

とシュークリームを差し出すと、


「判ったわよ。この間食べたフワフワの奴も欲しいわ!」

とラピス様w


「ああ、ホットケーキねw 了解!」


「じゃあ、先にやっとくから、準備しておいてよ?」

とラピスが温泉を出してくれた。 勿論排水の浄化と吸収処理も含めて。


「あ、そうそう、ここってテリラスって都市なんだけど、ラピスの泉の水のお陰で、住民たちが助かったんだよ。ありがとうね!」

と作業を終えたラピスに感謝を伝える。


すると、

「ふふふ、私の泉は凄いのよ? そんなの当然よw」

とペッタンな胸を張ってらっしゃる。


「本当にラピスの水って凄いよね、植物とかも凄い勢いで成長するし、マジで凄いよ!」


「でしょw もっと尊敬して良いのよ?」


「うん、勿論尊敬してるよ。」

とハチミツも献上する。


あ・・・ハチミツに飛び込んだwww

本当にハチミツすきだよなww


そしてベトベトな体のまま、ラピスは帰っていったw

(朝起きたら、蟻に運ばれてたりして)


カフェの横に温泉までの通路を石畳と玉砂利で作る。垣根の代わりに、少しせの高い木を目隠しに置く。


本当は京都風の竹林っぽくしたかったのだが、伸びすぎると怖いので、木にしておいた。

ああ、木は適当なのをゲートで林から取って来ましたよ。

下手に木の実とかを植えて、ラピスの泉の水とか与えると、大変な未来図しか浮かばないからねw



京都の竹林の道をイメージして、間接照明を使い、開店中は足元の石畳を照らす様にしてみる。


「うん、雰囲気出てるじゃん」

と満足気な海渡。


店舗側には、門を付けた社員宿舎用の入り口を作る。

つまり今までの通路を2つに右と左に別けた感じ。


温泉側の通路には、『ラピスの湯 回復効果、美肌効果』とカイト印を付けた看板を設置し、門の扉は、トレントの板で上を半円風にしてみた。



「ふっふっふ・・・みんなには、明日の朝、驚いてもらおうっとw」

悪戯っ子の悪い笑みを浮かべつつ、フェリンシアの待つ部屋へと戻るのであった。

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