第188話


昼食の時間となった。


ヨーコさんが調理部に連絡を入れてくれていたので、食事用の時空共有倉庫から増えた人数分の食事を取り出し、全員で昼食を取る。


食べながら、ヨーコさんに、

「そうそう、前から言っていたコーヒーの実が入手出来たんだよwww 後でジャック様に聞いて、適当な場所にコーヒー畑を作る予定なんだw」

と嬉し気に報告する。


すると、ヨーコさんも、眼鏡をキランと輝かせ、

「ほう、と言う事は、温泉上がりのコーヒーミルク計画が1歩前進すると言う事ですねw」

と微笑む。


「だなw 実際、どれくらいの年数で実が採れるまでになるかは判らないんだけどね。ワクワクするよね。」



そして、昼食後、ジャックさんに電話をする。

「もしもし、カイトです。昨日はありがとうございました。ちょっと耳よりな話があり、連絡しました。」


「ほう!昨日の今日で、何か進展があったのかい?」

とジャックさん。


「はい、昨日お話しした、コーヒーの実を入手出来たので、早速植える場所を探しているのですが、城壁の外に農園作ってしまって良いかをおたずねしたくて。」

と言うと、


「おお!それは良いニュースじゃないか! 場外なら、街道とかを潰さない限り、何処でも適した所を開拓して使ってくれて構わない。そこは君に進呈するよ。」

との事。


「ありがとうございます。また進捗を報告致しますね。」

と電話を切る。


ふっふっふ。


「と言う事で、これから、コーヒー栽培に適した場所を探索しに行きます。」

とみんなに報告して、店を後にする。


『ねえ、智恵子さん、コーヒー栽培に適した場所ってどこら辺だろうか?』


『そうですね・・・北門側だと、西北西の方向へ700m程行くと誰も使って無い、周囲にも人が居ない良い場所がありますね。』


『了解!』


フェリンシアと共に、北門を出て西北西へ道なき道を行く700m進んだ所で、

『ここがその場所ですね。草が生えてますから、一度焼き払った方が良いと思います。あと、植える際は、1個1個を離さないと、栄養の取り合いになるのでご注意下さい。』

と智恵子さん情報。


ふむ・・・焼き畑農業的な感じか。

指示に従って、400m×400mのエリア光魔法のシールドで囲み、フレイムサークルで焼く。


「何か火魔法は久々だなww」

と笑うと、


「そう言えば、久々に見る気がしますね」

とフェリンシア。


うん・・・だって、下手に火魔法を使うと、また避難勧告出されちゃうと大変だしね。

燃える物が沢山ある所では、やっぱり気を遣わないとね。



火が消えて、完全に灰になったのを確認し、シールドを解除する。

灰が土に混ざる様に、土魔法で軽くフンワリとシェイクする。


「取り合えず、柵を作っておくかな。」

と柵を作って、看板を立てる。

「さえじま商会 第一農場」っと。これで良し。



『智恵子さん、どれくらいの間隔で植えれば良いかな?』


『5mぐらい離れていれば、大丈夫じゃないかと思います。』

との事で、フェリンシアと、5m離れ、手分けして植えていく。


30分程で400m×400mのエリアを植え終える。


「さて、取り合えず、水でも撒くかな。」

と水魔法を出そうかと考えたのだが、ふとメイプルシロップを採った際の事を思い出し、ラピスの泉の水を撒いてみる事にした。


「贅沢だが、ラピスの泉の水を撒いてみようかな。」


「早く育って実をつけてね!」

と願いを込めてラピスの水を撒いた。



すると、地面が薄く光り、芽が出たwwwww


「何これww 流石ラピスの泉の水だなw」

と喜ぶ海渡と


「すっごーーい!」

と手を叩いてはしゃぐフェリンシア。


「なんか、カゴ1つ分も使ってないから、第二農場も作ろうか?」

とフェリンシアに言って、同じ作業を繰り返す。



結果、第6農場まで完成し、カゴ2つ分の実を植え終える。


最初の第1農場を確認すると、驚く事に、海渡の身長を遥かに越えて、フェリンシアの身長ぐらいまで育っていた。


「これさ、ここまで早いと、今年中には実が成るんじゃないかな?」

と海渡が呟く。


『はい、この成長スピードなら、あと1ヵ月もせずに、実が成ると思います。』

と智恵子さん。


「どうしよう、フェリンシア!! ヤバいよ!!! 何か今年中に収穫出来るかもって、知恵子さんが言ってるよww」

と言うと、


「凄いですね。じゃあ、上手くすると、年末には、コーヒーミルク飲めそうじゃないですかw」

とフェリンシア。


「あ、いや、まあそうなんだけど、これ、管理人必要だよね?」

と考える海渡。


「ちょっと、ジャックさんに連絡してみよう・・・」

と通信機を取り出して、ジャックさんに掛ける。


「あ、度々すみません、カイトです。ちょっとご相談がありまして・・・。今お時間大丈夫でしょうか?」

と聞くと、


「ああ、大丈夫だよ。何か困り事かい?」

とジャックさん。


「嬉しい悲鳴と申しますか、今、開拓して、植えたんですが、一気に育って来てまして、何か今年中には実が成りそうな勢いなんですよ。」

と海渡が言うと、


「え?早すぎない? 話しだとコーヒーって木だよね? 普通なら実が成るまでは、何年も掛かるんじゃないの?」

と言うので、


「ああ、早く育って欲しかったので、水の精霊王のラピスから貰ったラピスの泉の水を撒いたんですよ。そうしたら、一気に芽が出て、今(ここで木を確認する)

高さが1m70cmぐらいまで育ってまして・・・。

で、こちらも手一杯で、農業経験も無いので、何方か管理とかを任せられる方を何名かご紹介頂けないかと。」


すると、電話の向うでジャックさん大爆笑。

「いやぁ~ 君と居ると、退屈しなさそうだねwww 面白いねぇww ちょっと私も見て見たいから、今からそっちに行くよw 場所は何処?」

と言うので、北門から西北西に700m辺りと伝えると。


「OKすぐいくーー!」

と電話が切れた。


「ジャックさん、見に来るってw」

とフェリンシアに伝え、暇なので結構立派な管理小屋を作成した。農作業道具を入れる倉庫と休憩や事務を行うスペース。

エアコンと照明を付け、空気清浄機も取り付けた。トイレは勿論カイト印の物。


テーブルと椅子を出して、お茶を飲んで、フェリンシアにはご要望のシュークリームを出した。


馬の蹄の音が近付き、管理小屋から出ると、ジャックさんが騎士4名とやって来た。


「わざわざご足労頂き、申し訳ありません。」

と頭を下げる海渡。


後ろのコーヒー畑とその面積を眺め、唖然とする5名(ジャックさんを含む)。


「え?あの通信の後、これだけの物を一気にやっちゃったのかい? いや、木が生えるのもビックリだけど、これだけを一気に開拓した君もビックリだよ?」

とジャックさん。


「ああ、そこは、ちょちょんと魔法とか使いまして。」


「マジかいww しかも連絡貰って40分掛かってないぐらいで着いたつもりだけど、今2m越えてるねwww カイト君、ちょっと相談なのだが・・・」

とジャックさんが話を持ちかけてきたので、取り合えず、管理小屋へと案内し、椅子を5名分追加してお茶を出す。


「で、相談なのだが、どうだろうか?ここは君の直轄コーヒー畑と言う事で全然問題無いのだが、ここ以外にもコーヒー畑を作って貰って、そこを我々にやらせて貰えないだろうか?

販売は勿論カイト君の所でやって貰って、儲けをの30%を我々、70%をカイト君の商会で・・・と言うのはどうだろう?」

とジャックさん。


「じゃあ、3:7ではなく、儲けを折半。5:5で行きましょうよ。勿論そちらの人件費も含め全ての経費を折半で。そうしないと、そちらの方は十分な利益にならないでしょ?」

と提案してみると、


「それで良いのかい? そちらの取り分が少なくなるぞ?」

と心配されたが、


「ご心配頂いてありがとうございます。実はこれでもかなり儲かっておりまして・・・。十分に利益は出ておりますし、あまり一か所にお金が停滞すると、経済循環が悪くなるりますからね。

『お金は天下の廻り物』って言いますし、世の中に廻さないと死んだお金になっちゃいます。お金は世に廻ってこそですよ。」

と持論を語る。


「そこまでその若さで、考えるのか! 本当に驚くばかりだな。」

と驚く5人。


「私は、基本フェリンシアと2人で、美味しい物を食べたり、この世界の色んな所や物を見たりと、ノンビリ謳歌出来れば良い程度に思っておりまして。

冒険者でもあるので、食うには困らないし、そこそこの暮らしが出来ればそれで十分です。

まあ、今は商会の仲間も居ますので、彼らも同じ様に、明日の食事や今夜の寝床を心配せず、楽しく働き、不安無く暮らして貰いたいと思うのが追加されたぐらいです。」


更に付け加え、

「それに、何よりも!コーヒーを飲みたい!これが一番大きい理由ですね。あとは多少黒字になれば、満足ですよ。」

と締め括った。



「では、話の詰めはまたヨーコの方へお願い致します。 ああ、そちらの畑ですが、どれくらい追加しますか? 今の10倍ぐらいまで行けますけど、人手の問題ありますよね?」

と聞くと、


「そんなにまだ実が残ってるのか・・・。いきなり10倍は厳しいから、じゃあ、今の3倍・・・つまり12個追加して貰えるかな?」


「そうですね、一気に広げて、無いと思ってますが、失敗したら、目も当てられませんからねw じゃあ、明日の昼までには、ここの後ろに12個増やして置きますね。」

と答えた。


握手をして別れ、小屋を出ると、コーヒーの木に花が咲いていたwww


「さあ、テリラスの人の為にも、美味しいコーヒーを沢山作ってくれよーー」とコーヒーの木に声を掛ける海渡であった。

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