第170話


異世界1ヵ月と25日目。


いつもの様に日の出前に起き、朝の鍛錬を済ませ、地下工房に顔を出し、レジスターの生産ラインを見ると、まだ39台ぐらいだった。

完成した分だけ取り出して、アイテムボックスに収納する。


朝食までの時間、エレベーターの構想を練る。

しかし、今は強い味方である、魔動CPUがあるので、かなり色々と気が楽であるw


エレベータ本体(乗る場所)はTFGで作る事とし、レールをミスリル製にする事にした。


ミスリルのレールに各階の停止位置をマークし、エレベーター自体は重力制御で浮上したり降下するようにした。


更にエレベータ内は一定の1Gしか掛からない様に内部を制御する。

これによって、急激な停止でも内部は全く感じない。


各階の上下の呼び出しボタンは、魔動リンクでミスリルのレール経由でエレベータ本体の魔動CPUに情報を送る。


各階と内部には現在エレベーターが居る階数を表示すると・・・

後は、エレベータ内の指定階数ボタンか。


モックアップから3Dデータを取って、TFG形成マシンでエレベータ本体を作成する。

ドアは勿論スライドドア。

これは魔動モーターで開閉するようにした。


全てを魔動リンクで魔動CPUに接続し、水晶記憶体にプログラムを記載していく。

魔石は念のため3個にしておいた。


ミスリルレールを25mで2本作製し、センサー位置を5か所に設定して、床にレールを挿して、エレベーター本体をセットする。


先ずは、呼び出し・・・3階の位置まで飛行魔法で飛んで、下ボタンを押した。

驚くぐらい、瞬時に3階に駆け上がる本体。


「マジかwww これ普通なら、中の人死んでるG掛かってるよね?」

余りの早さに、実際に乗ってテストするかを一瞬躊躇するのだが・・・


「まあ、俺だし、いっかw さあ、逝ってみよう!」

と中に乗り、1階を押すと、1秒かからずにはドアが開いた。


「マジ? 作っておいてなんだけど・・・全くGも感じなかったな。うん流石俺。流石魔法の世界だなwww」

今度は5階を押すと扉が閉まって、1秒ぐらいで再度ドアが開いた。


「すっげーー!これ、歴史に残る製品なんじゃね?」

と自画自賛。


切りが良いので、ちょっと早目だけど気分良く、食堂へと向かった。


海渡が食堂に入ろうとした所に丁度フェリンシアも笑いながら来た。

「あら、珍しい。2人連続で早いなんてwww」


「あ、フェリンシア、聞いてよ!! 凄いの作っちゃったよw 魔動エレベーターって言うんだけどね。」

と食堂に入りながら、どういう物かを説明する。


「それは、凄いじゃないですか! 階段使うのがバカらしくなりそうですねw」

とフェリンシア。


「だよね。まあ、今の地下工房って深いから、まずはあそこに魔動エレベータを付けようかなw 棟梁とか驚いてくれそうだしww」

とニヤリと笑う海渡。


「面白そうですねw」

とフェリンシアもニヤリ。


朝食を食べ終わり、店舗の店員、カフェの店員と秘書部隊、各チーフを集め、昨夜作ったレジスターを説明してみた。


すると、ヨーコさんが、飛びついた!!

これがあれば、経理や集計が滅茶滅茶楽になるとの事。


店員側も、これは良い!計算にどうしても時間掛かるので、これで時間短縮出来るし、ミスも無くなると。


で、ヨーコさんや副店長に質問してみた。

「これさ、今は一応、全ての集計をこの本店の金庫でやっているんだけど、それで良いかな?」

と聞くと、それで問題無い。各支店に分散するよりやりやすいとの事。


「良かったw もう量産ライン動かしてたから。 じゃあ、この金庫本体に御釣りとかも必要だから、商会のお金入れちゃってくれる?金庫の上のディスプレイに現在の金額出るから。」

と金庫を渡せなかった。重そうだったので。


「重いから、マジックバッグで持って行ってねww」

と注意しておいた。


「で、レジだけど、さっき説明したような感じで大丈夫かな? 一応手順を紙に印刷してあるから、売り場の人は1人1枚持って行ってね。

決まった売り場で、決まった商品分類ボタンを押して、やれば、何処のレジか判るし。」

と言う事で、店から、現金は撤去して全部を金庫に入れ、各売り場にレジスターを設置していく。


ロデム商会に昨日売った分を3階の事務所に設置したレジで入力し、現金と御釣りが出て、印刷までを見せてみた。


取り囲んだ全員が、

「「「「おおーーー!」」」」

と感嘆の声を上げる。


時間は、御前8時10分、まだギリ間に合いそうなので、地下からレジスターを補給して、急いでゲートで王都支店へと飛び、オスカーさんと、店員を集め、同様の事を説明する。


すると、こちらも大絶賛。

印刷した取説も渡し、ドンドン設置していく。


王都の売り上げを全額受け取り、3階事務所に設置したレジスターの入金ボタンで全額をトリスターの金庫へと保管した。

ちなみに、王都の売り上げはエグイ金額となってましたw


ついでに、オスカーさんと話をしたが、王都支店の店長は、アンドレットさんに任せるつもりとの事で、了承した。


元々店をやっていた人で、冤罪さえなければ、そこそこ順調だったらしい。

今回の釈放で、離れ離れになっていた奥さんと子供と再会出来て、今は一緒に暮らしているそうだ。

良かったw


笑ったのは、お子さんが、5歳という・・・。


アンドレットさん曰く

「いやぁ~ カイト様はうちの子とは全く同じ歳に思えないのですよ。話をしたりすると、寧ろ自分より年上にさえ思えてしまうんですよね。不思議です。」

それを聞いたオスカーさんは、苦笑しながら、


「やっぱり? 俺も同じ事をよく思うよ。もしかしてカイト様は、5歳児の体に見えるけど、エルフとかの長寿種で、実際は年上なんじゃないのかとねw」

更に、

「しかも、大人でさえ舌を巻く、あの発想や開発力、それに騎士団の団長も魔法師団の団長も寄せ付けぬ程の戦闘力・・・もはや人を越えているよね。

しかし、普通ならそこで支配欲とか地位名誉に走って、増長しそうな所だけど、全くそれが無い。

商会だって、正直もの凄い収益上げているんだけど、贅沢をする訳でも、お金を独り占めする訳でもなく、どうやってそれを還元するかを考えるんだぜ? 『お金はちゃんと世間に廻さないとダメだ』ってね。

経済の循環まで考える5歳児なんて、ありえねぇって思うよねw

そういう意味でも、カイト様は信頼し尊敬出来る人として、本気で付いて行きたいと思ってるんだ。」

と締めくくる。


まあ、これらは海渡が居ない場所での話なので、海渡本人は知らないのだが。



一応、この世界の人族の常識では、この王国では、大体男性は18歳~26歳ぐらいで結婚している。

女性は16歳~24歳ぐらいまで。

男女どちらもそれ以上だと行き遅れ判定されるらしい。

『じゃあ、俺って行き遅れ年齢じゃん・・・』と海渡は内心思った。


「まあこの世界なら、体さえ成長したら、俺も結婚出来るかなぁ?」等と呑気に考える海渡であった。


ちなみに、この王国では、共稼ぎの夫婦は多い。


もっとも、子供が小さい内は、どうしても母親が働けない事が多いのだが。

子供が7歳以上になれば、働きに出る事が多い。


小さい子が居ても、上に10歳ぐらいの子が居れば、弟妹の面倒をみさせて、働きに出るのが普通である。


これは、収入面でそうしないと食べていけない・・・と言う悲しい話だが。


また、男性を相手にする特殊な職業や、特殊なスキルを活かす仕事以外では、女性の収入は低かったりする。


通常、男性の収入の80%と低い。

まあ、理由はこの世界の仕事の殆どに力仕事が混じっている事が原因らしい。

なので、身体強化と言う概念さえ無い、一般庶民は、Lvも低く、筋力も低いままと言う事だ。


そんな中で、男女差なく、他と比べ物にならない位に、給料や労働条件が良い、うちの商会は、超優良企業と言う事らしい。



そして、レジスターの設置を終えた海渡は、またコッソリとゲートで戻って行ったのだった。

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