第146話

異世界1ヵ月と16日目。王都3日目。


朝やはり日の出前に目覚め、軽く朝の鍛錬を済ませ、朝食までフェリンシアとゆっくり過ごす。

朝食に呼ばれ、アルマーさん達と話をしながら食事を取る。


今日の予定は、朝10時に教会本部、午後から王城となっているので、十分に時間がある。


ヨーコさんに、昨日頼んであった借金奴隷の話を聞くと、3名は確保し、契約金で借金奴隷で無くなったので、全く問題無い状態との事だった。

一応、既に3人には通信機を渡しておいたとの事でGJと親指を立てる。


と言う事で、まだ3時間程あるので、オスカーさんと、ヨーコさんを連れて、一度新地下工房へゲートで繋いで潜らせる。

出た空間が見た事ない巨大な地下空間だったので、驚かれたが、外観が出来上がった3つの建物を見て、更に驚かれた。


で、棟梁と職人さんに、店舗→宿舎→カフェの順番で、突貫工事で仕上げて欲しいと連絡してもらい、ダスティンさんに、棟梁達を地下3階の工房に案内するように、お願いする。


そして、9時には王都へと戻って来た。

早くヨーコさんの部下を増やさないと、いけないな・・・。

せっかくの美人さんが、連日のハードなスケジュールで草臥れている気がする。

ハチミツ水を4人で飲んで、なんとか乗り切ろうと気合を入れて、早目に教会本部へと向かう。


町を散策しつつ、教会へ辿り着くと、オスカーさんも、ヨーコさんも、王都の教会は初めてだったらしく、その大きさと荘厳さに驚いていた。


ちょっと早かったが、シスターにお願いし、司祭長と挨拶を交わす。

「セイジさん、おはようございます。こちらの2名が当方の支配人のオスカーと秘書長のヨーコです。宜しくお願いします。」と2人を紹介する。

2人もそれぞれ挨拶を済ませ、孤児院の方へと移動する。


そして、15名が待つ孤児院の庭に着き、15名を前に、海渡から挨拶をする。

「初めまして、カイトと申します。こちらはパートナーのフェリンシア。私は皆さんと同じ孤児でして、縁あって現在『さえじま商会』と言う商会をトリスターで立ち上げ、今回王都支店やその他の都市にも店舗を持つ事になりました。

みなさんよりは、年下となりますが、実際の指示やなんかは、こちらの支配人である、オスカーと、秘書長であるヨーコが出すと思います。皆さんには、王都支店で働いて貰うつもりでおります。

場所は、陛下から頂いた、アレスター商会の店舗のあった場所です。近々に店舗の裏に、従業員宿舎を立てる予定になっております。時間はもうそれ程掛かりませんので、おそらく皆さまが働き始める時には、新しい店舗と宿舎が揃っていると思います。開店は約1週間後を目指しております。

宿舎では、トリスターの本店と同じく、食堂と風呂も完備しております。

あ、もしかすると、一度研修にトリスター支店まで2~3日来て頂く可能性もあります。トリスターまでは片道2時間半です。

労働条件等はこちらの2人からお聞きください。何か質問等あれば、何でもお聞きください。」

と説明した。


これまで、散々働き口を探していたが、まともに働ける所が見つからず、落ち込んでいた少年少女達だったが、降って湧いた話に喜び半分、不安半分といった感じだ。

そこで、オスカーさんは、まず、『さえじま商会』で取り扱っている商品を見せる事にしたようだ。

次々とマジックバッグから出て来る商品に、興味深々の少年少女。ついでに司祭長とシスターも。

あと、極めつけは、先日飛んで来た飛行機も、海渡が作った魔道具と聞き、興奮はMax状態となる。


そして、給料面はヨーコさんから、説明があり、非常に従業員に対しては良い商会である事。

トリスターの孤児院出身の子供達も、日々活き活きとトリスター本店で働いている事等を説明していた。


そして、全員が「「「「お願いしいます!」」」」と言う事で、無事契約となった。


全員に契約金を渡し、通信機も支給し、必要な連絡事項等は、随時進行状況を見てする事を話していた。


ふぅ~、良かったよ! 女神様ありがとうございます。と心の中で感謝の言葉を告げる海渡であった。



まだちょっと、昼には早かったが、せっかくなので、BBQを庭でやる事にした。


竈を土魔法で作り、石の鉄板を置き、オークステーキや、スイート・ボアの焼肉、柔らかいパンや、ミネストローネスープ、ポテトサラダ等を出して、孤児院の子供らも一緒にワイワイと食べる。

オークステーキを食べて感動でプルプル震える子、スイート・ボアの焼肉で絶叫する子、ポテトサラダに目の色を変える子、様々だったが、全員が本当に心から喜んでくれていた。

それらの料理が海渡の作品と知り、更に驚く全員。


「ね、驚きますよねww 更にこのオークとかって、海渡様が倒した奴ですし、もっと驚きますよねぇwww」

とオスカーさんが言うと、本当に驚いていた。


「ああ、俺とフェリンシアは冒険者でもあるからね。」

と一応補足した。


少年らからは、若干キラキラした目で見られた。

「まあ、集落が魔物に襲われて、親も大人も全員亡くなり、俺とフェリンシアだけ取り残されたから、生きて行くにはしょうがなかったんだよ。」

と言うと、少し悲しい顔をされた。


みんなが満腹になった様なので、ダメ押しのプリンを出しす。

「これは、今度オープンするカフェの方で出す商品のプリンって言う食べ物です。」

とみんなに渡すと・・・一口掬って口に入れると、絶賛していた。


「これもカイト様の作品なんですよ?」

とヨーコさんが言うと、女の子の目がキラキラしていたw


「これらは全部、トリスター支店で製造して、王国全土の支店に配布する予定だから、もし調理スキルがあって、スイーツ部隊に入りたい人が居たら、トリスターに勤務してもらう可能性もあるけどね。そこら辺は本人の希望次第なだ・・・」

と補足した。


そろそろ、12時半に近くなったので、片付けをして、

「ではみなさん、これから色々力を貸して下さいね。」

と頭を下げて、王城へと向かった。


午後1時に王城の城門に着き、門番の衛兵に名前を告げると、敬礼をして、

「陛下から聞いております。馬車を用意させますので、暫しお待ち下さい。」

と、1人の衛兵が連絡に走り、暫し門の外で待った。


「うーん、もしかして、王城に徒歩で来るのは、失敗だった?」

とオスカーさんに聞くと、そう言えば王城ですものね・・・とオスカーさんも領主館のイメージで居た事が判明w


「まあ、良いかw」

と笑ったw

ヨーコさんは、気付いて引き攣っていた・・・。


馬車が到着し、それに乗って王城内部へと案内される。


一足飛びに飛行機を作ってしまった海渡であったが、よくよく考えると、まずは自動車を作るべきだったかな?と考えていた。

普段は買い食い等が日課だったので、散策しながら町を歩くのが楽しみだったし、全く思いつかなかったな・・・と苦笑した。




王宮に入り、大広間へと案内される。

すると、大臣のワリスさんがいて、その前には、153名の男女がズラリと並んでいた。

どうやら、冤罪から無罪放免となった人達のようだ。

大臣曰く、どうしても恩人にお礼が言いたいと、お願いされ、こうして待っていたらしい。


みんなから、口々にお礼を言われ、握手をされて一人ひとり大広間を出ていった。

そして、最後に指名した7名が残り、彼らからもお礼を言われた。


女性2名(ドリスさん、ステーシアさん)、男性5名(アンドレットさん、デニスさん、ランカスターさん、ドッチさん、トーラスさん)、

みんなかなり草臥れた状態だったが、顔は明るく、名誉と身分が回復され、晴れ晴れとしていた。


海渡が、今回の経緯や商会で店長候補として働いて欲しい事を打診すると、全員が1も2も無く、「「「「宜しくお願いします」」」」と言ってくれた。


これで、10名の店長候補が揃った。

契約等の内容や商品の説明は明日行うとし、まずは、午後2時に、旧アレスター商会の店舗に集まって貰う事にして、通信機をそれぞれに渡し、色々あるだろうからと金貨1枚を渡した。


「では、色々ありがとうございました!」

とUターンして帰ろうとすると、大臣からガシッと両肩を後ろから捕まれ、


「いやいや、陛下が首を長くしてお待ちですから・・・」

と連れ去られた・・・。


「じゃあ、私達は、先に戻って色々準備しておきますねー」

とオスカーさんとヨーコさんは、そそくさと帰っていった・・・。


うーー、裏切り者ーーー!! と心で叫んだが、気持ちは判る。


まあ、フェリンシアは傍に残ってくれたので、良しとしよう・・・。

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