第87話

 異世界26日目。


 朝の鍛錬と、朝食を終え、早々に館を出発。


 途中の屋台で色々買って、久々に敷地へと足を踏み入れる。


 8時台と言うのに、既に大工さんや家具職人さんが所狭しと動いている。

「おはようございます。」

とみんなに声をかけると、一斉に全員振り向く。


 中に混じっていたオスカーさんが一早く俺を発見してくれて、駆け寄って来る。

「おお、お帰りなさい。ご無事で何よりです。」


「ありがとうございます。昨日の夕方帰って来たのですが、報告の方を優先したので、こちらには顔を出せませんでした。」

と返す。


「えーっと、皆さま、こちらのカイト様がこちらの商会のオーナーとなります。」

と紹介してくれた。


「初めまして、冴島商会のオーナーの海渡ともうします。 まだ歳は幼いので、頼りなく感じるかと思いますが、この町の皆様に愛され、喜んで頂ける様な商会にしたいと思っております。

 何卒宜しくお願い致します。」

と頭を下げた。


 すると、

「おい、坊主がこれを一晩で建てたって、ホントか?」

と厳つい大工の棟梁風の人が聞く。


「はい、一応、魔法が使えまして、トレントとかの材料もあったので、熱中してたら、1日で何とか形になりました。プロから見ると、可笑しな部分もあるかとは思いますが・・・」

と答えると。


「ガハハハハ!」と大笑いしながら、「いやいや、この作りはスゲーぞ! こっちも彼方此方見せて貰って、勉強させて貰ってんだよ。」

と言ってくれた。


「こんな状況なので、なるべく早く店舗の方は早めにオープンしたいと考えてます。ご尽力宜しくお願い致します。あと、本日の午後に領主様が観たいと仰っておりますので、宜しくお願い致します。」

と伝えた。


 そして、取り合えず、屋敷の方へオスカーさんと向かう。


 応接室へ通され、4人で打ち合わせを開始する。 うん、居ない間にソファーとか調度類とか揃えてくれてたんだね。


「おかえりなさい、お待ちしておりました。」

とヨーコさん。


 で、早速ヨーコさんの進捗報告を受ける。


 ・エンジ君達は、明日こちらに合流する予定。

  園長やシスターへは報告済みで許可も取った。

 ・テントの裁縫の人手は現在20名確保し、屋敷のホールで作業を進めている。

  人員は現在増やすようにしている。

 ・既に30張程は縫いあがってるので、確認して欲しい。

 ・ペグは現在鍛冶師に依頼しているが、忙しいらしく、受けてくれる所が無い。

 ・支柱に関しては、店舗の方をやっている職人さんに、取り合えず10本程試作し

  てもらった。

 ・料理スキルを持つ女性を雇った。6歳の子持ちでご主人に先立たれた人だけど

  良いか? 後で見てくれ。 1人だと足りないので、あと1,2は料理人が必要。

 ・エンジ君らの中に料理スキルを持った子が2名居たので、そちらを当面は料理の

  方にまわす予定。行く行くはカフェ側で使う。

 ・メイド長になる人を1人雇った。明日合流予定。

  エンジ君達から2人をメイドにする予定。あとは避難民の子供を2人雇う予定。

 ・ベッドは本日使用人分が23床、来週更に17床入る予定。2階のキングサイズ等の

  マットも本日入る予定。


 オスカーさんからは、


 ・テントの生地を確保したが、取り合えず100張分しか揃わなかった。後で生地を

  確認してくれ。

 ・テントの出入り口用の留め具が揃わない。 意見を聞きたい。

 ・表部分の塀が邪魔で工事がし難い、どうにかしてくれ。

 ・店の内装を確認してくれ。

 ・ショーケースのフレームが出来ている。確認してくれ。

 ・エスカレーターに木の手摺りを作った。確認してくれ。

 ・各所のドアを作ったので確認してくれ。

 ・塩や砂糖の販売時の壺や麻袋を用意した。確認してくれ。

 ・店の看板はどうするのか?

 ・ストックルームの棚を作ったので確認してくれ。

 ・店の照明器具はどうするのか?

 ・店員の衣装は制服を支給との事だが、デザインや生地を決めてくれ。


 と言う事だった。

 

了解・・・多いな。


 まずは、急務で効率を下げてしまっている店舗から廻ろう。


 先ずは、塀だな。

 店の横1mを開けた状態まで、塀をサクッと土魔法で消した。

 店との落差は高さ20cmなのでスロープにして床と同じ感じに固めた。

 これで、通りから丸見え状態になちゃった・・・。

 背後の通りから、何やら強烈な視線を感じるけど・・・


 店の中に入り、内装の確認をする。基本白の壁で、ショーケースのフレームも問題ない。ちゃんとガラスが嵌まる様になっている。


 窓のは窓枠を用意してあったので、ガラスはこちらで作るから大丈夫。

 ドアも落ち着いた木の色合いで、デザインも素晴らしい。

 トイレも確認した。まだ便器とかが無い状態だが、各個室も問題ない。男性用と女性用に分けて貰っている。(この世界では分かれてない)


 ストックルームの棚もこれで問題なし。


 ストックルームの棚に置いてあった、販売時の壺と麻袋も確認し、これで物は良いが、横に商会のロゴマークを入れる事を提案。マークを入れる魔道具はこちらで作るので、心配しないで良い。


 ドンドン追加で仕入れてくれ と指示。


 スタッフルームに大きなテーブルと、それぞれが休憩でも使える椅子を追加してもらう事にした。


 手摺りを確認した。

 うん、これで良いんじゃないかな。無いと危ないもんね。 同じように他の階段にもつけて貰う事にした。


 エスカレーターも問題無いが、動力部分が丸見えになってるので、そこは隠す為の壁を追加でそっと作った。

 点検用のドアをここに付けて貰う事にした。


 店の照明器具はこちらで考えがあるので、取り合えず、待て と。

 店舗の方は、あと大体2日で完了するとの事。


 これで、店側はOK。

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