第46話

 気が付くと、ノックの音がして、食事の準備が出来た事をメイドが知らせに来ていた。

 どうやら、フェリンシアを待っている間に眠っていたらしい。


「海渡起きたんですね。気持ち良さそうに寝てたから、そのままそっとして置きました。」

と可愛い白いワンピースを着たフェリンシア。


「あ、ごめんね。待ってる間に寝ちゃったみたい。そのワンピース、可愛いね!とっても似合ってるよ!」


「うふふ、ありがとう。初めて着るから、何となく落ち着かなくて・・・」

と頬を赤くする。


「お二人とも、夕食の準備が出来ましたので、食堂までお越し下さい。」


「あ、すいません。」

と慌てて、メイドさんに着いていく。


 食堂に入ると、既にアルマーさんと、アルマーさんに似た18歳ぐらいの青年と、何故かドレスを着たリーファさん、サイファさん、そして7歳ぐらいの可愛い女の子が、既に席に着いていた。


「おお、来たか! 紹介しよう。 こいつが、私の長男でテルマー、こちらの双子が長女リーファと次女サイファ、こっちが三女のララーだ。」


「え!?? リーファさんとサイファさんって、領主様のご令嬢だったんですか!??」


 ちょっと、ビックリしていると・・・2人は、うふふ と悪戯っ子の様な笑みを漏らしていた。


「ん? もう既に合っていたのか? まあいい。食事が冷めないうちに食べ始めよう。さあ、席に座ってくれたまえ。」


「では、お言葉に甘えさせて頂きます。 あ、でも私もフェリンシアも、こういう場の食事のマナーを存知ておりません。お見苦しいかも知れませんが、宜しいでしょうか?」


 ヤバいヤバい!! 特にフェリンシアがヤバい!

 やっとフォークをマスターしたばかりのフェリンシアが失敗する予感しかしない。


「ん? ああそうか。心配するな。ここは我が家の家族だけしかおらん。最悪手掴みでも構わんぞ!」


『フェリンシア、ごめん。食事のマナーまで考えが回らなかった。出来るだけ、俺の食べ方を見て真似してくれると助かる。』


『うん、判った。人間って結構大変ですね。でも人間の中で過ごす為には必要だから、頑張って覚えますね。』


『そういってくれると助かるよ。今後は色々暇を見て教えるからね。』


「すみません、出来るだけ不快にならないように、努力します。」


 そして、食事が始まった。

 給仕の人が、スープから、前菜、メインディッシュとパン皿を置いていってくれる。

 今の所、フェリンシアも何とかチラチラこっちを確認しつつ、不器用ではあるが同じように食べている。偉いなフェリンシア。


 時折、アルマーの質問や、テルマー君の質問や、ララーからの質問が飛んで来る。それに答えつつ、やっと一通りお食事が終わった。

 まあ、フェリンシアにとっては、おやつ程度の量だったけど、どれも美味しい食事だった。

 俺はというと、色々出て来た料理に対し、食材や味付けに対しての質問をしていた。


「しかし、カイト君はあれだなぁ、調理に対しても色々知識を持っているようだなぁ。いやぁその歳で・・・君には色々と驚くばかりだよ。」

とアルマーさん。


「森の中で育ったせいで、他に楽しみが少なくて、どうしても食事が楽しみで、色々と母に聞いたりしてました。なので、こちらに出て来る事に決めたのも、1つは食事や食材に興味ありまして。」


「そうか、では、あとで料理長に話して聞いてみるが良い。他にも知りたい事があったら、誰かに聞いてもらって構わんからな。あと、この後、少し3人で話をしたいのだが、良いかな?」


「はい、色々とご親切にして頂き、本当にありがとうございます。」


「あら・・・お父様だけズルいですわ! 私達もお二人とお話ししたいのに・・・」

とリーファさん。


「私ももっとお話ししたいです・・・」

とララーさん。


「うむ。じゃあ今日は彼らも疲れているだろうから、明日でもお話ししたら、どうだ?」


「そうですわね。では、明日楽しみにしております。サイファもララーも一緒にね。」

と・・・。


 で、アルマーさんに引き連れられて、書斎の方へとやってきました。


 向き合って、ソファーに座り、

「さてと、カイト君、フェリンシアさん、疲れている所を申し訳ないが、少し話ておきたい事があったので、無理に来て貰った。」

と改まるアルマーさん。


「はい」と海渡。


「まず、ハチミツだた、あれは貰う訳にはいかない・・・。

 相応の対価を支払いたいと思うのだが、そこは了承してくれ。市場で出回るハチミツ自体が高価だが、それはフォレスト・ビーの様な上位種の物ではなく、下位種のハチミツが少々出回る程度だ。

 フォレスト・ビーのハチミツなど、私はかつて、市場で出回ったと言う話は聞いた事が無い。

 昔話にフォレスト・ビーのハチミツが出て来るのだが、伝説に近い物と認識されてるんだよ。

 だから、これだけの量をいきなり渡され、予想外の事に本当に驚いてしまった。一応、部下の鑑定スキル持ちに確認させたが、間違いなくフォレスト・ビーのハチミツと興奮されたのだよ。」


 なるほど、そういう事だったのか。知らぬ間に、やらかしてしまっていたらしいな・・・。


「でだ、率直に聞くのだが、今回ギルドに買取に出そうとしてた素材だが、このハチミツも含まれていたのかな? あと他にはどんな物がある? 内容によっては、迂闊に第三者に知られると、君らが犯罪に巻き込まれないとも限らない。

 そういう事を心配して、少しこの国での常識の範囲を教えておいた方が良いかと思ったのだ。」


 そこで、一瞬で色々総合して考えた。異世界から女神ジーナ様によって転移して来た事や中身が27歳と言う事は隠すにしても、アイテムボックに死蔵している素材で、売却を考えている物はリストアップした方が良いんじゃないかと。


「色々ご心配して頂いて、ありがとうございます。

 ハチミツですが、同じ物が沢山あるので、魔物の死骸と一緒に売る事を考えていました。どれくらいの価値があるとか、この町で暮らすのに、1ヵ月でどれくらいの金額が必要かも判らなかったので、ある程度聞きながら出す予定でおりました。先に聞いておいて良かったです。」


「やはりか・・・。でどんな物がどれだけあるのか?」


 そこで、リストアップしてみました。

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