第38話


 3時間程南へ進み、昼食休憩を挟んだ。


 昼食メニューは、昨日仕留めたフルーツ・キャタピラのステーキと、いつものオークのステーキ。

 最初はおっかなビックリで食べてたフルーツ・キャタピラの肉だけど、美味しさに後押しされて、芋虫形状に対する嫌悪感が消えてしまった。


 見た目がアレな感じのフルーツ・キャタピラの肉を切り分け外観が判らなくなると、普通にサシの入った和牛に見える。


 石の鉄板で、厚さ2cmに切った、フルーツ・キャタピラの肉を塩コショウで焼くと、油と肉の焦げる良い匂いが漂ってくる。


 最初は見た目で、退いていたフェリンシアだったが、匂いに釣られ、涎を垂らし、尻尾がブンブン振られている。


 更に切り分けたステーキと、鉄板で焼いたジャガイモのスライスを取り分け、「いただきます」。


 先にガブっと一切れ食べたフェリンシアが「おいいしーーー!」と絶叫。


 俺も、遅れて一口食べると、ワイバーンとはまた一味違う美味しさ。


 どっちかと言うと、高級カルビ系のコッテリ感もあるが、肉の味わいの中に、フルーティな香りと仄かな甘み。


「うん、美味いな! これ、シャブシャブとかすき焼きにしても美味しいんじゃないかな?」


「え?何々? シャブシャブとかすき焼きってどんなお料理?」とフェリンシアが食いついて来る。


 この子、本当に食べるの大好きだなww 軽く料理の説明をして、まだ全然材料が足りない事を伝えると、少し落ち込んでいた。


「でも食材とか調味料とか足りない物をこれから揃える方向で考えているから、揃ったら、一緒に食べようね!」

と言うと少し復活した。


 そして、食後のお茶の時に、

「いよいよ、お待ちかねの、ハチミツ試食タイムです。」

とハチミツを深めの皿に出してみた。


 言い終わる前に、フェリンシアがフライングで舐めてたw


「甘ーーい、美味しいーーー!」と蕩ける様な声のフェリンシア。


 俺も、スプーンで掬って、口の中へ。


「!!!!!」


 おーーーー! 何この上品な甘さと香り。元の世界で食べたハチミツとは格段に違う。

 まあ、甘いからこればっかりはキツイけど、でもパンケーキに掛けると滅茶滅茶合いそう。

 スプーンに残った余りを、紅茶に混ぜて飲むと、紅茶が最高級紅茶になったよ。

 気のせいか、さっきから、体がポカポカしてきて、体に力が溢れるような感じがする。


 気になるので、皿に残ったハチミツを鑑定すると、

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 フォレスト・ビーのハチミツ

 説明:少量を摂取するだけで、体力、魔力の回復効果がある、マンゴーの果汁を

    成分に含んだ最高級品。殺菌効果も優れており、このハチミツに付け込む

    と、日持ちしたりもする。

    非常に希少なハチミツで、市場に出回る事はない。

    このハチミツは激ヤバっすよ!

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 と出てきました。

何だよこの最後の文章。 つまりそれだけヤバいレアなハチミツって事か。


 ふむ・・・。これ、81壺あるんだよね。1壺が大体ドラム缶サイズだから、200リットルで、81壺だから、16200リットルあるのか。

 これ、ちょっと売るだけで、凄い金額になりそうな予感。


 なんか、最後のハチミツで一気に元気フルチャージになったので、夕方まで更に進む事にする。何度か、魔物に遭遇するが、サクッと撃退して、アイテムボックスの肥やしになってます。


 そして、出てきましたよ、異世界の魔物の定番の中ボス?


 4つの赤い点を確認すると、

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 種別:ミノタウロス

 Lv:52

 説明:2足歩行の牛の魔物。

   性格は獰猛で好戦的で1匹1匹が非常に強い。武器大剣や棍棒や角を使用して

   戦う。

   表皮が固く、なかなか刃が通らない。プライドが高く、知能も高い。

   肉が非常に美味しい。

   肉、角、皮など、全てが希少とされ高値で取引される。

   滅多に出回る事は無い。

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 種別:ミノタウロス

 Lv:55

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 種別:ミノタウロス

 Lv:57

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 種別:ミノタウロス

 Lv:61

 ~~~

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 美味しいのか・・・ミノタウロス。

 これは狩らねば!!!


「フェリンシア、ミノタウロスが4匹居るよ。美味しいらしいから、ヤル方向で良い?」


「勿論!!!!」

と涎を垂らす、ブレないフェリンシア。


 まだこちらには、気付いてないな。

 風下から回り込んで、アイスカッターで首を狙ってみよう。あとは出たとこ勝負の成り行き次第で良いか。

 出来るだけ、綺麗に狩らないと、食材がダメになるからな・・・。


 攻撃ポイントに着いて、実物を見ると、見事に牛を凛々しくした様な顔だけど、体はどちらかと言うと、マッチョなボディービルダーの様な体。

 しかも、身長が5mぐらいの巨体。 あれは流石に格闘戦は無理だな・・・。


 一番Lvの高い個体を鑑定してみると、

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 種別:ミノタウロス

 Lv:61

 状態:正常

 HP:31571/33821

 MP:11677/12864

 筋力:68244

 俊敏:10885

 武術:格闘術Lv10 剣術Lv10

 魔法:火Lv1

 スキル:身体強化Lv8 嗅覚強化Lv2 聴覚強化Lv2 気配察知Lv2 耐物理攻撃

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 何?筋力すげーー! あと身体強化も凄いよ! これは魔法による遠方射撃が正解だろう。

 大きくなったら、剣術でも挑んでみたい。


 3Dマッピングでロックし、皮膚が固いらしいので魔力を多めにして、超高速で、切れ味が増すように刃が回転するような、ミートスライサーの刃をイメージして構築していく。


 よし、アイスカッター改、発射!


 発射とほぼ同時に「ズバババン」と着弾音が前方から響くが、標的辺りが土煙で見えない。


 しかし、マップからは赤い点が消えているので、無事に仕留めたみたいだ。

 ミノタウロスの所まで近づき、死骸と頭部を収納。

 首の切断面は、鏡面の様な綺麗な切り口だった。

 そして、ミノタウロスの倒れた後ろの地面には、とても深い溝が出来ていた。

 もう少し加減を考えないと、水系の魔法は、加護の影響で、かなりヤバい。



「ミノタウロスのお肉楽しみですね!」とフェリンシア。


「うん、でも解体してると時間食うから、後で良いかな? 先へ進もう」


 再度進み始めて2時間程経過した頃、

『海渡さん、西に200mの崖の浅い洞窟で岩塩発見しました!』

と知恵子さんのご報告。


『フェリンシア、ちょっとストップ!! 知恵子さんが岩塩見つけてくれたから、採取して行こう。』


『了解です。』


 すぐに西へ200m向かうと、崖が見えてくる。

 地面から3mぐらいの高さの所に洞窟がある・・・どうやら、この中らしい。


 軽くジャンプして洞窟に入ると、入り口から2m以降は中は薄ピンク色の岩塩の洞窟だった。


 土魔法で、岩塩のブロックを切り出して収納していく。流れ作業で30分もすると、アイテムボックスには岩塩ブロックが3トン程貯まっていた。


 1トン/10分か、もうちょっと切り出すか。そして更に30分切り出し、合計6トン。まあこれだけあれば、当分塩に困る事はないだろう。


『知恵子さん、ありがとう。また何か発見したら、教えてね。』


『了解しました。』


 そう言えば、フェリンシアが大人しいな・・・と見ると、入り口付近で丸くなって寝ていた。


「フェリンシア、お待たせ! 起きて!! フェリンシア!!」


「あ、海渡、おはよう・・・」と寝ぼけてる。


 フェリンシアに深めの皿、自分用にコップを出して、水を入れて飲みながら、フェリンシアが覚醒するのを待つ。

 そして出発した。


 それから40分程進んだら、小さな澤を発見し、今夜はこの傍で一泊する事とした。


 1体のミノタウロスを綺麗に血抜きし、解体したが、慣れてきたのか、以前より解体作業が早くなったようだ。


 夕食には、薄目に切ったミノタウロスの肉をさっき採った岩塩で食べてみた。ミノタウロスの肉は赤身で美味しい。

 柔らかく、噛むと肉汁が零れてくる。これで作るハンバーグも食べてみたいな。卵とパン粉もGetしないとな・・・。

 確かに、ミノタウロスの肉の味にも驚いたのだが、更に驚いたのは、さっきの岩塩。

 女神様のくれた塩とで食べ比べしたのだが・・・女神様には申し訳ないが、岩塩で食べると、味に深みが出る感じ。

 凄いな、この岩塩。また足りなくなったら、取りにこなきゃ!!

 そうだ、塩と言えば・・・ちらりと澤を眺めつつ、もう暫く魚を食べてないなぁ・・・


 塩焼き・・・イワナとかヤマメとかを塩焼きにして、大根おろしと一緒に食べたいなぁ・・・と思うのだった。

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