第15話 試合開始

選手を紹介するアナウンスが会場に響く。

「赤、京仙院大学大将、北村選手」

会場から黄色い声援が飛び、テレビカメラが北村を追う。

『こいつだけには負けたくない』

以前完敗を喫したことに加え、今度は嫉妬の炎が私の心の中でメラメラと音を立てて激しく燃え始めた。

「白、冷泉堂大学大将、武田選手」

冷泉堂大学陣営から野太い声が上がる。

『やめろ、バカ!あいつとの格差が際立つ』

私は心底悔しかった。


しかし、冷泉堂大学陣営を振り返った瞬間、私の雑念は消え去った。メンバーたちは肩を組み、真剣な眼差しを私に送っていた。まるで自分も戦っているかのように。


そう、私たち全員が戦っていた。

そんななか、佐々木由紀だけは下を向き、手を合わせて祈りを捧げていた。

『私には仲間がいる。大事な仲間が。そして、愛する人が』

私は冬の青空を見上げ、息を大きく吐いた。


私と北村は礼を交わすと、開始線の一メートル手前まで移動し、蹲踞した。

「はじめ!」

審判が団体戦の勝者を決める決戦の開始を告げた。


再び会場が沸く。事前に用意されていた椅子は全て埋まり、立ち見の観客も大勢いる。京都最強の大学を決める一戦を大勢が固唾をのんで見守っている。


私は自分の緊張をほぐすため、中段に構えた瞬間に攻めた。電光石火の面打ちだ。しかし、百戦錬磨の北村は私の先制攻撃を読み切っていたかのように、かるく竹刀で私の攻撃をいなした。すぐに北村の反撃が始まる。北村の攻撃は一つ一つに切れがある。そして、矢継ぎ早に攻撃が出てくる。しかも、読むのが難しい。そのため、常にぎりぎりの守備になってしまう。私は攻める気はあるものの、守勢に回らざるを得なかった。


鍔迫り合いになった。力比べはほぼ互角であった。

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