修羅

苦労を積んだ人間が辿る道は2パターンである。

経験を活かして自分で道を切り拓いていける人と、背景や環境に縛られて前に進むことが困難な人。

私は後者である。


見つかったあとも、窃盗の指示は続いた。

多岐にわたる犯罪行為。同級生が、何の翳りもなく振舞っていることが、私にはまぶしく、苦しかった。

親は、給食費は支払ってくれていたが、修学旅行は積み立てを拒否したため参加することができなかった。友達がいないからまあよかった、と思いたかったが、親から離れる時間を得られず、苦痛だった。学校行事も参加させてもらえなかったから、私がうつった写真はない。幼少期の頃の写真もない。

家ではほとんど食事を与えてもらうことはなかった。たまに、自分が盗ってきた未会計の菓子パンくらいだった。そのパンと給食が、私の命の綱だった。給食は平日のみだったから、土日は身体がからっぽだった。

両親が、なぜそれほどまでに私を憎み、愛情を与えなかったのか、理由は分からない。分からないからこそ、何をどう改善したらよいのか分からず、苦しかった。苦しい生活が当たり前になって、時が過ぎて──私は中学生になった。


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