修羅
高校生になるまで、私には楽しかった思い出というものが一切なくて困っていた。楽しいという感覚すら、覚えたことがなかった。
ただ私が存在していた場所の景色や、季節の移ろいは美しかった。
夜の海が好きで、幾度となく砂浜を裸足で歩いては、やるせなさに打ちひしがれていたのだった。
夜の海は、その深い闇で私のやるせなさを覆い隠してしまう。
脚が砂浜にずぶずぶと沈み込み、そのまま戻ることはない。朝も来ない。いつまでも海全体と一体化し、暗い夜の底をたゆたう。
そんな世界を夢見て、ただ存在するだけの日々に苦しんでいた。
痣が鈍く痛む。
私の両親は、心ない言葉のセレクトや他人にバレないよう巧みに人を傷つけることに長けている。
ざくざく刺された心が折れて、もう修復できる段階にない。
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