第47話 錬金術と武器
エリーテとミルドに会った後、俺は書類整理を済ませ、書庫に篭った。ルカによると馬車は明日手配できるらしいので、今日出来ることといえば調べモノをすることくらいだ。
「とりあえず、錬金の類を調べるか……」
俺は錬金術に関する本を集め、読み漁り始めた。理由は他でもない。
武器製造のためだ。ゲレーダ領との戦いでスクロールを使用した波状戦法をやったものの、スクロールを大量消費したせいで軍事本部から苦情に近い意見書が来ていたのだ。
それに何時ぞやのような『襲撃』にも対応する武器が俺は欲しかった。
本来、魔術が絡む類の話はルカに聞いてもらい、実験すればいいのだが当のルカはレオルと魔術の稽古中だ。窓の外をみれば無数の魔術が飛び交い、体術や剣術が交わる様子が見える。邪魔をするのも気が退ける……というより身の危険を感じる。
「よくあそこまで激しくやり合うなぁ……」
俺は半ばあきれながら本を捲っていく。複数の本を呼んでみた限り、錬金術とはマナと想像力を組み合わせ、その上で素材を元手に練成するものらしい。
「なるほど……?」
俺は手ごろな鞄に数本の本を入れ、軍事本部へと向かった。軍事本部には武器の試作や改良を行う研究部門がある。現にクレームを出してきたのはその研究部門だ。
きっとそこになら資材が沢山転がっているに違いない。
「あれ、達也様!? どうされたんですか?」
俺は研究をしている部屋に着くなり長身、伊達メガネの男に捕まった。その男は白衣を纏っていて、現代日本でも良くみるような研究者、あるいは医者に見えるような格好をしていた。武器改良、および研究部門の主任であるレイチェルだ。
「ああ、何。ちょっと鉄を分けて欲しくって……」
「鉄ですか?」
「そう。練成の練習をしたくってさ。別にガラクタでもいいんだ」
「ん~では……これらでどうでしょ?」
そういってレイチェルが出してきたのはほとんどがゴミともいえるような武器たちだった。禍々しいオーラすら感じる。
「まぁ……これでいいよ。あとは勝手にやるから」
「はい。では、私はコレで」
そういうとレイチェルは研究員達の方へ去っていった。
「さて、やりますか……」
俺は鉄クズを集めてから、本を読みながら武器の製造に入った。
まずは、簡単な設計図を描いていく。
「(作るのは構造が簡単なリボルバーの拳銃にするか)」
俺はバレルとシリンダー、それからグリップ。弾丸のスケールを考えていく。
「よし、じゃあ、やってみるか……<創造主たる・我が命ずる・天たる理を以って・偶像を創造せよ>」
呪文を唱えるとガラクタの下に六芒星が描かれ、青き光が白く発光していく。
「おお! マジか!」
光が収まるとそこにはシルバーのレボルバーが完成していた。俺はそれを手に取り、シリンダーをスライドさせ、弾倉の中を見る。
「後は銃弾だな」
俺は細かい釘数本を中央に並べ、練成していく。それだけで銃弾が20発くらい練成することが出来た。俺は銃を鞄に仕舞い、銃弾をポケットに入れて、外で試射することにした。
「よし……」
外に出た俺はシリンダーに弾を装填し、木に向かってトリガーを引く。
カチャ、カチャ、カチャとトリガーを何回、引いても不発だった。
「(なんでだ?)」
俺は練成した銃を見直す。
だが、機構的には間違いなく機能するはずだ。
「うーん……じゃあ、弾丸の問題か?」
俺は黙々と弾丸をばらして、その理由に気付いた。
「……! そうか、火薬か」
それは致命的な欠陥だった。弾丸には火薬が入っていなかったのだ。
これでは銃として機能しない。
だが、だからと言ってあきらめるほど俺も馬鹿じゃない。
再び、構造をイメージしなおす。
「(火薬という概念が無いなら……)」
俺は懐からマナ補充用のポーションを取り出し、一緒に練成する。
そうすることでマナの根源となる生命エネルギーを銃弾と銃に組み込んで構築し、マナを一瞬、流すことで弾丸を加速させるのだ。言ってしまえば、その原理はいわば、レールガンのようなモノでもある。
「よし、できた。これで撃てるはず……!」
再び弾をこめて木へと銃を向ける。
「撃つときはイメージはいつも呪文を詠唱するときのように冷静に……」
ふぅと息を吐き、銃を持つ右手に意識を集中させ、トリガーに手を掛け一気に絞った。
パーーンッ!!
銃口がグンッと上に跳ね上がり、風が吹き抜け銃弾は前方へ飛んでいった。
木には大きな穴が開いている。
「す、すげぇ威力だけど、とりあえず、成功だな……! あとは……」
俺は再び室内に戻り、銃弾を量産した。さらに皮の繊維を分けてもらいホルスターを作り、腰に巻きつけて銃をホルスターに納めた。
「これで少しは自衛することができるようになったかな? まぁ……威力は化け物だけど」
俺はそんな自信と少しの不安を抱きながら銃をホルスターに閉まい、軍事本部を後にしたのだった。
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