第153話 失って気がつく
俺は穴から顔を出す。
周りに飛び散ったぷにっと達の残骸。どれもバラバラだ。動くぷにっとの姿はない。
俺はそっと手を合わせる。
「ありがとう」
そのまま飛行スキルを発動。一気に上空へ。
鳩もどき達も綺麗さっぱり消え失せていた。
──あの爆発に、炎の竜巻だ。到底、生き残ったのはいないだろう。
俺は上空から見下ろす。
かつて市街地だった部分は完全に更地と化していた。所々から煙が立ち上る。それは上空まで達し、非常に焦げ臭い。
俺は鼻を押さえながら、視線を左右へ。
──第一の喇叭ちゃんとか名乗っていた、奴の姿が見えない。冬蜻蛉が召喚したから、召喚者から離れて遠くへは行かないはずだが。冬蜻蛉の所へ戻ったのか? だとしたら……
嫌な予感がした俺は、直前の冬蜻蛉の行動を思い起こす。
冬蜻蛉は、歩道橋からジャンプして道路に降りた後、ネカフェの方へ向かって一直線に走っていた。あの速度なら爆発が起きる前に市街地は抜けたはず。だとすると……。
俺は大体の目星をつけ、冬蜻蛉の足取りを追う。
──たぶんここら辺で冬蜻蛉は爆発の衝撃波にあったはず。
市街地を抜け、被害がやや少ない地域に入る。建物の残骸がまだ残っており、その壊れ方を見ると、市街地を中心として放射状に衝撃波が広がったのがよくわかる。
──上空から見ても、瓦礫が散乱して探しにくい。一度降りるか。
大地へと降り立った。アスファルトがめくれ上がり、建物は二階以上は吹き飛ばされていたり、倒壊している。
俺は瓦礫を中心としてぷにっと注入をする。
「よし、君はレキだ。すまないが他のぷにっと達と冬蜻蛉という女の子を探してくれ。見た目は黒の革靴に、複数枚のジャンパーを着ていて……」と冬蜻蛉の見た目をレキたちぷにっとへ伝える
「特に瓦礫の下には注意してくれ。頼む」とレキに伝え、俺はネカフェへ向かう。出来るだけ低空を飛びながら。
──無事にネカフェにたどり着いていてくれるのが一番。もしくは途中で怪我とかで立ち往生している可能性も……
逸る心を抑え、慎重に周囲を見ながら飛び続ける。
冬蜻蛉の姿を見つけられず、そのままネカフェについてしまう。
ネカフェは無事だった。ウシャ達ぷにっとの頑張りの成果が如実に現れている。新設された壁には先程の爆発で飛んできたのだろう様々な物が突き刺さっている。
それを今も抜き、補修しているぷにっと達を労い、ネカフェの中へ急ぐ。
「江奈さん! 皆無事か?」
開口一番、叫ぶように問いかける。
ネカフェの中へ進みながら見回す。
──いたっ!
オープン席のスペースで子供達をなだめている様子の江奈と猫林檎。子供達は猫林檎を入れて、6人。
「冬蜻蛉はっ? まだ戻って来てない?」俺は皆の顔を見回しながら。
ポカンとこちらを見ていた猫林檎が俺の問いかけに無言で首をふる。
江奈さんへ当面の危機はないことを伝え、子供達の事を引き続きお願いすると、俺は飛び出すようにネカフェを出る。
そのまま探索用にぷにっと達を量産しながら、俺は周囲を探し回る。
日が沈み。
どんどんとぷにっと達を作り続け。
日が昇り。
レキのもと、四方八方をしらみ潰しに探し続けるぷにっと達。
結局、冬蜻蛉が見つかることはなかった。
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