第135話 新たな日々
食い扶持が増えて、数日。
俺はせわしなく動いていた。
ネカフェに住む人数が増えたことで、必要なものがかなり、増えた。
食料はもちろんだが、子どもというのは生活に必要なものが本当に多い。
もちろん、ホームセンターにいた間は、それこそ着の身着のままの、最低の環境だったはず。冬蜻蛉達はそれに慣れているとはいえ、今はせっかく自由の身になれたのだ。
少しでもましな生活を、と思うのは当然だろう。
そんなこんなで、俺は今日も周囲の探索に出掛けている。
実際の物資の探索、運搬はファルト達、ぷにっとが行ってくれてはいる。
しかし、残念なことに戦闘が苦手なぷにっと達は、敵がいる地域では活動が制限されるといっていい。そうなると当然、ぷにっと達の探索範囲が狭まってしまうし、得られる物資も減ってしまう。
どうやら、俺たちのネカフェのある周囲の地域は完全にゴブリン達の縄張りだったようなのだ。しかし、俺がゴブリンを殲滅したことで、周囲から別のモンスターが侵入しつつあるようなのだ。
例えば、前に見かけたコボルトとワーウルフの中間のような見た目のワーボルト。しかし、ワーボルトはあれからとんと見かけない。この前、ゴブリン達に狩られていた事を考えるに、はぐれか何かが迷い込んだんじゃないかと思っている。
だからという訳ではないが、ワーボルト以外に侵入してきている別のモンスターがいそうな気がするのだ。
ここ数日、帰ってこないぷにっとが徐々に増えてきている。それも、ホームセンターの向こう側まで探索に出掛けたぷにっとばかり。
「こんなことなら、ホームセンターに火をつけるんじゃなかったよ」と呟く俺。目の前にはまだ火のくすぶっているホームセンター。運よく燃え尽きるようなことは無かったみたいだが、そこかしこからまだ煙が上がっている。
「これ、危なくて近づけないな。どこで火がくすぶってるかわからないし、多分火の熱で、色々脆くなってそう。もう少し落ち着いたら、ぷにっと達で決死隊を組んで突撃探索させるか……」
俺は大体の方針だけ考えると、飛行スキルを発動し、煙を吸い込まないようにホームセンターを大きく迂回するように飛び出した。
そのまま飛行すること数分後、俺がいるのは、元々ゴブリン達の縄張りの境と思われる場所。ホームセンターから見て、ちょうどネカフェと反対側の場所。
「ここら辺は市街地っぽいな」
俺は空から街並みを見下ろす。遠くに鉄道の路線らしきものが見える。
「駅を中心とした地方の街って雰囲気か」
市街地ということもあり、建物の数が多い。中規模のビルが立ち並び、飲食店や小売店っぽいカラフルな色合いも見える。空から見下ろしているだけでは、当然どこに何が潜んでいるかなどわからない。
「でも、これだけ栄えていれば、物資は沢山残っていそうだしな。服に靴、食器も欲しいって言ったよな、江奈さん」
まだ見ぬモンスターの存在をひしひしと感じる。俺は緊張を保ちながら、ゆっくりと市街地へ降下していった。
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