第130話 帰る先
俺は飛行スキルで空から道を見渡す。
──体が、重たいな。
肉体的な疲労は勿論のこと、今回のことで俺は精神的にかなり参っていた。
そのせいか、頭痛までしてくる。
それらも相まって、視野が狭くなっているのが自分でもわかる。
それでも、冬蜻蛉達の姿が見えないか俺は必死に探し続ける。
──少なくとも、当初の目的だったネカフェの安全度はこれで上がったはず。ホームセンターのゴブリンの巣は殲滅したんだ。もし、あのままホームセンターを放っておいて、あれだけの数が一気にネカフェに押し寄せていたらと考えたら……
俺は必死に事態のポジティブな面を考えようとするも、肉体的精神的な疲労のせいか、気分が落ち込むような方向に思考がずれて行ってしまう。
こんなんじゃダメだと、首を振った時だった。視界のすみに、見覚えのある色合いがちらつく。
──あれは、冬蜻蛉の重ね着してるジャンパーっ?
特徴的なそれは、空から見ても目立っていた。
俺は先程までの、のし掛かるような思いも忘れ、飛行スキルで一気にそちらへ向かう。
冬蜻蛉ら子供達がいたのは幹線道路脇の自動販売機の影。
俺が着地したとき、子供達は道の脇に座り込んでいた。
俺は着地しながら声をかける。
「冬蜻蛉! よかった合流できて。皆、無事みたいだね?」
そこで目につく、地面には散乱した破片。飛び散った破片の中心にある、壊れたばかりのように見える自販機。
何故か猫林檎がバールのような物を持って得意気にしている。
そして、振り向いた子供達の手には、それぞれ缶ジュースが。
俺は猫林檎の笑みを見て、この先にコンビニがあった事は取り敢えず黙っておこうと固く決意する。
「朽木、遅いよ」と大きくため息をつく、冬蜻蛉。しかしその顔は、口から出た文句とは裏腹に緊張の糸が切れ、緩んでいた。
「本当にすまなかった。そして、冬蜻蛉に猫林檎。ちゃんと指示通り出来たな。よく頑張ったよ」俺も安堵して、そんな言葉をかける。
「うん」言葉少なにうつむく冬蜻蛉。
「さて。ここまで来ていたらあと少しだ。どうする? もう少し休むか」
「ううん。行こう、皆」と他の子供達へ声をかけていく冬蜻蛉。
何故か再び手渡された幼子を抱っこし、歩き始める俺。そうしてペース配分に気を付けながら歩くこと数十分。
そして、ようやくネカフェに帰ってきた。
「うわっ!!」そこで上がる、子供達の歓声。その視線の先には無数のぷにっと達の忙しげに動き回る姿があった。
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