超科学兵器
「3………2……1…
尖塔状の兵器が螺旋状に光を纏い、先端が光る。周りの空気が震え、轟音と共に光線が
とてつもない爆発音がする。朦々と上がる煙が晴れると、カロイの街を守る土壁が半壊していた。
「Huuuuuu!It‘s Great!!ありえねぇぜ!!」
六郎座は歓喜の声を上げる。その傍らにいるアガリプトンは、呆気にとられていた。しかし、すぐ様に冷静さを取り戻し、先ほど光線を放った兵器を見つめる。
「か、か、か、閣下……なんですか?これは?」
今起きた現実に理解が及ばないのか呆然としている。このレベルの魔法は大魔導師(ソーサラー)が放つ最強魔法、”爆炎(フレアー)“に匹敵する。いや、指向性と射程距離を考えるならば、脅威度はそれ以上である。
六郎座は興奮冷めやらぬ顔をアガリプトンに見せる。
「見たかい?これが古代のWeaponだ!知識の賢人曰く、”高密度ポジトロンランチャー“とか言う代物さ!」
「こ、高密度…?なんですか?閣下、私にも分かる言葉でお願いします!
「Uhnm?Sorry!Meにもよく分かってないZe!」
六郎座が元気に応える。その言葉にアガリプトンが呆れ顔を見せる。
「In any case!これでカロイの街は恐怖に包まれたZe!……HUHUHUHU……さ、HeroのHunting、始まりさ!」
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─
街は混乱に包まれていた。カロイの街を守っていた土壁があっさりと崩壊し、壁の近辺にいた建物や人々も巻き込まれて大きな被害が及んでいる。往来には混乱した人々がどこに逃げて良いかも分からず、右往左往していた。
「な、何が起こったんじゃ……?」
先ほどの轟音で腰を抜かしたカトンゴが体を起こす。
「わ、分かりません……しかし、何やら街の入り口あたりに凄まじい土埃が 舞っている情況から、魔族が何かしらの攻城兵器を使われたかも知れません」
トーマスが冷静に状況を分析しようとする。その内容にルディが口を挟んだ。
「攻城兵器って投石機とかか?でもよ、街の慌て様はちょっとおかしくないか?」
「そうね。さっきの爆音も投石機にしてはおかしいわ」
セシルもルディの言葉に賛同する。
「も、もしかしたら、魔法を掛けた石を投げ込んだかもしれません。相手に
カタリナが魔法の可能性を考え、意見を述べる。それと同時にカトンゴにも視線を向ける。
「
「分かりました。おい、ルディにカタリナ。悪いが二人で様子を見てきてくれ。私とセシルはシャナンを迎えに行くぞ」
トーマスがテキパキと指示を出す。……とその時、また魔族の声が辺りにこだました。
「Hey!カロイの街の諸君!先ほどのMeたちの攻撃は堪能してくれたかな?このWeaponがあればキミたちの街を陥すくらいEasyなのさ!」
魔族のやけに透き通った声が耳に響く。その声を聞き、ルディが不愉快そうにぼやく。
「くそ!どこから聞こえてくるんだ?この変な声は!」
「おそらくですが、風の魔法を使っていると思います。風に乗せて魔族が声を運ばせているのかと……そう考えると、魔族は街の近くでなく、少し離れた先にいるのかも知れません」
カタリナが状況を分析する。しかし、声が届く理由が分かったとして、先ほどの兵器が一体なんなのか分かったわけではない。
一体全体何が起きているのか、全員が魔族の声に耳を傾ける。
「But!Meたちの目的はカロイの街の陥落ではない。その街に潜む”勇者“だ!」
「なんだと!?」
トーマスが驚愕の声を上げる。
「人間たちにChanceをヤるZe!“勇者”を捉えて、Meたちに差し出せ!そうすれば、攻撃を止めて引き上げてやるZe!」
「く、くそ!アイツら!街を丸ごと人質に取りやがって!!」
ルディが口惜しそうに歯がみし、拳を握る。セシルやカタリナも恨みが増しそうに魔族の言葉を聞いている。
「あっと、勇者の生死は問わないぜ。勇者は強いからな。“生かして”なんて条件付けたら、お前たちじゃ敵わないからNE!」
「おのれ……汚い手を…」
トーマスが憎々しげに吐き捨てる。その傍らで、先ほどから四人の態度を見ていたカトンゴは不思議そうに尋ねた。
「お主ら……勇者に心当たりがあるのか?」
トーマスの表情から急に生気が抜け、”いえ、ありません“と答える。その顔を見てルディ、セシルとカタリナが”何て嘘が下手なんだ“とため息を漏らす。
「おい、お主ら。もしかして勇者とは……」
「Hey!人間ども!勇者の特徴を教えるZe!勇者はな、黒髪で目が大きく小柄なGirlだ!おっと!Girlだからと言って同情はNothingだZe!何てったって、YouたちのLifeが掛かっているからなぁ?HAHAHAHA」
不愉快な笑い声にトーマスが苦い顔を見せる。
「黒髪で目が大きくて……小柄な…何じゃ?Girl?あの魔族、たまによく分からん言葉を使うのぅ」
四人はガクっとした。だが、魔族の変な言い回しのおかげで、シャナンの正体が上手く隠せたかも知れない。塾の窓から大通りを見ると、先ほどの魔族の言葉が理解できないのか、人々が一様に首を傾げている。
「ど、どちらにしても、状況を把握しないと……それにシャナンの身の安全も確かめなくちゃ。ルディ、カタリナ。急いで状況を確認して。トーマス、早くシャナンを迎えにいきましょう。カトンゴさん、ルディたちから情報をもらったら
「お、おお。分かったわい」
トーマスに代わり、今度はセシルが捲し立てて指示を出す。上手く話を逸らせたと思い、四人はカトンゴを残して走り去った。
去りゆく四人の姿を呆然と眺め、カトンゴは腕を組む。
「Girl……確か古代語で”少女“だったか。黒髪で目が大きく小柄な”少女“……どう考えても”シャナン“じゃなぁ」
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