第40話:まさかの大団円
そして、私がリーアお姉様を取り戻した時、キャンベル侯爵家の緊急家族会議が開かれた。会議場所として使われている応接間には、私とリーアお姉様とお父様とお母様とシグレしかいない。
「ズバリ。結論を言ってしまうと……リーア。お前をこの国に置いておく訳にはいかない」
「はい……お父様……」
お父様の言葉に神妙な顔をして頷くリーアお姉様。いつもの私なら、お父様に色々言い募っただろうけど、なんとなくそんな話が切り出されるのは分かっていた私は黙って聞く態勢になる。
「今回の件が完全に露見したおかげで、リーアもセリーナも罪に問われる事はなくなった。が、今回の件が露見する形になってしまったのがそもそも問題だ」
今回の聖天大王が起こした一件は、このアストール聖王国全体に広まった。つまり、リーアお姉様の匂いの力も、国中に広まる形になってしまったのである。そうなると、リーアお姉様の匂いを欲する者が国中からやって来る可能性が高い。つまり、第2・第3の聖天大王の事件を起こしかねないのだ。
「そして……私はお前共に国を出る訳にはいかない……私は仮にもこの国の侯爵を賜った貴族で、クレオ様の弟君の一族だ。だから、この国の混乱や領地をおさめる義務がある」
「それも……分かっております。お父様……」
お父様は責任感の強いお方だから、この混乱しきった国をどうにかする責任を感じているのだろう。国をまとめながら、リーアお姉様を守るのは正直難しいのは私でも分かる。
そして、お父様はテーブルの上にドサリと沢山の金貨が入った袋を置く。
「これは、私がお前にしてあげる唯一の事だ。このお金で、遠くの国へ……お前が一度行ってみたいと言ったウィンドガル王国に行くといいだろう。あそこは本当に良い治安の国だと言う。あの国ならお前も幸せに暮らせるはずだ」
「……お心遣い感謝いたします。お父様」
リーアお姉様はそう言って、お父様が置いた金貨袋を受け取る。すると、お母様は涙を流してリーアお姉様に抱きついた。
「ごめんなさい……!貴方1人救えない情けない私達を……!どうか許してちょうだい……!!」
「お母様……!大丈夫です……!私は……!私は……!!2人の娘に産まれてきて幸せです…!!」
リーアお姉様も瞳に涙を浮かべお母様を抱きしめる。お父様も瞳に涙を浮かべている。お父様もお母様もやはりリーアお姉様が大事で心配なんだろう。だけど!心配には及びませんわ!お父様!お母様!
「大丈夫です!お父様!お母様!リーアお姉様には私がついてますから!!」
私が堂々とそう宣言したら、何故か肝心のリーアお姉様にキョトンとした顔された。はて?何故リーアお姉様はそんな表情を……
「セリーナ……私と一緒に来てくれるの……?」
「えっ?そんなの当然じゃないですか。私はリーアお姉様なしじゃ生きていけないんですから」
最早、リーアお姉様の匂いを1日3回以上嗅がないと生きていけないぐらいだ。
「けど……それは……私の匂いに狂わされて……」
「はぁ!?違いますよ!!私はお姉様を愛してるから一緒にいたいに決まってるじゃないですか!!」
ん?そこで、私はふと自分の気持ちに気付く。
「あっ、そうか!私がここまでお姉様に執着したのは、匂いだけじゃなくて、お姉様を愛してたからですね!なるほど!納得です!」
いやぁ〜……まさに今更気づいた感じね!いくら私が綺麗なお姉さんの匂いフェチだからって、ここまで執着するのは変だなぁ〜って思ってたのよね!
「お嬢様。その告白の仕方はどうかと思いますが……」
シグレに若干ジト目で睨まれる私。うぐっ!?確かに……これは……もっとちゃんとムードを作り直して……が、それよりも先に……
「嬉しい!!私も!愛してるわ!!セリーナ!!私も!セリーナとずっと一緒にいたい!!!!」
私に情熱的な愛の返事をし、私を抱きしめるリーアお姉様。
ちょっ!?ダメです!?リーアお姉様!!?今リーアお姉様に抱きつからたら、リーアお姉様の匂いだけで頭がいっぱいになってムード作りがぁ〜!!?
「ふむ。セリーナが一緒なら安心だね」
「そうね。セリーナも一緒いてくれたら心強いわ」
「本当なら私がお供するつもりでしたが、そんな無粋なマネをしたら馬に蹴られてしまいますね」
お父様とお母様とシグレは私達を見て笑みを浮かべてそう言った。
こうして、翌日には私とリーアお姉様は2人でアストール聖王国を出た……
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