第32話:受け継がれた物

クレオ神聖国で唯一の生き残りがいた。それが、クレオの実の弟であるセインだった。セインはこの惨劇と、姉の死を無駄にする訳にはいかないと、クレオ神聖国の事を自分の家族に語り継いでいった。


やがて、クレオ神聖国の事は他の国々では匂いで男を虜にして国をうちたてた国という伝承として伝わったが、セインはそれを否定するようなマネはせず、真実を自分の親族にだけにしか伝えなかった。何故そんな事をしたのか……それは誰にも分からない……


「……クレオ神聖国の事はよく分かりました。しかし、それとお姉様が誘拐されるのと何が関係あるのですか?」


エドガーは再び沈黙を貫いていたが、すぐにその重たい口を開いた。


「正直……リーアがいい匂いをすると誰からも絶賛された時にまさかとは思っていた。しかし……これまでリーアが狙われていた理由に匂いが関わっているのなら、間違いないのかもしれない……」


「お父様……一体何を……?」


「リーアはかつてのクレオ女王の匂いを受け継いだ可能性がある」


エドガーの発言に驚くセリーナだが、セリーナにはまだ疑問がある。


「待ってください!?お父様!?もし、仮にお姉様がその匂いを受け継いだとしても!何故聖天大王様がそれを知ってるのですか!!?」


「それは……」






「ワシは君達の祖父の兄だ」


「えっ!?」


カイゲンの言葉に驚くリーア。そんな話は祖父から一回も聞かさせていなかった。


「驚くのも無理はない。聖王としての力を手にした時、他の貴族達にキャンベル家が利用されたりしないよう、ワシはキャンベル家から勘当され、ワシの名前はキャンベルの家系図から消えてるだろうからな」


まさかの事実に驚きを隠せないリーア。目の前の聖天大王と呼ばれた人物が、まさか自分の親族だったなんて信じられなかった。


「ワシも信じられない気持ちでいっぱいさ。まさか、自分の親族から再び、クレオの匂いを継ぐ者が現れるとは夢にも思わなかった……」


そう言ってリーアをジッと見つめるカイゲン。その瞳に何故か恐怖を感じ、一歩後ずさるリーア。


「最初はその匂いに半信半疑な想いだったが、念のために調査させ、そして、ドンスキー公爵令嬢の力を弾いた話を聞いた時に確信したよ。お前は間違いなくクレオの匂いを継ぐ者だと……」


「聖王様……?」


「その力……アストール聖王国の為に使わせてもらうぞ……」


そう言って、カイゲンの腕がリーアに伸びていき……

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