第31話:遠い昔の悲劇

それは遠い昔に起きた悲劇の物語……


とある小さな村に1人の少女が住んでいた。その少女の名はクレオ。クレオは特にこれといった特徴のない普通のどこにでもいるような少女だった。


だが、彼女には一つだけ人とは違う特徴があった。それは……



「彼女は凄くいい匂いがしたそうだ」


「凄くいい匂い……」


「その匂いは老若男女問わず、様々な者達がその匂いを絶賛した。村の人達だけでなく、その村の領主の貴族までも虜にしたそうだ。が、彼女の匂いはそれだけじゃなかった……」



彼女の匂いを直に嗅いだ人間に徐々に変化が起き始めた。その匂いを嗅いだ者達はみな、徐々に自らの才能を開花させていったのだ。


魔法が巧みな者は、更に魔法が上手くなったり、剣術が得意な者は、更にその腕が上がったり、頭が良かった者は、更に難しい数式を解いてしまうような秀才になったりと……彼女の匂いを嗅いだ者達は、皆その実力が伸びていった。



「故に、人々は彼女を神の御使いだと崇め、彼女を王にしたクレオ神聖国が立ち上がった」


「クレオ神聖国……そんな国の名など聞いた事が……」


「当然だ。もうその国は地図に載っていないからな」


「地図に載ってない……?彼女の匂いで民は優秀な力を得たのですよね……?」


「確かに、彼女の匂いのおかげで民は他の国の民には負けない力を得た。しかし、彼女の匂いは劇薬過ぎたのだ」



匂いを嗅ぐだけで力を得られる。それならば当然彼女の匂いを嗅ぎたいと思う者達が次々と現れる。だが、当然彼女の身は一つだから、全ての人々に彼女の匂いを嗅がせる事が出来るはずもなく、更に、城の者達は彼女の匂いを独占する為に動いていた。



「そうなると……セリーナ……お前でも何が起きたか分かるだろう?」


「内乱……ですね」


「そうだ。城の者達と、民達の間で、彼女の匂いを巡って内乱……いや、最早戦争と言ってもいいものが起きた」



その内乱は凄まじいの一言だった。城の者達は常に彼女の匂いを得ているので、当然かなりの実力者揃いだが、民も彼女の匂いを嗅いだ者は何人かいて、それが数人以上いると、数と質のぶつかり合いになった。



「だが、結局は数と質による戦争は両者共に滅び、クレオ神聖国はその内乱によって呆気なく滅んだ」


「……クレオ女王はどうなったのですか?」


「無論。彼女は従者達に逃げるように言われ逃れた。が……」



クレオは自分の匂いのせいで沢山の人が死んだ事実に耐えられず、神聖国から離れた場所で自害した。



「が、彼女が自害してもなお、その匂いの力は強かった。彼女が自害した場所は荒れ果てた動物が住めない荒野だったが、木々が生え、自然が生まれ、動物達が住める環境になった」


「まさか!?そのクレオさんが自害した場所が……!?」


「そうだ。我が領地の大森林だ」


とんでもない事実に驚きを隠せないセリーナだったが、まだ気になる事も残っていた。


「何故お父様はそんなにその滅びた国について詳しいんですか?」


エドガーはセリーナの言葉にしばし沈黙していたが


「私達キャンベル一族はね……クレオさんの実の弟の子孫なんだよ……」


エドガーは更に衝撃の事実を明かした。

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