第27話:魔法省暗部シグレ

魔法省の暗部?魔法省って言ったら、魔法の研究や開発に専念したり、魔法で困り事を解決するお役所のようなところだと聞いていたけれど……?そんな疑問をやっぱりすぐに察してシグレは答え始める。


「魔法省では表向きはお嬢様が考えている組織です。しかし、表もあれば裏もある。表では決してやれないような仕事をやる。それが私達魔法省暗部です」


つまり、今シグレがリーアお姉様を攫うような仕事を行うのが魔法省暗部なのね。しかも、私達って事は他にもいる訳ね……けれど……


「何故魔法省暗部がお姉様を狙うの?魔法省はそんなにお姉様を欲しているというの?」


そこは凄く疑問だった。リーアお姉様が魔法省に入って欲しいと思ってるなら、リーアお姉様の実力なら数年後に魔法省へ就職するのは可能だろう。わざわざこんなマネまでしてリーアお姉様を欲する理由が分からない。


「それに関しては……黙っていても無駄でしょうから正直に答えると、私にも分かりません。私はただ与えられ任務をこなしていただけです。リーア・キャンベル侯爵令嬢の匂いを求める者達を招き入れ、その様子を観察せよと……そして、今回は私自らリーア・キャンベル侯爵令嬢をこちらに連れて来いと……」


なるほど。シグレはあくまで上司の命令に従って行動しただけか。だから、リーアお姉様を欲しがっているのは、その上司か、魔法省か、はたまたそれよりも上の人物か……分からないと……


「なるほどね。それで、シグレはお姉様を攫ってきたわけね。そういう命令を受けたから」


「はい。そうです」


「そう。でも、ソレを連れて行っても貴方の任務達成にはならないわよ」


「えっ……なっ!!?」


シグレは改めて自分が抱えていた物を見て驚く。ソレは、リーアお姉様の服を着せたシグレ愛用の巨大なたぬポンのぬいぐるみだった。


「た……たぬポンに何で服を着せてるんですか!!?たぬポンはありのままの格好でいるのが素敵なんですよ!!!」


「えっ!?ツッコむところそっちなの!!?」


いつもとは若干違うパターンに戸惑ってしまう私。シグレはゴホンと一つ咳払いをして、いつもの無表情に戻る。


「いつの間にこんなことを……」


「貴方が怪しいと思っていた時から色々対策はしていたのよ。そして、貴方がついに今日動き出した時に、私は魔法で貴方が抱えていたリーアお姉様とたぬポンを入れ替えたのよ」


これでも私も魔法はいくつか勉強している。そして、この日の為にこの入れ替え魔法はしっかりと習得させてもらった。今頃、リーアお姉様は自分の部屋でぐっすりと眠っているはずだ。


「けれど……いつも冷静に何でもこなせる貴方がこんなミスをするなんて……貴方……迷っているの?」


「ッ!!?」


私の指摘に動揺したシグレだったが、すぐにシグレはいつもの無表情を取り戻す。


「そうですね……想像以上に今の仕事は楽しかった……変なお嬢様達でしたが、私のような裏の世界でしか生きていけないような者にも優しく……給料もいいので、たぬポングッズも沢山買えましたし……」


うん。後者が1番の本音にみえるのは私だけかしら?


「ですが、私は魔法省暗部の人間なんです。今更ここから出られる事は出来ないんです」


シグレは無表情だけど、どこか悲しそうな瞳でそう言った。だから……私は……


「勝負よ。シグレ。今だけは私は自分のポリシーを捨てるわ。私が負けたら、貴方は魔法省暗部として生きるなり好きにすればいい。けど、私が勝ったら……貴方は一生キャンベル侯爵家のメイドよ」


「ッ!!?…………本当に……セリーナお嬢様は仕方ない方ですね……分かりました。その勝負お受けします。しかし、私も全力でいきますので……お覚悟を……!」


こうして、私とシグレの一対一の勝負が始まった……

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