第15話 初めてのスキル
「そういえばシアさんはなにか目的があるの?」
「はい、私はお店を出したいんです! 服のお店!」
ご飯を食べて、チーカさんにアイテムボックスアップデートのクエストの事も聞いて、いよいよ町の外へやって来た。
フィールドにもモンスターは出るけど、『採取』のスキルはダンジョンの『採取ポイント』でしか覚えられないんだそう。
なので今からビギナーダンジョンに行く。
途中で弱いモンスターに遭遇すると思うから、『槍』スキルはその時に覚える、という事で。
まずはアイテムボックスアップデートのクエストと『採取』スキルゲットが今日のノルマー!
「へえ、もう目的が決まってるプレイヤーは珍しいと思ったけど……目標がちゃんとある人だったのか」
「家族に散々邪魔されて来たので!」
「あ、そういうタイプの人か……」
察して頂けたようで!
「確かにそれなら目標を達成して、こっちでお金を貯めた方が良いかもしれないね。あっちに戻った時にお金がある程度あれば、リハビリ後すぐになにかは始められるだろうし」
「リハビリ……」
「100%必要になるよ。寝たきり状態だから、筋肉が落ちまくってる。床擦れ防止でドローンが一定時間動かしてくれるけど」
「……起きた時怖いですね」
あんまり想像したくないなー。
それでなくとも体力には元々自信がない。
リハビリ……大変そう。
「でも! こっちでお金を貯めておけば、あちらに戻ってすぐ家を出られる!」
「うん、良いと思うよ。肉親だからってやっぱり合う合わないはあるもんね。俺は弟に死ぬ程嫌われちゃって、すごい悲しかったけど」
「………………」
こ、言葉通り、なんだろうなぁ。
弟さんのアバターって言ってたし……。
「で、でも弟さんのアバターをビクトールさんが今使ってるって事は、仲直りしたんですか?」
「仲直りというか、弟に一方的に嫌われていたというか……」
……男兄弟も難しいんだなぁ?
「うちは共働きで、弟の世話は全部俺がしてたんだけど、どうやら弟的には俺が世話を焼きすぎてたみたいで」
愛が重かったのかな。
「そして俺は割と器用で、成績も柔道の方でも良いところまで行ってたから影でかなり比較されてたらしくて……」
兄弟姉妹あるある……。
私も容姿に関してめちゃくちゃ言われた。
妹ちゃんは可愛いわね~、でもお姉ちゃんは成績が優秀で良いわね~、と……はいはい! 私は成績しか褒めるところがないもんね!
「結果弟は俺に劣等感を抱いて、大変な事になっていたんだ。俺、弟が自殺未遂するまで気づかなくて……いや、まあ、成人してからは離れて暮らしてたから……まさかそんなになってたとは思わなくて……いや、言い訳か……」
「でも、和解したんですか」
「うん、弟がこの世界で嫁を見つけて戻ってきた時ね」
「ほぁあ⁉」
嫁⁉ 結婚⁉ この世界で⁉
そ、そういうストーリー⁉
えええぇ!
「それで色々話してそうなった。弟の話、聞いた時は泣いちゃったな〜。身内の事なのに、と思ったけど弟からすると身内だから、らしい。難しいね、肉親は」
「……そう、ですね」
ビクトールさんのお家はすれ違いが原因だったんだ。
……うちはもうなんかすれ違いようがないのでアレだけど。
うん、やめよう、思い出すとムカムカしてくる!
「あ! もしかしてあれがモンスターですか?」
町の外は草原になっていて、歩いて十分くらいのところにビギナーダンジョンが点在するそうだ。
そしてついに、私の目の前にモンスターが現れた!
青い風船みたいなモンスター。
大きさは膝丈!
あんまり怖い感じじゃない……良かった。
「そう。ちなみに『鑑定』スキルを覚えてモンスターを『鑑定』していくと『モンスター知識』っていうスキルも覚えられる」
「……シ、シビア……」
「スキル網羅は人間の人生では不可能だから諦めた方が良いよ……」
それ程までに多いのか!
「ちなみにアレは『ブブーン』っていうモンスター。弱点は『突』。『槍』スキルは相性が良いね」
「なんか突いたら破裂しそう……」
「するよ」
「やっぱり!」
「もしかして風船の破裂音苦手な人?」
「……あ、あんまり得意な方では……」
「じゃあ他のモンスターを探す? 無視しても襲ってこないよ、この辺のモンスター」
それはモンスターとしてどうなのだろう。
いや、ビギナーが最初に出るフィールドなんだから、そのくらいでないとダメなのかな。
ゲーム慣れしてないプレイヤーもいるだろうしね、このゲームの概要的に。
「……い、いえ、頑張ります。槍で突っつけば良いんですよね」
「うん、そうだね」
とりあえずスキルを覚えよう。
槍は装備した。
……装備すると装備品の攻撃力がステータスに上乗せされる。
そして、スキルを解放すると多分更に上乗せが出来るんだろう。
この槍の攻撃力は『15』。
うんまあ、しょぼいけどビギナー用ではそれが妥当だろう。
風船モンスターに刃を向ける。
恐る恐る切っ先をモンスターにくっつけると……。
パァン!
「ひぃ!」
ぴこん。
とモニターが出る。
『槍スキル』が解放されました。
という文字。
あぁ、心臓に悪い……。
「スキルツリーチェックしてみる?」
「はい……あ! やりました! 『槍』のスキルツリーが解放されてます!」
「うん、次は槍の技スキルが覚えられるみたいだな」
「上の段が技のスキルで、下の段へ行くと槍を装備した時のステータスボーナスなんですね」
うーん、という事は、武器はホイホイ変えられないな。
使っていけばステータス値がプラスされてくわけか。
ぐぬぬ……熟練度振り分けはその武器の種類でないと出来ないわけなのか……。
「防具にはスキルツリーがついてないんですね」
「あーうん、でも確か盾やアクセサリー系はあったよ。あれ、なんだっけ……成長型のアクセサリーがあるとかないとか……」
「ビクトールさん割と重要な情報をうろ覚えすぎませんか!」
「いやぁ、俺がゲームしてたの小学生までなんもので……」
大事なところが大体うろ覚え!
んもおぉ!
「それよりサクッとダンジョンに行ってアイテムボックスのアップデートクエストを終わらせようか。陽が落ちる前に町に戻りたいしね」
「はあ、そうですね」
仰る通りだ。
それにしても、今のモンスターアイテムとか落とさないんだな。
歩きながらビクトールさんに聞いてみると、フィールドの雑魚モンスターはアイテムの類をあまり落とすやつはいないんだって。
ざーんねーん。
「その代わりダンジョンのモンスターはアイテムをよく落とすよ。ビギナーダンジョンでオススメなのは『スライムの森』。あそこのスライムは物理攻撃で倒せるスライムなんだ」
ドヤ顔で言ってるけどスライムを倒せる柔道技があるのだろうか?
私の知ってる柔道技なんてさっき見た背負い投げぐらいだけど……。
「スライムは『傷薬』の材料を落とすから、絶対一回は行った方が良いよ。錬金術師の店に行くと、道具屋で買うより安く『傷薬』を買えるから!」
「な、なんと! それは良い情報を聞きました!」
お金大事!
明日辺り行ってみようかな⁉
「と……アレが例のクエストを受けられるという……」
「は、はい……」
なんて話をしてたら着いたようだ。
アイテムボックスアップデートクエストが受けられるという、ビギナーダンジョンの一つ……。
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