第18話 就職(改稿済)

 ルードゥ達と合流し、無事を確認した。


「よくやったユーリ、ハル。俺はお前達が誇らしいぞ! それで、何か問題は?」

「いえ、特に何もありませんでした。私達と一緒にいたおかげでテイムモンスターだと思われたのでしょう」

「そうか、何にせよ無事でよかった」


 いやホントに。

 特にゴブ美ちゃんがどっかの誰かさんに攫われかけたからな。

 

「よし、じゃあ早速入ろう。もうゴブ美ちゃんみたいなコトは勘弁だからな」

「はい!」


 西方大陸でよく見かける両開きの木製扉、西方扉を開け中に入る。

 てか、西方扉使ってるのか。

 もしかしてここのギルドマスターのエルフって西方出身か? 他は、特に一般住居などは見た限り開き戸だったんだが……。

 建築物のサイズ的な問題か?


 それにしても……なんだか、見覚えのある景色だな。


 どこで見かけたんだったか……。

 あぁ、思い出した。

 リンゴ売ってる爺さんがギックリ腰になった時代わりに荷物を受け取りに行った場所だ。

 あの時はそこがどういう場所なのか良く分かってなかったけど……。

 ギルドって要するに商人組合のコトか!

 ようやく分かったぞ。

 

 でも、あの時見た景色と少し違う所もある。

 それは酒場が併設されているコトと、魔物の姿が多く見られるというコトだ。

 まぁテイマーズギルドなんだし当然だが、確かにユーリの言う通りここの人とは仲良くなれそうだ。


「済まない、少し良いか?」


 窓口と書かれた看板を宙吊りに掲げたカウンターの奥で何か作業をしている女性に話しかける。

 カウンターの内側にいるのだから、彼女は従業員のハズだ。


「はいはい! 今行きます……って、あら見ない顔ね。ようこそ、テイマーズギルドへ! 今日はどうしたのかしら、登録? それとも何かの依頼かしら?」


 大人な雰囲気の女性だ。

 茶髪ショートのおかっぱに美しい碧眼、青のスーツを着こなす仕事人。

 

「登録で頼む。もう分かっていると思うが、俺の連れの内2人がテイムモンスターだ」

「その子は……メタルマンティスね。もう一人は……成程。大変だったでしょう? ご主人様と常に行動を共にしないといけないけど、これからはもう差別されることは無いわ。あー、でもやっぱり混ざった血の方で見られちゃうかな……ま! とにかくこのギルドにいればもう安心よ、魔物差別なんてこのギルドにはないから」

「……驚いた。まさか一目で分かるとは」


 ってか、ルードゥはメタルマンティスとやらになってたのか。

 前はキラーマンティスだったよな? 殺人カマキリから金属カマキリに進化……。

 まぁ、物騒な種族名ではなくなったんだし別にいいか!


「それぐらい分かるわよ。で、登録だっけ? えぇ、歓迎するわ! とりあえず身分証を見せてもらえるかしら?」

「済まないが、身分証は持っていない」

「あー、失くしちゃったか。おっけー、じゃあこの水晶玉に触れてもらえるかしら? 貴方の原典から最低限必要な部分を引き抜いて身分証発行しちゃうから」


 むぅ……原典、とやらも俺は持っていないんだがな。

 さてどうするかと悩んでいると、ゴブ美ちゃんが耳を差し出すよう合図してきた。

 

(なんだ、何かアイデアがあるのか?)

(アイデア……というか、とりあえず一回触れてみるのはどうでしょうと。

 平行世界出身とは言え、全く別の異世界で生まれた訳ではないのですからもしかしたら原典自体は持っているかもしれません)

(ふむ……成程、分かった)


「あー、すまない……少し予定が立て込んでいてな。それはすぐ済むのか? もし時間がかかるというなら日を改めるが」

「あー、大丈夫大丈夫。3分ぐらいで済むわ」


 ふぅ……なんとか誤魔化せたな。

 それにしても3分か、意外と早く済むんだな。


「3分か、なら大丈夫……か? ユーリ、どうだ」


 頼む、気付いてくれ! 

 打ち合わせなしの即興だが、お前なら分かってくれる筈!


「はい、問題ありません。次の予定は15時からとなっておりますので」


 おっしゃサンキューッ!

 空気の読める娘大好きッ!


「ふむ……今の時間は13時か、結構キツイが十分間に合うな。済まない待たせた。で……これに触れればいいのか?」

「えぇ」


 水晶玉に手を乗せる。

 

「ッ!」


 なんだ……この感覚は。

 胸の中で、何かが強く反応している……? 


===============================

ウィリアム 18歳 男 レベル:1

クラス:剣士 職業:テイマー 

===============================


「ふむふむ……ウィリアムさん、クラスは剣士か。へぇ、レベル1なんだ……ん? んん!? ね、ねぇウィリアムさん。どうやってその子達テイムしたの?」

「どうやってって……話し合って友達になっただけだが」

「えぇ!? そこの半人の娘はそうだろうなと思ったけど、カマキリ君もなの?」

「あぁ、軽く戦ったがな。まぁ然程苦労はしなかった」

「レベル1で?」


 レベルレベル言うんじゃねぇよ! 分かんねぇんだよ俺。

 ってか、ちゃんと発行されたってことは俺にも原典があるのか? 


「そうだが?」

「凄いのね……。相当技術が高くないと、レベル1がメタルマンティスを軽くあしらうなんて出来っこないわ」

「まぁこれでも英雄を志す者だからな。それぐらいは当然だ」

「へぇ……ま、頑張りなさいな。応援してるわ」

「あぁ」


 さて、身分証も発行できたし宿を取りに行こう。

 折角街に来たんだからベッドで眠りたい。

 まぁ、本音を言っちゃえば東方出身故、布団で眠りたいんだがな。


「そういえば、アンタの名前は?」

「私? リーリンよ、元テイマー。今はただの従業員」

「そうか、ではこの街に魔物同伴許可の宿はあるか?」

「えぇ、あるわよ」

「ならばその宿の名を教えてくれ」

「火酒亭ってとこよ、変わりもんのドワーフのおっちゃんが経営してんの」

「そうか、助かった」


 ドワーフとは一体……。

 それにしても火酒か……相当酒好きのおっちゃんなのかな?

 それから俺達はリーリンに聞いた情報の下、火酒亭に向かった。

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