第4話 a ray of sunlight(2)
それから何度か交代を繰り返しながら、試合は進み、失点を1度許すが粘りの防御を見せ、3―1で第2ピリオドを終えた。
隼人がシュートを止めてから二人はさらに白熱した勝負を見せ、剛君の攻撃を何とか防ぎ切った。
「お前!最高じゃねーか!」「すごいよ飯田君!」
柳沢先輩と枝葉君は隼人に称賛の声をかけ続け興奮気味だ。
「でも、勝ってない。勝ってないんだ」
隼人は称賛を素直に受け取ることはせず、ただ剛君に勝つための手段を模索していた。
それに引き換え、僕はこれといった活躍をせず、第2ピリオドの最後、残り時間が少しだと油断し、失点を許してしまった。
しかも頭の中では剛君に抜かれたときにフラッシュバックした映像がこびり付き、打開策を考え出せずにいた。
まず、あの時どう抜かれたのかが理解できていなかった。目の前から急にパックが消えたのだ。
「…場、おい、咲場!」
「は、はい!」
「どうするよ、どう勝つ?」
柳沢先輩は僕に作戦を問いてきたが、今の僕は何も考えておらず、作戦については頭が真っ白になっていた。
「分かりません…」
「あ?」
「分からないんです!どうすれば剛君を止めれるのか…どうすれば…。」
「…」
弱音を吐く僕に柳沢先輩は近づくと腕を大きく振り上げた。瞬間、僕の頬に激痛が走り、体が浮いた。
そのまま僕はガシャーンッとベンチを巻き込みながら倒れこむ。さらに首元を掴まれた。
「いいか!今のキャプテンはお前だ!自分のことで頭一杯なのは分かるけどな、キャプテンってのは常にチームを勝たせるよう動いて考えなきゃならねえ、大輝は自分が苦しい時こそ考えて周りに勝つための指示を出し続けてんだ!それが今のお前の役目なんだよ、分かったか!」
柳沢先輩はそう言うと僕を首元の手を放す。それを支えにしていた僕の体は床に倒れ込んで動けなくなってしまった。
「てめえには一体、今何ができんだ。」
そう吐き捨てると、柳沢先輩はみんなにこう伝える。
「今はまだ我慢の時だ、だけどが逆転の時は必ず来る。それまで頼むぞ飯田」
「はい!」
そのままブザーが鳴り、第3ピリオドの開始時間となる。泣いても笑ってもこれが最後のピリオドだ。僕は立ち上がり、氷上へ上がった。
目頭が熱くなり何かが零れ落ちることの無いように上を見上げる。すると、大輝キャプテンや輝先輩の姿が視野に入った。しかし、その人たちの後ろにいる人物に僕は驚愕した。
「なんで…」
そこには不機嫌にコートに顔をうずめこちらを凝視している居るはずもない剛大の姿があった。
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