第3話 What dou you think?(5)
「あちゃ~、えらい酷くやられたな。これは」
「あいつ、強いな」
第1ピリオド終了間近に起こった出来事に、俺と輝は感心と畏怖を感じていた。
横で並んで座る輝は、先ほど得点し、ベンチへと戻る選手をガン見していた。俺ら1軍の選手から見てもあの選手は脅威だ。
「お前ならうちの2軍全員抜けるか?」
俺は興味本位で、うちのエースプレイヤーである輝に聞いた。輝は少し考える仕草をしたがすぐに返してきた。
「1人ずつならできるかもしれないけれど、あんなに早く、しかも一遍には無理だ。ったく試合前にふざけてるからあんなことになるんだ、後で絞める。特に咲場」
「まぁまぁ。だけど、お前もそんなこと言うのな」
「あ?どういうことだよ」
「お前は負けず嫌いだからな~、できるって言いそうだったんだけど」
「うちのチームの選手を舐めてるかのようなこと言うかよ、あいつらも十分他に比べれば強い」
輝は見た目きつそうに見えるが選手に対するリスペクトは忘れない奴だ。まぁ1年生の頃は尖りまくってて全員に敵意燃やしてたけど…幹部になって変わったのかもな。
そんな時、後ろからコツコツと足音を立てて寄ってくる人物がいた。後ろを振り向くと背の高い、名前の通り狐みたいな顔をした男が手を振ってきた。
「恭介」
「よ、大輝、輝も」
「なんでお前がここに居んだよ、試合出ろよ」
「相変わらず愛想ないね、その言葉そっくりお返しするよ」
輝は恭介を見ると苦虫を噛み潰したような顔を向けた。まぁこちらも俺らが出ていないんだから同じ理由だろうけど。
「今回はごめんな、大会前にこんな無茶な試合組んでくれて」
「いや、まぁ思うところはあったけどこっちも人材見つけるきっかけになったしな」
「本当は俺この試合反対したんだけど、剛のやつが言うこと聞かなくて」
「剛?誰だそれ」
輝が興味深そうに聞いた。剛って選手は初めて聞く選手だ。もう3年近く戦ってきたからか大体ブラックバッツの主要メンバーは分かる。
「うちの新人だよ、まぁ1年生じゃなくて留学から帰ってきて今俺らと同期なんだけどな」
「へ~」
「そいつ、出てるのかよ」
「出てるよ、さっき得点したやつが剛。感謝してよ、本当は大会まで隠すつもりだったんだから」
「それは今日見に来てよかった」
俺が嫌味ったらしく笑うと恭介は少し考えてから、口を開いた
「なぁ、お前のチームに咲場ってやついる?」
「あ?いるよ。今日キャプテンやってる、なに?なんか迷惑でもかけたか」
「いや、そうじゃないんだけど…そいつってどこ出身?」
「俺らと同じ北海道だったかな」
「やっぱりか」
「なに?」
「いや、何でもない。楽しみが増えたって感じかな」
「なんだそりゃ」
そんな意味不明な会話を恭介としていると後ろから声をかけられた。
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