第3話 What do you think?(3)
なんとか隼人たちの2セット目は失点せず、守り抜いてくれた。
今度は僕たちがその頑張りに応える番だった。試合がいったん区切れた時に僕たちは交代した。
「隼人、ありがとう」
「もう無理、動けない。早く点取って気持ちだけでも楽にさせて」
「おう、待ってろって」
そんな軽口を叩き合いながら僕たちはすれ違った、なぜか僕は高揚感に包まれている気がした。
僕たちが出場してからすぐに試合は再開される、隼人たちが交代してから僕たちが出場するまでの試合は止まり、
結構しっかり話したが、試合はまだ始まって5分しか経っていなかった。逆に言えば普通1分以上の連続の出場でも体力が続かないものだが、4分以上も隼人たちが守り切ってくれたのだ。
この頑張りに僕たちは応えなければいけない。
アイスホッケーの試合はバスケットのように区切られていて、1
「さあ、みんな!走るぞ」
「「おう!」」
僕が掛け声を発し、みんながそれに答えてくれた。いい感じだ。
フェイスオフが行われ、お互いがパックを奪うために動いた。先に獲得したのは僕だ!
相手は攻められることを予想して少し後ろに下がったが僕は、そんな相手めがけてパックを打った!
「「!?」」
バチンッという音と共に相手の陣形を突き抜けたパックは遠くの相手のゴールキーパーの元に向かって飛んでいく、そして僕たちは一斉に走りだした。
そんなことを予想していなかったブラックバッツの選手たちは驚愕したまましばらく
動けないでいたが、僕たちが走り出したのを見てから走り出した。だが、もう遅い!
アイスホッケーはスピードとパワーの勝負の世界、少しでも反応が遅れれば力の差がありすぎない限り後手に回る。
そう思ったのが束の間、パックは相手の
「ちっ」
シュートを打った先輩は舌打ちしながら反撃に備えて下がる。まだまだだね。
ベンチからは落胆の声が聞こえた気がした。だけどまだ終わりじゃない、ここからだ。次の相手の攻撃をなんとか防ぎ切った僕たちは、次も同じ作戦を実行した。
だけど今回は相手もバカではないので同時に走り出す。だけれども、この作戦の意味は不意打ちだけじゃない!この作戦の利点は、パックを相手の陣地まで走っていくより早く持っていくことで、相手に守備の準備をさせるより早く攻めて得点率を上げるという作戦である。
だが、まず作戦を始めるためには、パックを奪わなければならない。取れなければ『アイシング」と呼ばれる反則行為となる。
これは氷上の真ん中に引かれる赤い線よりも、自陣側から相手陣地にパックを放り込む時間稼ぎ目的の行動を、このルールで規制するが、放った側の選手が先にパックに触れば、この反則は適用されないのだ。
だからこそ絶対に先に取らなければならない。取れなければ試合が止まり自陣での試合再開となる。
「何としても競り勝て!」
後ろからヤジを飛ばしながら
先に触ったのはのこちらの
「まだまだぁ!」
僕がその姿を見て安堵していると、相手の
会場は一気に沸き上がり、2人を支えるフェンスはメキメキと悲鳴を上げ
そのまま先輩は体を押しつぶされ、しばらく固まることになる。その隙を逃さず相手の選手はパックを保持し、攻めあがってきた。まずい、
しかし、潰された先輩は、硬直からすぐ立ち直り相手の選手に追いつきチェックし返した。
執念とプライドが先輩を1匹の獣のように見せた。そのままパックを奪い返しゴール前まで進む先輩の前に、もう一人の相手の
これは
「お返しだ!」
先輩はシュートモーションに入る素ぶりを見せ、相手のDFが前へ飛び出す瞬間に、すでにゴール前へ走り込んだ、こちらのFWへパスを出す。
今、先輩の前にいるDFがマークしていたFWがフリーとなった。
この形は試合開始直後に相手にやられ、失点した形そっくりだった。
そのままFWの選手はパスされたパックを受け取るのではなく叩きつけ打つ、打つまでの時間は1秒もかからない。
高速で動くパックの軌道に反応できるわけもなく、そのままパックは相手のゴールネットに突き刺さる。
「「おおおおおおおおお!」」
ベンチから歓声が上がった、もちろん氷上に出てる僕たちも歓喜の声を上げた。これで振り出しだ、一気に逆転するぞ!
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