case3-4

《公園内のとある場所》


「あれ? 何で、攻撃をやめたの?てか、お姉さんが攻撃を中止させた? もしかして気づいちゃった?」


 アリス=システインは、椿の行動と禍辻の攻撃中断から自分の固有魔法『鏡の国ラビリンス』の仕組みに椿が気付いたと推測する。


「――――あ、もしかして、あの男の子を撃った時かな?私の鏡分身は砕けただけなのに、あの子は出血してたしなあ」


 アリス=システインの固有魔法『鏡の国ラビリンス』。範囲内の対象を鏡合わせの世界に引きずりこむ魔法。

 特に集団戦では真価を発揮し、引きずり込んだ対象を半分ずつ切り分けて、互いに鏡の世界ミラーワールドの偽物と思わせて同士討ちさせる。


 今回は椿と禍辻、大犬と東亜の二組に分け、互いに偽物と思わせて戦わせていた。


 実際は、反転したように見える本人と殺し合う事になる。

 アリス本人は、全身を鏡魔法を使って迷彩の様に背景に溶け込んでいた。


「この魔法、かなり使い込んだお陰で、表情も声も都合よく変更できるから、初見じゃ仲間に似せた人形との殺し合い、と判断する筈なんだけど。それに、ミラーワールドって言えば、絶対敵だと思い込むと思ったのに‥‥」


 アリスは、異世界でこの魔法を使って生き延びてきた。故に仕掛けには絶対の自信があったのだ。


「なーんで、わかったのかお姉さんに聞きたいけど、ここで出ていったら殺されるよなあ‥‥」


 アリスは今の疑問に答えを出すことが困難だと感じるや否や、両手を叩いて結論を出す。


「良し、逃げよう!そして、二人っきりの時に聞けばいいや」


 そうして彼女は、見つかる前に現場から脱兎の如く撤収した。


 数分後、禍辻が回復魔法で二人を回復させていると、辺りに鏡が割れるような音が響く。すると、椿達の見ていた世界は変わり、目の前で治療を受けている大犬の黒い腕輪の位置が反転して左手になる。禍辻は、椿になぜ見破れたかを尋ねる。


「班長。どうやってお前は、あいつの能力に気付いたんだ?」


 椿は照れた様子で頬を掻き、禍辻の顔を見上げる。


「今回気づけたのは、禍辻さんがあの子を攻撃したのがきっかけです。砕けてくれたお陰で気づきました。だって、あれ殺す気じゃなくて、無力化する為にわざと急所を外してましたよね?」


「まあ……最近はそういう撃ち方になっていたからな……無意識に急所は外れてしまう」


 照れ隠しで語る禍辻の姿に椿は嬉しさが身を包む。とはいえ話が脱線しては意味がないを気を引き締めて彼に自身の仮説を述べる。


「なのに、彼女はガラスのように砕けた。ということは鏡の世界の偽物は一定ダメージで壊れてしまうと思ったんですよ。さっきの東亜君には悪かったんですけどあれで、ガラスみたいに壊れなかったんで本物だと考えました」


「それで、大犬に攻撃する俺を止めようとしたのか。何で言ってくれなかった?言ってくれれば、大犬にももう少し手加減はできたのに」


「もし、間違えれば、瑞希の能力で私達は纏めて殺されます。なので、変に気を使わせる事は言えませんでした。申し訳ないです。言っていればアリス=システインに逃げられずに済んだかもしれないのに‥‥」


 鏡の世界が消えた時点でアリス=システインは逃亡したのだろう。作戦は失敗となった。椿は悔しそうに地面を踏みつける。


「彼女の能力は、放置すれば非情に危険です。あの時、彼女は、と言いました。なら他にも使える異世界の魔法があったかもしれないんです。私が止めた時点で彼女は、いつでも私達を殺す機会はあった‥‥でも、使わずにただ逃げた‥‥だから、もう一度彼女と話して、真意を聞いてみなければいけない気がするんです。」


「今回は、相手が一枚上手だった。もしかしたら、あの鏡世界を作った後、直ぐに逃げていたかもしれない。今後の対応は第四班に任せるとしよう」


 禍辻の言葉に頷くことしか出来ない椿を回復した東亜はジッと見つめていた。


(班長ちゃんは、頑張ってる。対して俺は‥‥)


 今回の一件において東亜は、能力が役に立たなかったことをずっと気にしていた。


(こういう時は‥‥に聞いてみるか。あいつも大した能力じゃないのに向こうで戦い続けてたし、何かいい方向性を教えてくれるかもしれない)


 彼は、かつて異世界で共に暮らした友人に合う事を決意した。



 《オーダーズ本部》


 恋条はアリス=システインとの交戦報告書を見ながら、悩みの種が増えたことに苦悩する。


「アリス=システイン‥‥厄介な能力ですね。テロ組織なんかに加入されては国の一大事です。情報が増えるまでは要注意リストに加えなくては‥‥」


 恋条は、帰還犯罪者専門の第四班にアリス=システインのデータを送ると共に、自らの手でオーダーズの要注意リストを更新し始めた。 


 その日、アリス=システインは、オーダーズの要注意リストに掲載され、脅威度判定:Sとなった。

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オーダーズ~異世界帰還者入界管理局~ 川島 そあら @forest97

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