case3-2 

 翌日、椿は恋条から帰還者予測の呼び出しを受けてオーダーズへと訪れていた。


「今回、予測されたのは『転生者』の帰還です。転生前は、津田真子つだまこ29歳事務職、三年前に転生。転生者であるため名前と容姿はこのデータとは別物と考えて下さい。脅威判定度はAで、帰還予定時刻は、午後9時20分ごろ。場所は、千代田区にある公園です」


 待ったをかけるように手を挙げた禍辻が恋条に問う。


「ちょっと待て。転生者は管轄外だろ?あいつらはまだ帰ってきてないのか?」


「残念ながら担当の第一班は遠征先から帰って来れません。急遽対象の数を増やした様で」


 椿は、過去にオーダーズの仕組みを調べた際の事を思い出していた。オーダーズでは、最大四班まで存在しており、それぞれに専門が異なっている。第一班と第二班は、異世界転生者担当。椿の所属する第三班は、異世界転移者担当。そして、第四班は、帰還者犯罪組織担当、となっている。因みに、椿は今まで他の班をオーダーズでがない。前に禍辻に聞いた時には、こう答えられた。


「元々、転生者は帰還概念が薄いからあんまり仕事が無いんだよ。だから第一班と第二班は、専門と言っているが実際は合同での集団転移者対応や第四班の手伝いが多いから、地方を転々として犯罪組織を潰し回ってる」


 曰く、拠点はここらしいのだが地方遠征している期間が長く、なかなか戻らないそうだ。因みに、前回戻ってきたのは半年前だそうだ。


「それに、あいつらは犯罪組織担当している方が性に合っている。ウチの仕事は向いてない」


 それを言う禍辻は、なんだか彼らを嫌っている様に椿は見えた。


「なので、今回は三班で対応してもらう事になります。十分に気をつけてください。相手は転生者なので、想定外の行動をする可能性もあります。それでは、解散」


 椿は、予測地点に車で向かう途中、東亜と話しながら移動していた。話の内容は、東亜の能力強化についてであった。


「………というわけで、東亜君の能力強化はまだどんな形かわからないけど強化はあり得ると思う」


 東亜は、腕を組みながら考え込んでいる。


「やっぱり、納得いかない?私も東亜君が納得出来るか怪しい話だったんだけど…」


「いや、班長ちゃん。俺は、その話自体はあり得ると思うよ。チート能力の基本みたいなもんだし。問題は、いくら練習しても俺には変化している気がしないんだよね。まるで、無理やり成長を止められてるみたいなんだ」


「考え過ぎじゃない?封印能力者はいるかもしれないけど、いても腕輪で能力者自体が一般人になるんじゃない?」


「まあ、それはそうなんだけどさあ……」


 東亜との能力について椿から言える事は、これ以上は何もなかった。


「そうしたら、今回は瑞希に頑張ってもらう感じで行こうかな。禍辻さんの能力は本部で見てもだったし」


 だが、東亜はそれには不満そうで、


「瑞希ちゃんの今の能力は、確かに凄いけど弱点有りそうなんだよあ……」


「そう?何でもありって能力じゃない?今までは勘違いと思い込みでああなっていただけでしょう?」


「本当にそれだけなのかなあ……」


 椿は東亜の考えすぎだろうと思い、そのまま車を運転して目的地まで移動した。


 午後9時を回ったころ、周辺に禍辻が人払いと防音の結界を貼る。彼は、基本何でも器用にこなせるため、椿にはありがたい人間であった。


「それでは今回は、相手が女性である事を考え、私と瑞希が交渉相手をします。禍辻さんは、透明化で決裂時の対応を、東亜君は………どうしよ」


「いつも通り、牽制できそうならそれをやるよ。ダメそうだったらよろしく~」


「東亜!最近あなた不真面目すぎです!」


 大犬が咎めるが椿は仕方ないと考えるしかなく、


「ほら、そろそろ来るよ。配置について!」


 午後9時20分丁度を時計の針が刺した時、椿の目の前に白い門が出来上がる。中からは、10代の少女が歩いてくる。


「公安です!貴方は、三年前に転生した津田真子ですね?ここではない異世界から地球に転生し帰ってきた貴方には、既にこちらでの法は適用されません。よって、今の貴方には、2つの選択肢があります。」


 彼女は、椿の言葉に耳を貸す。


「1つは、今すぐ元の異世界に帰還し、二度と地球側に来ない事。元の家族などに伝えたい事があるなら手紙等の連絡物を置いていく事は許可します。」


「もう1つは、我々日本政府の監視下に置かれる事で、向こうで得た能力を全て封印し、静かに暮らす事。この場合は、条件付きで、家族等に極秘に会う事も許可出来ます。」


「選びなさい。貴方の生き方を」


 津田真子と思われる少女は、椿の話を真剣に聞いている。


「……ねえ、お姉さん。それは、二つとも断ったらどうなるの?」


「断った場合は、残念ながらここで死んでもらうしかありません。私としてはそれは望んでいないので、どちらかを選ぶ事をお勧めします」


 少女は、悩み始めた。すると、椿の耳に付けている無線インカムに禍辻から連絡が入る。


「班長。対象は、時間稼ぎが目的のようだ。変な魔力の使い方をしている。決断を急がせろ」


 椿は、禍辻の連絡を聞き少女を急かす。


「直ぐに帰る事を選ばないなら、ここで一般人になる事をお勧めします。別に監視下に入ると言っても牢獄に閉じ込めるわけではありません。ちゃんと日常生活は送れる事を保証します」


「……………お姉さん。少しの間ここに居て、帰る事は出来る?私はここには見たいものがあっただけで長居するつもりはないの」


 この質問は、前に椿が気になって恋条にしたものだ。返答はNO。理由は、異世界への文化侵略、異世界との政治的問題などらしい。先程、椿がいった牢獄に閉じ込めないも言葉通りの意味なだけで実際監視自体は厳しい。ブレイバーは、オーダーズの職員か家族ぐらいとしか手紙も封印具を付けてでしか残せない。というか実際は、そんなもの遺族が信じるわけがないので渡さない。


「それは、許可出来ません。申し訳ないのですが、禁止されているので」


「………残念。それなら良かったのに。週一でこっちに来たかったんだけどな」


「貴方達の影響力はそれだけ大きすぎるんです。決断していただけましか?」


 彼女は、微笑み答えた。


「うん、決まったよ。答えは……」


 答えを言う前に少女に銃弾が撃ち込まれる。


「班長、こいつは帰る気も従う気もないみたいだぞ。見ろ、周りの様子がおかしい」


 突如少女を撃ち、透明化を解いた禍辻が椿に話かける。椿は、周りの景色を見ると特に不自然な所は何もないように見える。ここから見える観覧車も変化は………


「あれ?観覧車の時計の文字が……逆?」


「気づいたか。どうも、現実ではないらしい。大犬!風峰!……おい、待て。お前ら誰だ………」


 禍辻の言葉で椿が振り返ると、そこにいるはずの二人は、そっくりであるが決定的な違いがあった。本来左手に付ける黒い腕輪が右手に付いていたのだ。


「まずい、分断された!」


 すると、空から少女の声が聞こえる。


「気づくのちょっと遅かったね。お兄さん」


 椿は、先程撃たれた少女の方を見るとガラスの様に砕けてなくなる。


「改めまして、自己紹介を。私はアリス。アリス=システイン。向こうでは鏡の魔女なんて呼ばれてたの。見ての通りあなた達を二つの鏡像迷宮メイズに分断した。そこから出せるのは私だけ。さあ、今度はお姉さんが選んで。貴方達の生き方を」

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