とらわれの真琴、発見

 俺たちの正面には、巨大な扉が立ちはだかる。


「この先に、黒幕がいるのか」

「うん。すごい瘴気を感じるよ」


 俺は、赤い扉を開く。


 扉の先は、どうも応接室のようだ。


 しかし、壁は崩れ、辺りには触手や鎧騎士の残骸が。

 ここでは、相当の激闘が繰り広げられていたらしい。


「クヌギを休ませられるところは……あ」


 ソファに、一糸まとわぬ女性が、息を切らせながら座り込んでいた。

 髪はショートボブで、胸が大きく、太股がピッチリとしている。


 俺達にとって、見覚えのある少女が。


「はわ!? 爽慈郎様!」


 一瞬で赤面した真琴が、近くにあったシーツに身体をくるむ。


「す、すまん!」


 俺は慌てて、後ろを向いた。


「こちらこそお見苦しい所をお見せしてしまって、申し訳ありません。魔力を吸われてしまい、服を生成する力すらありません故」


「詫びなくていい。俺が悪い」

「着替えますので、しばらくお待ち下さい」


 衣擦れの音を聞きながら、真琴が着替え終わるのを待つ。


「終わったよ」と、パイロンが俺を呼ぶ。


 振り返ると、真琴が服を着て立っていた。完全に元通りというわけではなく、やや薄着になっている。


 パイロンの手で、クヌギも着替えを終えた。ドレスから、楽な浴衣姿に。ソファに寝かされて、寝息を立てている。


「俺達もひとまず休もう。もう戦闘続きでクタクタだ」


 ソファに横になって、仮眠を取る体勢になる。横になるだけでも違う。


「お前も少し休めよ、パイロン。思ってるより疲労が溜まってるぞ」


 なにより、パイロンに休んでもらわないと。

 一気に進みたいが、ふとしたことでガス欠なんて最悪だ。


「マーゴット、無事だったんだねぇ」

 パイロンは真琴の隣に座る。


「あやうく黒幕に籠絡されそうになりましたが、精神コントロールまでは受けませんでした。そのせいで、スケルトン精製に割いていたリソースを削ってしまいました。申し訳ありません」


「いいって。クヌギを助けるために、スケルトンを一体よこしてくれただろ?」


 俺は気づいていた。

 クヌギ戦に現れたスケルトンは、真琴が用意してくれたヤツだって。


 不幸なことに破壊してしまったが、ヤツがいなければ、クヌギは助けられなかっただろう。


「最後の魔力で操りました」

「ありがとう。おかげでクヌギは助かった」


 感謝の言葉を贈ると、真琴ははにかむ。


「大立ち回りだったみたいだね」


「慣れない戦闘行為をしたので。その甲斐もあって、敵の使用したアイテムを奪取できました。敵の懐に飛び込めば必ず手に入ると思っていたのですが」


 真琴が大事そうに書物を抱きしめている。何かのノートらしい。

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